2025年03月 No.124 

特集 塩ビと技術 レポート1

カスタムエンボスターポリン/ダイニック株式会社

 ターポリンは主に産業用資材として多用されていますが、エンボス加工やカラーリングの工夫により、用途と魅力が大きく広がっています。ダイニック㈱では、コロニーファクトリー㈱との協業により、独自製品を開発。機能性と美しさを兼ね備えたターポリンの新たな可能性を探求しています。今回は、ダイニック㈱ 第四事業部 工業用途販売グループ 金子浩光 参事補、企画・広報グループ広報担当 岡嶋栄一 参事補にお話を伺いました。

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お話しいただいた金子氏、岡嶋氏

ダイニック株式会社

 ダイニック株式会社は、1919年に書籍クロスの国産化をめざして京都・西陣に設立。出版・文具ファンシー製品、情報関連製品(インクリボン、フィルム製品、磁気テープ)、住宅関連製品(壁紙、カーテン)、不織布関連製品、衣料関連製品、包材関連製品、ターポリンを中心とした工業用途製品などの製造・販売を行う。暮らしを「豊かに」そして「快適に」彩ることをテーマに、100年を超える「伝統と改革を組み合わせた技術力」で市場が求める製品を世に送り出している。

頑丈で多機能なターポリン

 ターポリンとは、強靭で耐久性のある合成繊維で作られた防水シートのこと。一般的にはポリエステルやナイロンなどの基布に、塩ビをコーティング・ラミネートして製造しています。
「基布の糸と糸の隙間を通して樹脂同士が溶着することで、基布と樹脂が剥がれない頑丈な構造になっています。耐水性、耐久性、防炎性、耐候性、柔軟性に優れているため、産業分野で幅広く使用されています」(金子氏)

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「両面を樹脂でコーティングする場合と片面のみコーティングする場合があり、用途によって使い分けられています。両面を樹脂でコーティングした場合は、表面と裏面の塩ビも直接溶着するため、より強度が高く仕上がります」(金子氏)
 具体的な用途としては、建築現場や土木工事現場での防水シートや養生シート、トラックの荷台カバー、テント、タープ、キャンプ用品、農業用シートなど多岐に渡ります。さらには鮮明な印刷が可能であることから屋外広告や横断幕などにも使用されています。

新開発「カスタムエンボスターポリン」

 ダイニック㈱では、ターポリンに細かなエンボス加工を施し、意匠性を高めた「カスタムエンボスターポリン」を新開発。製造工程では、通常のターポリン生地を加熱して表面を柔らかくし、エンボスロールを押し付けることで様々な凹凸模様をつけています。

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「当製品の製造技術では、書籍クロスの製造からスタートした企業として蓄積した豊富なエンボス加工のノウハウを生かしています」(岡嶋氏)
 時には書籍クロス製造で使用する機材を転用するなどの工夫を凝らし、細かなエンボス表現を実現したそうです。
 凹凸の付け方の工夫で微細な模様を浮かび上がらせ、光の反射によって色の濃淡に変化があるように見せています。
 エンボスで表現する模様は、表面へのプリントよりも擦れに強く、ターポリンの丈夫さが求められる場面にもマッチした意匠性だということです。

写真:製造の様子
製造の様子

アパレル分野で活躍できる製品に成長

「これまでターポリンはあくまでも産業用資材という位置付けであり、強度などの機能性にはこだわっていたものの、見た目の美しさを追求することはあまりありませんでした。しかし、コロニーファクトリー㈱との製品開発の機会に、原色メインだった既存の製品ラインナップに、新たにアパレル向けのカラーを追加しました」(金子氏)

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コロニーファクトリー㈱と共に開発した独自製品

 新開発の絶妙なカラーリングは、ベースの色に重ねてもう一色プリントすることで、こだわりの色合いを実現。微細エンボスが一番きれいに見える色を探すべく試行錯誤を重ねました。
 コロニーファクトリー㈱との製品開発のように、お客様の要望に合わせてエンボスでオリジナル模様が開発できるそうです。
「小ロットで細かなオーダーに対応できるのが当社の特長の一つです。興味を持たれた場合はぜひ一度お声がけいただきたいですね」(岡嶋氏)
 カスタムエンボスターポリンは、現在バッグなどのアパレル分野を中心に活用されています。

自由な発想による幅広い活用に期待

 当初は見た目の面白さを追求して生まれたターポリンですが、エンボスの凹凸自体の機能を見出した活用事例もあります。たとえば、凹凸の溝が特に深くなるようにエンボス加工を施したターポリン生地は、犬の障害物競争に使うトンネルに使用されているそうです。

写真:見た目が従来とは一線を画すターポリン
見た目が従来とは一線を画すターポリン

 汚れても洗えて丈夫であるなどのターポリン自体の性能に加え、凹凸があることで滑りにくくなり犬の転倒防止につながっているため、一石二鳥の効果を生んでいます。
「微細エンボスターポリンは発想次第でさまざまな使い方ができる生地なので、一般のお客様をはじめ、より多くの方々に魅力を知ってもらいたいです」(岡嶋氏)
 ダイニック㈱では、引き続き製品のラインナップを充実を目指し、様々なターポリンを試作しています。
「今後はさらに、抗菌素材と組み合わせるなど、付加価値の高い新製品を開発していきたいです」(金子氏)