2025年03月 No.124 

リサイクルの現場から

ナゲット処理の分離技術により高品質のリサイクル品を生産
/高山金属商事株式会社

 街中で見る配電線や家電製品などに用いられる被覆電線は、導体である銅などの金属と、それを保護する塩ビなどの樹脂製の被覆材で構成されています。これらの素材を分離して再資源化することは容易でなく、高精度な技術が必要です。今回は長年、電線のリサイクル事業を続けている高山金属商事㈱の代表 高山周三氏に、電線リサイクルを取り巻く現状と今後の展望についてお話を伺いました。

高山金属商事株式会社

 1950年に設立し、電線をはじめステンレス・アルミなど非鉄金属のリサイクルに取り組む。前身は、1924年に高山喜太郎氏が開業した金属原料商「高山商店」。事業の発展に伴い1975年に海老名営業所を開設。被覆電線ナゲット処理設備を導入して、電線リサイクルを本格的にスタートするとともに、電機雑品の粉砕加工、コンピュータの撤去・解体等、業務の拡大と多角化を進める。お客様からの「ありがとう」と環境からの「ありがとう」を目指し、高品質のリサイクル品を生産し続けている。

熟練の作業者による下処理とナゲット処理で高精度の分離が可能に

 高山金属商事㈱はナゲット処理や皮剥き処理による電線リサイクルで30年以上の実績と信頼を築いています。ナゲット処理とは、粉砕機(ナゲット機)で被覆電線を米粒大に粉砕し、粉砕された被覆材(塩ビ等)と導体(銅、アルミ等)を高精度で選別、効率的に回収することです。

〈ナゲット処理の流れ〉

  1. ① 回収・選別:電線を人の手によって、太線、中太線、細線の3種類、および、導体の種類、被覆材の種類別に選別し、1m前後の長さに切断します。
  2. ② 破砕処理:切断された電線は大型破砕処理機を通過し、さらに小さな断片に破砕されます。これにより後の工程で金属と被覆材が分離しやすくなります。
  3. ③ 一次粉砕機・二次粉砕機:破砕処理を通過した材料をさらに米粒大に粉砕。砂粒大になるまで細かく粉砕されるものもあります。
  4. ④ 太線の処理:太線は皮剥き機を使用して銅と被覆材に分離します(この時回収される銅の純度99%以上)。
  5. ⑤ 中太線の処理:ナゲット処理で被覆材と導体(純度≒97%)に分離します。更に水中で比重選別(湿式選別)して導体の純度を上げます(純度≒99%)
  6. ⑥ 細線の処理:ナゲット処理し、細かな被覆材と導体は湿式選別、更に被覆材(塩ビやポリエチレン等)は水中で遠心分離する(湿式サイクロン)。ポリエチレンはサーマルリサイクル、塩ビはマテリアルリサイクルに利用されています。
図:ナゲット処理の流れ

 高山金属商事㈱では銅と被覆材の分離を高い精度で行うことを前提としながらも、色味の綺麗さを保つことも意識して取り組んでいます。
「当社では処理方法によって銅の輝きが損なわれないよう、注意して作業を行っています。すなわち湿式選別では、その後の乾燥工程で熱を使用するため、銅の色が若干くすんでしまいます。そこで、リサイクルの用途によっては、水を使わない風力分級(乾式選別)にとどめています。こちらの場合、銅の純度は若干劣りますが、変色せずに高品質な状態を保てます」

写真:ナゲット処理後の銅
ナゲット処理後の銅

限りある資源の有効活用を目指して

「一般的に、工場が設備更新をするタイミングで、使用済み電線が多く排出されます。しかし、近年は国内の工場数の減少を背景に、使用済み電線も減少。加えて、電線が使用される場面のデジタル化が進み、従来よりも端材が出づらくなっています」
 また、世界的な銅価格の高騰により高値で取引されていることから、海外企業が使用済み電線を高値で買い取る動きが活発化し、調達できる電線の量が減少しているというのが、電線リサイクル業の課題だと言います。

写真:様々な種類が混在する使用済み電線
様々な種類が混在する使用済み電線

 今後の展望としては、被覆材リサイクルが更に拡大されることに期待しているそうです。
 高山金属商事㈱で分離された塩ビなどの樹脂は、国内の再生事業者によってシート材などにマテリアルリサイクルされる場合が多いとのことです。一方で、埋め立て処理されてしまう被覆材もあるといい、被覆材の活用方法の開拓は今後の課題でもあります。
「電線から回収された樹脂については、現時点では付加価値の高い利用方法があるわけではないため、リサイクルを促進するためにも、その後の用途開発が重要だと考えています。例えば、プラスチックの可燃性に着目し熱源として活用する方法も考えられると思います。新たな燃料を投入せずに焼却炉内の温度を上げられるので効率的な運用が可能です。樹脂部分については、少しでもエネルギーを回収できるような方法で有効活用が進められることに期待しています」

写真:使用済み電線から分離された樹脂
使用済み電線から分離された樹脂

 使用済み電線の量は減少しているとはいえ、持続可能な社会の実現という意味でも、リサイクル事業はなくてはならない仕事です。SDGsの実現に向けてさらなるリサイクルの加速が望まれる中では、リサイクルを前提とした製品設計や材料の選定がなされることにより、分離工程はよりスムーズになると言います。業界内外からリサイクルを実現できるように支えていくことが大切です。
「高山金属商事㈱では多くの工程が機械化されていますが、入荷した様々な種類の電線は、まず熟練者の手で分別されています。後の加工工程の精度に関わる重要な作業であるためです。力仕事で大変だというイメージが先行しているとは思いますが、リサイクル業界の社会的な役割に共感し、携わってくれる方が増えるとうれしいです」

写真:お話しいただいた高山氏
お話しいただいた高山氏