2024年07月 No.122 

インフォメーション 4

リサイクル塩ビを使用した「環境対応型ターポリン」
/クラレプラスチックス株式会社

 クラレプラスチックス㈱では、長年培ったコーティングやラミネート技術により、高機能なターポリンやフィルムコーティング品を製造しています。2024年7月にはリサイクル塩ビフィルムを使用した「環境対応型ターポリン〈ハイドロックス〉-R」(以下、〈ハイドロックス〉-R)を発売。これまで実現されていなかったリサイクル塩ビ素材を使ったターポリンの商品化に挑戦しました。今回は、クラレプラスチックス㈱ 営業本部 フィルム・シート販売部 シート販売課 課長 山原聡氏、森岡達常氏にお話を伺いました。

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クラレプラスチックス株式会社

 1905年に創業。ゴム・化成品事業、フィルム・シート事業、コンパウンド事業の3事業を主要事業とし、ゴムやプラスチック製のホース、ラミネート製品、帆布・テント、および、コンパウンドの製造・加工・販売を行う。長年培ったコーティングやラミネート加工技術によって製造されたターポリンは、高い耐久性と安全性が必要とされる産業資材から、デザイン性と意匠性が必要とされる建築・インテリア資材、および、昨今の省エネに対応した環境資材まで、幅広い分野で活用されている。

塩ビフィルムのマテリアルリサイクルに着目

 クラレプラスチックス㈱のフィルム・シート事業では、様々な機能を持つターポリン素材を幅広く展開しています。
 ターポリンとは、ポリエステル製の基布の表裏に軟質塩ビ製シートを貼り合わせた積層構造の複合素材で、フィルム単体と比べ雨風に強く耐久性に優れていることが特徴。建設現場の防音シート・養生シート、印刷用広告幕、間仕切りシート、野積みシート、内装用ブラインド、屋内用不燃シート、防水エプロン用として使用されるなど、私たちの生活に身近に使用される素材です。
 また、不燃、防炎、採光、防音、抗菌、帯電防止、耐寒などの機能性を付与することで、特殊な用途にも対応できるため、色々な場面で利用されています。
「昨今、環境への意識が高まる中、ターポリン業界でも様々なメーカーが環境に配慮した製品を発表しています。そのような状況で、当社としては、クラレグループの技術力を活かし、リサイクル塩ビを原料としたターポリンを開発しました」(山原氏)
 そして、機能性と環境への配慮の両立を目標に開発されたのが、2024年7月から発売の〈ハイドロックス〉-R。ターポリン重量の約7割(※)にリサイクル塩ビが使用されています。ターポリンの基本性能である防炎性能に加え、防カビ性や抗菌性など、様々な機能を追加することも可能です。
(※)ターポリンの構成により比率は変わります。

写真:豊富なカラーバリエーションのターポリン
豊富なカラーバリエーションのターポリン
写真:建築現場の養生シート
建築現場の養生シート

ターポリンの機能性はそのままに、サステナブルな製品が完成

 〈ハイドロックス〉-Rの塩ビシート部分では、塩ビ複合材の製造工程で発生する端材や規格外品から抽出したリサイクル塩ビを使用しています。塩ビのリサイクル材を使用した製品は色々な分野で登場している一方で、ターポリン素材は特に高い性能が求められるため、これまではリサイクル材の使用が難しいと考えられていました。
「マテリアルリサイクルを進める際の大きな課題は素材の安定性。市中出回り材からのマテリアルリサイクルでは、品質・供給面での安定性の問題があり、現状ではターポリン用途の材料としては、安定性に欠けていました。そこで、特定の塩ビ複合材の工場端材に着目し、提携企業からトレーサビリティが可能な材料を提供してもらうことで、品質・供給の安定性の問題を解決しました。またトレーサビリティを明確にしているため、本製品はSDS(安全データシート)の発行も可能です」(山原氏)
 開発の背景では、ターポリンという高強度・耐侯性・難燃性などの高い性能を必要とする製品だからこそ、難航した点も多くあったといいます。
「開発初期のターポリンは全く強度がなく、触るとすぐに材料同士が剥がれてしまうような状態でした。ターポリンの品質基準を満たすために、改良を重ねてリサイクル材料の特性を掴み、製品化まで漕ぎ付けました」(森岡氏)

写真:〈ハイドロックス〉-R
〈ハイドロックス〉-R

 〈ハイドロックス〉-Rは新製品ということもあり、積極的にサンプルを提供して実際に使ってもらうことで、バージン品との使用感や印刷加工をした際の質感なども分かってもらえるそうです。
 また、〈ハイドロックス〉-Rをより広く知ってもらうため、クラレプラスチックス㈱では環境に関する公的な認証・マークなどの取得も検討しているそうです。
「昨今、建築業界などを中心にターポリンを使用される多くの企業様が、環境に配慮した製品を求められています。そうした期待に応えるためにも、これからは製品の環境への良さを客観的に示すことも重要だと感じており、公的認証などの取得を進めるとともに、本製品と既製品を比較した場合の製造工程時のCO2排出量も調査していきたいと思っています」(森岡氏)

写真:お話しいただいた山原氏、森岡氏
お話しいただいた山原氏、森岡氏