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「PVC Award 2023」入賞
「アップサイクル 丸洗い犬の散歩バッグ」/株式会社コロニーファクトリー
バッグは毎日使うものだからこそ、たまには丸洗いしたいと思ったことがある人も多いかもしれません。㈱コロニーファクトリーは、おしゃれで水洗いできるバッグを手がけています。膜素材にこだわり、丈夫で長く使えるように設計されたバッグは全国各地で人気を博しています。そんな斬新なバッグの生みの親である㈱コロニーファクトリー 米田仲夫氏に商品の誕生背景を伺いました。
株式会社コロニーファクトリー
株式会社コロニーファクトリーは神奈川県横浜市を拠点とするバックブランド会社。自社のオリジナル製品で「TENT」というブランドを展開し、店舗用のオーニングや建築、産業用途の膜素材を使用したバッグを製作している。特別仕様の高周波ウェルダーによる溶着と特殊縫製することで、膜素材の高い防水性と耐久性を損なうことなく製品化。高い評価を得ている。
趣味のバッグ製作が大反響
膜素材を使用したバッグブランド「TENT」を立ち上げた米田氏は、実は美容室の経営を行うプロの美容師です。
「趣味として始めた洋服づくりから始まって、休みの日に工業用ミシンを使った皮製の小物を製作していました。ある時、知人からテント生地の端材が余っていると聞き、有効活用できないかと考え始めたのがバッグ製作の始まりです。今からしてみれば、ファッションやものづくり、機械を扱うことなど、自分の好きなことがバッグ製作には集約されていましたね」
書道用バッグの製作にあたり、丸洗いできる素材を探していたところ、米田氏は塩ビシート生地に巡り合います。
「膜素材は軽くて防水で、耐久性が高い。この素材の魅力に惹かれて、塩ビシート生地を販売する企業を訪ねたところ、端材といってもバッグを作るには十分な大きさがあったので、色々な小物作りに活用できる可能性を感じました」
「TENT」のバッグに使用されるのは、オーニングやテントなどに使用される膜素材。膜素材とは、ポリエステルやガラス繊維製の基布に塩ビ樹脂をコーティングしたり、積層加工したりして製造される生地です。防音目的のサウンドシャッターなどの製品にも使用されるように、耐久性などの機能が優れた素材です。
ところが、基布と塩ビが強く接着されており、その分離は容易ではないために、製造工程で発生する端材の多くはリサイクルされずに廃棄処分されてきました。
㈱コロニーファクトリーでは、メーカーで大量に発生している工場端材を、エシカル志向のユーザーへ訴求する製品として生まれ変わらせています。バッグ全体のおよそ42%(外から見えない内ポケットなど)には、傷などのあるB級品の素材が使用されているそうです。
「PVC Award 2023」を受賞した犬の散歩バッグ
塩ビ工業・環境協会などが主催する「PVC Award 2023」に、「アップサイクル 丸洗い犬の散歩バッグ」を出品し、入選されています。本作品はターポリンの工場端材を用いたアップサイクル製品であることが高く評価されました。高周波ウェルダー加工で生地を溶着し、ハンドルなどのパーツも塩ビでできていることから耐水性に優れ、汚れても丸洗いできることが特徴です。
「当社のバッグは耐久性を高く保つためにも特別に凝った構造を避けています。生地の厚みごとに専用のミシンを完備するなど設備投資にも力を入れ、他社で真似できない独自性が生まれています」
本作品は、あるペットグッズ・ケア専門店での販売を開始後約半年で約400万円の売上を達成。成功の背景には、商品を手に取ってくれるペルソナを細かく設定するなどの戦略があるといいます。
「商品の販路開拓をとても重視していて、私の場合は商品のアイデアが浮かんだ最初から、販路開拓までを並行して考えていきます。美容師の経験から、物事を複数の視点から立体的に考える習慣が生かされていると感じますね。ものづくりの分野においては、商品アイデアという一側面に対して、誰に届けるか、どう届けるか、どういうアピールをするか、という他の側面を同時に考えています」
より多くの人に膜素材を手に取ってほしい
㈱コロニーファクトリーでは、膜素材の大手メーカーとの取引を通じて、オリジナルの素材開発も行っています。
「メーカーの製造現場で膜素材を作っている方々は、本当に気持ちを込めて精度の高い製品を作っているのが印象的。働いている方の職人気質も含めて、とても魅力的な素材だと思っています」
膜素材は軽量で防水性が高く、耐久性にも優れているため、今後利用場面が広がることを期待しているそうです。
「メーカーと共同で考案した独自の配色の生地については当社で独占することなく、多くの人に広く知ってもらいたいと思っています。膜素材の可能性を広げながら、ものづくりの現場が活性化していくことを願っています」