リサイクルの現場から
見えないところで大活躍!
リサイクル遮音シート/アナン通商株式会社
床材や壁紙、タイルカーペットといった塩ビ複合材から、独自のリサイクル技術で高性能な塩ビ製遮音シートを製造しているアナン通商㈱。空港騒音対策でも実績を積んできた遮音シートは、40年以上の歴史を誇る信頼の製品です。今回は、リサイクルの鍵となる独自の方法について、アナン通商㈱の代表取締役 小島正嗣氏にお話を伺いました。
アナン通商株式会社
京都府京田辺市で1988年に設立し、主に建材に使用される遮音シートの製造を行う。製造の際には壁紙やタイルカーペット、床材などの塩ビ複合材、および、電線被覆材などをリサイクルしているのが特徴。1952年に前身である丸善ビニールを創業してから、70年以上にわたって塩ビのリサイクルに携わっている。
40年以上の実績
アナン通商㈱では、壁紙やタイルカーペット、床材などの様々な塩ビ複合材料を受け入れ、塩ビ製遮音シートを製造しています。遮音シートは、床材をはじめとする建材の裏に貼りつけることで、外部からの音を遮断したり、室内の音が外に漏れるのを防ぎます。長年にわたり空港の騒音対策にも使用され、多くの実績を積み重ねてきました。商品の発売から40年以上の歴史を誇る、信頼性の高い製品として評価されています。
「当社はもともと、プラスチックなどの廃材や不要資材を回収・処理するリサイクル業者として事業を開始しました。当初から他社では扱いづらい廃材をあえて利用することで、コストを抑えられて競争力を獲得できるというメリットを実感。そこから現在の事業形態を展開するに至りました。
経済合理性を重視して始めた事業ではありながらも、結果として環境負荷を抑えた製品づくりにつながっていますね。そして昨今のSDGsや脱炭素化のニーズも追い風になっています」
完全分離せずに塩ビ複合材をリサイクル
塩ビ複合材のリサイクルにおいて、一般的には材料を粉砕して、塩ビとそれ以外の材料をできる限り分離しようと試みる場合が大半です。一方でアナン通商㈱では、塩ビ複合材を粉砕後、あえて分離しすぎないようにしています。これにより、製造コストを削減できるほか、設備の処理能力の向上も実現できているそうです。
「当社では壁紙や床材、タイルカーペットなど、リサイクルが難しい塩ビ複合材のリサイクルに積極的に取り組んでいます。他社ではリサイクルしづらいからこそ、リサイクル材を安定的に入手しやすくなっています」
様々な塩ビ複合材を受け入れられる背景には、アナン通商㈱独自の工夫があります。
リサイクル遮音シートの品質を管理するために、製造に使用するリサイクル材料の適切な配合比率を見極めて調整しています。リサイクル材料の組み合わせ方や配合比率の決め方などは、現場の作業員が経験則に基づいて判断しているそうです。
「受け入れた塩ビ複合材は、その用途を詳細に聴くことで、含まれる塩ビ樹脂の量や重合度、可塑剤や充填剤等の配合剤の含有量や種類を推定します。その情報を基に状況に合わせて添加剤の量を調整したり、バージン材や別のリサイクル材を一部加えたりすることで、製品の強度や柔軟性を一定に保っています」
こうして再製品後の用途に合わせてリサイクル材を練り上げています。オーバースペックに仕上げることなく、各製品に適切な性能になるように調整することで、コスト面でのメリットも両立しています。
難しいリサイクルにも果敢に挑戦
アナン通商㈱ではコストと事業継続を重視する中で、リサイクル材を使用した事業を選択。結果として、企業と環境の双方にとってサステナブルで、環境性能の高い製品を送り出しています。
しかしながら、遮音シートの性能はまだあまり周知されていないのが現状だと言います。
「遮音シートは普段見えないところに使用されている製品ではありますが、実は皆様の身の回りにある製品。遮音シートを使用した床では、上階の足音が気にならないほどです。まずは、製品の優れた性能をより多くの人々に知っていただきたいですね」
これからは、さらにリサイクルが難しいと考えられている材料にも挑戦し、リサイクル技術をさらに磨いていきたいと語ります。
「工場の製造工程で出る端材だけでなく、一度市場に出回った製品の再利用量も増やせるよう、積極的にリサイクル方法を模索していきたいです。また、施工の際に発生する端材の量も相当あると認識しています。それらの有効活用も今後の課題として、リサイクル方法をさらに考案していきたいと思います」