特集 身の回りにある塩ビ製品 レポート2
多彩な液状の塩ビ、
PVCプラスチゾル/株式会社コバヤシ
液状の塩ビであるPVCプラスチゾル。樹脂というと固形のイメージが強いかもしれませんが、PVCプラスチゾルは意外にも身近な製品でたくさん使われている材料です。今回は、PVCプラスチゾルの製造で大きな国内シェアを持つ㈱コバヤシで、コバゾール事業部 葛飾工場 工場長 浅田修司氏、技術課 部長 井上雅博氏、課長 柴田頼成氏からお話を伺いました。
株式会社コバヤシ
株式会社コバヤシは、PVCプラスチゾルおよびプラスチック食品容器などの開発・製造・販売を行う総合企業。1952年に設立され、PVCプラスチゾルなどに関する高い技術力を基盤に、生活に密着したプラスチック製品を提供。食品容器の分野では、納豆・豆腐容器の製造において国内で高いシェアを誇る。
身近な製品に使用されるPVCプラスチゾル
㈱コバヤシが得意とするPVCプラスチゾルは、ペースト塩ビと呼ばれる特殊塩ビ(粒子径約1μm)と、可塑剤・安定剤・顔料などを混合した液状の材料です。200℃前後に加熱することによって、約1μmの塩ビ粒子が可塑剤を吸収して固形物に変化します。可塑剤などの配合次第で、固さの異なる軟質塩ビ製品ができます。
「PVCプラスチゾルは型を液に浸すディッピング成型や型に液を流し込むスラッシュ成型を行えることが特徴です。ディッピング成型ではキャップやコーティングを、スラッシュ成型では指人形をはじめとする玩具やモデルウィッグの製品を作るのに適しています。また、食品サンプル、手袋、壁紙などの製造にもPVCプラスチゾルが活用されています」(井上氏)
PVCプラスチゾルは、見た目の美しさが重要な製品にも多く使われるため、高精度の調色技術も求められます。これまで培ったノウハウを活用して、ご要望の色を忠実に再現できるのも㈱コバヤシの強みです。
プラスチゾルの成型方法
ディッピング成型とは、液状のPVCプラスチゾルに金属やセラミック製の型を浸し、型にPVCプラスチゾルをコーティング後、加熱して硬化させる成型方法です。
「一般的な塩ビ樹脂(汎用塩ビ)は、加熱しながら剪断を加えて、樹脂を溶かしてから金型に押し込む、インジェクション成型で形作られることが多いです。この方法は大量生産に向いていますが、金型を作るのにコストがかかります。
一方、ペースト状の塩ビ樹脂(PVCプラスチゾル)を使ったディッピング成型だと、比較的安く型を作れるのがメリットです。小ロットで多くの種類の製品を作りたいときに適した工法として知られています」(浅田氏)
炊事手袋や電気部品のスリーブなどが、このディッピング成型で製造されています。
また、中空の金型内部にPVCプラスチゾルを適量入れた後、金型ごと回転させながら加熱して固めるローテーション成型という方法が採られることもあります。この方法では、ボールや子供の乗用玩具などの製造が適しています。
高精度の製品を安定して届ける
㈱コバヤシがPVCプラスチゾルを使った高品質な製品を提供し続けられる背景には、ペースト塩ビと呼ばれる特殊塩ビを効率よく、高分散する技術を持っていることや、工場内で品質管理を徹底していることなどがあります。
「当社では社内で製品評価・分析を行うための設備・技術が整っているため、ラボで素材の耐久性や成型性などを細かく管理しています。また、ラボから工場へのスケールアップにより、試作した色の再現性が高いのが特長です」(柴田氏)
一般的に、ラボから実際の工場へ場を移して同じ性質を再現することは、非常に難易度が高い作業です。㈱コバヤシがこの工程を日々高精度でこなせるのは、技術力の集積があるからこそです。
製造の流れに最適化されたパイプレスの工場では、配管の洗浄廃液などの不純物の発生や混入を最小限に抑制できています。高い品質と高い再現性を実現するには非常に有効な工場です。また、PVCプラスチゾルの製造から充填・出荷までのロスも少なくなっています。さらに粉体の計量作業を一カ所に集約する事で、工場内の粉じん汚れを防止し、製品の品質向上と作業環境の確保につながっています。
サステナビリティへの取り組み
〜第4回サステナブルマテリアル展に出展〜
展示では、サステナブル資材を用いた新包装システムやリサイクルシステムなどを紹介しました。
コバゾール事業部では、バイオマス素材・可塑剤を使用した製品を開発し、環境負荷の低減に努めています。また、製品にリサイクル材を添加することで、資源の有効利用と廃棄物の削減にも取り組まれています。そして持続可能な素材を組み合わせた、素材のハイブリッド化も推進しています。
㈱コバヤシ全社の取組として、澱粉商材を使用した新製品「ReseamST®」を導入し、サステナブルな製品開発、マスバランス方式を採用したバイオマス材料の利用を進め、持続可能な素材の供給に貢献しています。今後も環境に配慮した製品の開発を進めるとともに、機能性を高めて高付加価値化を目指しています。