2024年07月 No.122 

インフォメーション 3

「割れない花瓶(MULTI VASE)」/株式会社三共

 ㈱三共は、岐阜県岐阜市でビニール・プラスチック加工製品の製造を行っている企業です。塩ビシートと美濃和紙を組み合わせた作品「割れない花瓶(MULTI VASE)」が、「第10回 PVC Award 2023」にてオーディエンス賞を受賞。自宅に飾りたいという来場者からの意見も多く、現在、販売が待ち望まれている注目の作品です。今回は、「割れない花瓶(MULTI VASE)」の開発背景について、㈱三共 代表取締役 小酒井茂氏にお話を伺いました。

株式会社三共

 1960年に設立、岐阜県岐阜市に拠点を置く、ビニール加工に特化した企業。高品質なビニール製品の製造・加工を行っている。主力製品は、車検証入れ、ファイル、バインダー、お薬カレンダー、チャック付袋、ポーチ、手帳カバーなど。長年にわたり培った技術力とノウハウにより、現在世の中にない新しい観点から考えたアイデアの製品化を支援。お客様のニーズを的確に反映しながら製品の付加価値を高めるための提案も行っている。

時代に合わせて、柔軟に顧客のニーズに応え続ける

 ㈱三共がある岐阜県岐阜市は、1955年頃に既製服産業が急成長し、日本有数のアパレル産地として発展。先代が事業を立ち上げたのは、アパレル問屋向けに包装紙やダンボールケースを販売したことが始まりでした。1965年頃には、他社に先駆けて塩ビ製フィルムの加工に着手。既製服の包装用の袋やラベルケースの製造を始めました。次第にプラスチック加工が事業基盤になっていったそうです。その後、車のシートカバーや車検証入れなどのカー用品の製造も手がけるようになり、製品ラインナップはさらに多様化。柔軟に顧客のニーズに応えるため、現在はホームページやネットショップにも力を入れています。
「近年は、ホームページを見ていただく機会も増え、国内外の様々な地域のお客様からお問い合わせがあります。直接、ご希望やお悩みごとを伺うことで、迅速にニーズに応えられるのも当社の大きな強みです」

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高級感ある車検証入れとティッシュカバーも販売中。

ガラス細工のような美しさ 「割れない花瓶(MULTI VASE)」

 「第10回 PVC Award 2023」でオーディエンス賞を受賞した「割れない花瓶(MULTI VASE)」は、多用途性とユニークなデザインで注目を集めた作品。花瓶としてだけでなく、金魚鉢やランタンとしても使用できる製品です
 本体は岐阜県で作られる美濃和紙を高透明な軟質塩ビシートに挟み込んだ素材を使用しています。美濃和紙の繊細な風合いと模様をデザインとして活かしながら、塩ビと組み合わせることにより、破れや水濡れ、汚れといった和紙の弱点をカバーし、耐久性と実用性を高めています。
 PVC Award 展示会では、しっかりとした構造でありながら、使わないときは折りたたんでコンパクトに収納可能であることや、まるでガラスのように見える美しさに驚く声が多数上がっていました。

写真:割れない花瓶(MULTI VASE)
軽量で持ち運びが簡単、お見舞いのお花と合わせてプレゼントするのもおすすめ。

製作していく上で工夫した点

 本作品は、㈱三共が以前、独自に考案した和紙を挟み込んだ塩ビシートと地元のデザイナーが持ち込んだ花瓶本体のデザインを組み合わせています。
 独自の形状を実現するために、開発が難航した場面もありましたが、「これまでにないアイデアを実現したい」という熱意が原動力になりました。
「デザイナーさんのアイデア通りの形にするためには試行錯誤が必要でした。特に、テーパー形状へのこだわりを実現するのが至難の業。独特な形状を実現するためには、どうしても作業の工程数が多くなります。そのため量産に向けてコストバランスを考える必要もあり、様々な方法を検討しました」
 何度も製造方法を見直した結果、初期の設計よりも一回り大きく、かわいらしい丸みを帯びたシルエットの花瓶が完成。塩ビのウェルダー加工性が、作品の成型に大きく活かされています。
 初期型の花瓶のみの用途から大きく進化し、使う人のアイデア次第で色々な使い方が楽しめる、より自由度が高い製品になりました。

写真:PVC Award 展示会での様子
PVC Award 展示会での様子。
人気投票では、投票者218人(総数1,000人)が投票されました。

オリジナル製品開発への取り組み、今後の抱負

「本作品の開発は、デザイナーさんのアイデアが初めの一歩になりました。当社では、今後も業界の内外問わず、新鮮な発想を歓迎します。今後もぜひ、斬新なアイデアや実現したいデザインをお持ちの方との出会いに期待しています」
 ㈱三共の得意分野は、製品化するための技術的なバックアップやノウハウを提供すること。また、既存の製品に付加価値をつける製品のブラッシュアップを提案することです。
「当社では、『あったらいいな を形にする』というコンセプトのもと、日々ものづくりに取り組んでいます。これからも、他社にないものを作りたいというこだわりを大切に、新製品の開発に意欲的に取り組んでいきます」

写真:小酒井陽一氏、小酒井茂氏
小酒井陽一氏(左)、小酒井茂氏(右)