特集 塩ビと技術 レポート2
車輌内装を革新する塩ビ合成皮革 /アキレス株式会社
プラスチック加工の先駆者であるアキレス㈱は、製膜技術、発泡技術、成型技術を駆使し、多岐にわたる市場で高品質な製品を提供しています。特に車輌資材事業部では合成皮革を主力製品として展開し、車内空間の快適さを向上させる取り組みを進めています。
今回は独自製法の塩ビ合成皮革「パートナー」について、車輌資材事業部 車輌資材販売部 車輌レザー課 課長 山下亮太氏と広報部の皆さんにお話を伺いました。

アキレス株式会社
1948年から塩ビ製品の製造・販売を開始し、プラスチック加工をコアとして、シューズ製品やプラスチック製品、産業資材製品などを展開している。住宅資材や生活用品、自動車内装材、半導体周辺部材、さらに防災関連、インフラ土木技術まで幅広い分野に素材、製品、技術を提供している。車輌資材事業部においては、ポリウレタンや塩ビなどの素材を用いて、自動車のシートや内装に使われる合成皮革を提供している。
車輌内装で使用される合成皮革
アキレス㈱は、優れたプラスチックの加工技術を駆使して、多様なマーケットに製品を送り出しています。柱となるプラスチックの加工技術は大きく分けて3つあります。まず、フイルムや合成皮革のように、膜を作り、シート状の製品を作り出す製膜技術です。次に、素材に取り込む気泡のサイズをコントロールすることで、さまざまな特性を作りだす発泡技術があります。そして、樹脂を「型」で固め製品化する成型技術、そのすべてで当社が長年培ってきた「配合技術」がコアとなっています。
「現在、車輌内装では塩ビ合成皮革とポリウレタン合成皮革を使用部位によって使い分けています。一般的に車輌内装に使用される合成皮革は、表皮材の裏に薄いスポンジ状のウレタンフォームを貼り合わせています。そのため当事業部では合成皮革の製造開発と共に、ウレタンフォームと合着させるラミネート技術も保有しています。この表皮材製造からラミネート加工までを一貫して行えるのは当社の大きな強みでもあります」(山下氏)
塩ビ合成皮革製品「パートナー」
アキレス㈱の塩ビ合成皮革製品「パートナー」は、日本国内で唯一、ポリウレタン合成皮革と同じ製法で作られる画期的な製品です。
「従来の塩ビ合成皮革はウレタン合成皮革に比べ、光沢感が強くチープに見えるという弱点がありました。当社ではソフトで高級感のある素材の開発に着手し、ウレタン合成皮革でしか実現できないと思われていた質感を塩ビでも可能にしました」(山下氏)
アキレス㈱では、カレンダー製法とキャスティング製法の両方で合成皮革を製造しており、基本的には塩ビを使用する場合はカレンダー製法、ポリウレタンを使用する場合はキャスティング製法を用いて二つの製法を使い分けてきました。「パートナー」の開発では、キャスティング製法での製品開発を進めた結果、カレンダー製法の塩ビ合成皮革よりも薄く柔らかい仕上がりを実現しています。
「キャスティング製法では、離型紙の上に液状の樹脂を乗せ、発泡層と生地層を重ねていきます。カレンダー製法と違って押し出す工程がないため、弾性のある発泡層を潰さず製膜でき、生地の柔らかさに繋がっています」(山下氏)

高耐久塩ビ合成皮革の新たな可能性
塩ビ合成皮革は、一般的にポリウレタン合成皮革に比べて安価で提供できるという強みがありますが、性質としては耐久性と柔軟性の面で劣るという課題がありました。「パートナー」の開発により、塩ビ合成皮革がポリウレタン合成皮革の代替として利用可能な範囲を広げています。
「自動車メーカーの方々に『パートナー』を見ていただくと、塩ビ合成皮革でもポリウレタン合成皮革に遜色ない高級感のある質感が出せることに驚かれる方も多いです」(山下氏)
さらに、「高耐久パートナー」は独自の表面加工技術により表面処理層をパートナーとは違う水系ポリウレタン樹脂を使用し耐摩耗性とソフト感を両立しています。スエードの見え方に近づけたよりマットな質感の製品も展開中です。「高耐久パートナー」の開発により、これまでポリウレタン合成皮革でしか対応できなかった部位にも塩ビ合成皮革が使用できるようになり、車輌内装における塩ビ合成皮革の利用面積は広がってきています。
「自動車は長年にわたり使用されるものなので、部品に要求される製品性能も非常に高いですが、そのニーズに応えられる製品ができたことをよりたくさんのお客様に知っていただきたいですね」(山下氏)

EV時代の車輌内装を支える製品に
自動車業界ではEV化が進んでおり、EV車ではバッテリーなどの高価な部品を搭載しているため、内装材ではコストパフォーマンスを考慮した材料が求められる傾向が強まっています。そのためポリウレタン合成皮革より安価に提供できる塩ビ合成皮革の需要は今後さらに拡大していく見込みです。
「これまでの車内空間は移動のためのスペースの役割でしたが、自動運転技術が広まると将来的には居住空間やワークスペースとしての役割を持つようになってくるかもしれません。昨今では、EV車の内装をはじめとした近未来的でラグジュアリーなデザインの需要が増えています。時流とともにこれからさらに多様な車輌内装が登場することを見据え、次世代の車輌でも使っていただけるようにデザイン面でのラインナップも強化しています」(山下氏)

アキレス㈱では、環境負荷を低減するための活動の一環として、合成皮革の工場端材を使用したアップサイクルにも取り組んでいます。アキレス㈱がスポンサーを務めるバレーボールチーム「レーヴィス栃木」の試合会場で無償提供した観戦用携帯クッションは、表皮に車輌用シートの端材を使用し、中材には当社製のソファやクッションに使われるウレタン素材の端材を使用しています。その縫製にはシューズ製造の技術を生かし社内で一貫して企画された環境への取り組みです。
「カーボンニュートラルを目指した製品開発や、環境への取り組みは企業として行うべき課題だと認識しています。これらの取り組みを継続し、さらなる改善を目指していきたいです」(島田氏)


「自動車業界においても、内装材は今後より汎用性・機能性が求められると感じています。業界のなかで存在感を示し、アップサイクルできるような取り組みもしていきたいと考えています」(山下氏)