2024年07月 No.122 

インフォメーション 2

地元に根ざしたオリジナル製品づくり
/有限会社キッカワ

 ㈲キッカワは、塩ビクラフトメーカーとして、受注製品のみならず、雑貨品を中心としたオリジナル製品の開発にも力を注いでいます。
 今回は、同社のオリジナル製品の中でも、「第10回 PVC Award 2023」の応募作品、「クリアバック with デニムポーチ」についてお話を伺いました。企画に至った経緯や、製品化を実現した技術とアイデアについて、㈲キッカワ 代表取締役 守本貞江氏にお話しいただきました。

写真:お話しいただいた守本氏
お話しいただいた守本氏

有限会社キッカワ

 1967年に創業、広島県の備後地区で、地域に彩と快適さを提供する塩ビクラフトメーカー。受注・塩ビ加工全般にわたる豊富な知識を活かして、受注生産のほか、開発・企画も一貫して行う。また、自社で企画したオリジナルグッズも販売中。塩ビ素材を主軸に、マスクケースやバッグ類などの使いやすさにこだわった製品を多数展開中。

 ㈲キッカワは、1967年に「吉川ビニール商会」として創業。当初は自宅を拠点に塩ビシートの加工事業を営んでいましたが、事業の拡大とともに、1981年には現在地に工場が完成。以来、裁断や高周波ウェルダーによる溶着、各種ミシンによる縫製、シルク印刷・箔押し・インクジェットプリントなど、幅広い加工技術を持つ強みを活かして、多様な製品の受託製造に携わってきました。
 時代の流れとともに、取り扱う製品の変化などに対応しながら、着実に実績を積み上げてきた㈲キッカワですが、2009年に工場全焼という、大きな試練に直面しました。
「工場火災が発生した時は、使用していた機械も社員の気力も、何もかもを失ったと思いました。ですが、先代の父からの『取引先に迷惑をかけるわけにいかない』という力強い言葉があって、火災の2ヶ月後にはなんとか事業を再開。苦しく困難な状況から立ち直って以来、『立ち止まらずにできることを!動いただけが財産』というスローガンを胸に、一致協力の精神で事業を続けています」
 2016年頃からは、これまでの受託製造に加えて、オリジナル雑貨の企画・製品化にも着手。ポーチ類やケーブルクリップ、アクセサリートレーなど、数多くのオリジナルグッズを生み出しています。近年は、地元・ばらの町「福山市」の名物であるバラをデザインに取り入れたグッズ作りに注力しているそうです。
「当社のバラをモチーフとしたグッズは、福山市の『認定ばらグッズ』に選んでいただき、多くの人に手に取っていただいています。長年、地域とともに発展してきた当社だからこそ、地元の活性化に貢献していきたいと考えています。また、地域おこし活動を通じて、地元の企業さんと出会い、製品開発や販売協力などのコラボレーションのきっかけにもなっています」

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様々なミシンを揃えており、厚い物から薄い物まで幅広く対応。
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オリジナルグッズのマスクケースとスカーフ付きハンドバッグ

 「PVC Award 2023」への応募作品「クリアバッグ IN デニムポーチ」は、塩ビ製の透明なクリアバッグとデニムポーチを融合させた斬新なハンドバッグ。福山市はデニムの産地でもあり、デニムポーチの部分は繊維製品の加工会社㈱四川の雑貨ブランド「PooLoce」が製作しています。
 本作品は、約6割が塩から作られる無色透明の塩ビバッグと、使用されずに廃棄されてきたデニムループ(ベルト通し部分)を組み合わせたアップサイクル製品。サステナビリティとデザイン性を両立した、目を惹く作品です。

写真:クリアバッグ IN デニムポーチ
クリアバッグ IN デニムポーチ

「本作品のようなオリジナル製品を開発できたのは、多様な加工を自社で行えるからこそ。社内で試作品づくりを完結でき、微調整が可能なので、作り手としての意匠を反映しやすい。また、完成するまでの時間短縮とコストの削減につながっています。軽くて汚れを拭き取りやすいという使い心地の良さや、異素材を組み合わせた風合いの面白さなどを気に入っていただければ嬉しいです」

写真:デニムループの風合いは製品
デニムループの風合いは製品によって少しずつ異なる一点物で、ギフトにもおすすめ。

 オリジナル製品の開発に意欲的に挑戦できているのは、若手社員からの新鮮なアイデアの影響も大きいそうです。
「便利でお客様が手に取りやすいグッズを生み出す上で、若手社員の柔軟な発想は不可欠な要素。これからも若手社員からの意見を積極的に取り入れて、オリジナル製品をブラッシュアップしながら、販売先やPR先を増やしていきたいです。その中で、さらに社内の技術力を高めたり、ノウハウを蓄積したりすることで、より楽しく夢や目標を思い描いていければいいなと思います」
 ㈲キッカワでは、若手が主体的に活躍できる職場を目指して、社員同士が自由に意見を交わし合える機会を増やしています。若者が一緒に働きたいと思える職場環境づくりに取り組み、新たなアイデアを生み出す土壌を育んでいる最中です。
「今後は、当社が長年にわたって培ってきた技術と塩ビシートの持ち味を活かした、実用的な新製品の開発にも挑戦していきたいと考えています。例えば、介護現場での使用を考慮した耐水性や清潔性を備えた製品など、現場のニーズに応えるアイテムを提案していきたいです。開発力・製造力を増強しながら、社会貢献にも繋がる製品開発を目指していきます」

写真:現場で活躍する若手社員
現場で活躍する若手社員