2024年07月 No.122 

インフォメーション 1

なわとびを極め続けて62年!
/株式会社ベルテック

 国内のなわとびの業界シェアナンバー1企業、愛知県名古屋市の㈱ベルテック。1日5,000本ものなわとびを製造しており、「二重跳び名人」「スキッピョンX」など独自商品も展開しています。中でも、縄の中に蛍光色のらせん模様が入った塩ビ製なわとびは、60年を超えるロングセラー。誰もが一度は目にしたことのある商品ではないでしょうか。今回は、作るだけに留まらない㈱ベルテックのなわとびについて、鈴木啓子専務取締役に話を伺いました。

写真:お話いただいた鈴木氏
お話いただいた鈴木氏

株式会社ベルテック

 現在も社長を務める鈴木創梁氏が1961年に創業。メイン事業の押出成形事業では、塩ビをはじめさまざまな樹脂素材を使い、パイプ、なわとび、X線造影樹脂糸、塩ビポーチの角の部分に取り付けるパイピングパーツなどを製造している。特になわとび製造は、国内業界シェアナンバー1を誇る。製造だけでなく、なわとびを通じた社会貢献事業にも取り組む。

シンプルな構造ながら、奥が深いなわとび作り

 1961年の創業当時は、主に玩具や手芸に用いる塩ビ用チューブを製造していたという㈱ベルテック。当時まだ新しい材料だった塩ビは人気があり、玩具問屋に商品を卸す業者から「塩ビのなわとびを作ってほしい」と依頼を受けたことから、今につながるなわとび製造が始まりました。
 縄の部分を作るのは自社工場の押出成形機。塩ビをはじめとした樹脂原料を機械に投入し、加熱。熱によって溶けた原料が細長く押し出され、一定の力で引っ張られることで長い縄が作られていく、というシンプルな方法で作られていきます。
 しかし、狙い通りに作るには、技術とノウハウが必要なのだそうです。
「気候、原料、可塑剤(塩ビ加工の際に用いられる添加物)などによって、加熱温度や冷却のしかた、巻き取り速度など条件が変化するため、安定した成形品を押し出すには職人の熟練の技術が必要ですね」
 ひとくくりに縄と言っても、色や太さ、断面の形状、硬さなどバリエーションは様々。断面の外側と内側とで硬さに差をつけたり、断面の形状を多角形にしたり、塩ビの中にグラスファイバーなど他の素材を入れたりと工夫されています。様々なバリエーションの縄は、重さや硬さも千差万別。ユーザーは自分にマッチしたなわとびを多彩なバリエーションから選べるのだそう。
 また、主原料に塩ビを使ったなわとびには、きれいな色を付けられるメリットがあると鈴木さんは話します。
「塩ビは何と言っても色がきれいに出ます。耐候性も良いので、屋外での使用や雨に濡れても問題ありません。好きな色を持てば気分も上がりますし、最近なら『推しカラー』を選ぶ楽しみ方もありますね」
 ちなみに、ロングセラーとなった「とんピーのなわとび」のらせん模様は、製造の実験を重ねる中で偶然生まれたデザインなのだそうです。

写真:押出成形機械から出てくる、なわとびの縄
押出成形機械から出てくる、なわとびの縄
 
写真:㈱ベルテックで作られた縄
㈱ベルテックで作られた縄。
色だけでなく、縄の質感もそれぞれ異なる。

なわとびのイベントや研究を通して広める、みんなの健康づくり

 ㈱ベルテックでは、なわとびを作るだけではなく、より親しんでもらう取り組みも続けています。活動をけん引するのは、鈴木啓子氏。
「私が当社に入社したころは、なわとびユーザーの多くを占める子どもの数が少なくなりつつある時期でした。会社も変化を迫られる中、なわとび以外の新しい『売れる製品』を生み出すのに注力するのではなく、製品作りも、製品を使う機会作りも含めて『なわとび』を極めていく方向に舵を切りました」
 鈴木さんは専務として業務に打ち込む傍ら、2013年に特定非営利活動法人 日本なわとびプロジェクトを設立。なわとびの普及、啓蒙活動を通じて国民の体力向上と積極的な健康維持に貢献することを使命に、様々な施策に取り組んできました。「30秒間に何回とべるか」という身体能力を極める「スピードコンテスト」の開催を経て、昨年からは、様々な子どもたちが遊んで学べる親子の体験型イベント「ファミフェス」も開催し、なわとびの楽しさを親子で体感できる企画も実施。
 他にも、世界をなわとびでつなぐトレーニングアプリ「JUMPSTA」の監修や、大学と共同してなわとびの運動的価値の検証を行うなど、子どもはもちろん、大人にも楽しんでもらうためのきっかけを発信し続けてきました。
「実は、なわとびは究極のコーディネーション運動(目や耳などから入ってきた情報を脳が処理して的確に体全体に指令を出す運動)と言われており、運動能力も上がるし、記憶力をアップするホルモンも出て、頭の働きも良くなるというおまけもあるんですよ。なわとびを通して、みんなで楽しく健康になってほしいですね」
 目下取り組んでいるのは、自社で作るなわとびの、性能の数値化。現在、オリジナルの検査機械を使い、自社で作る縄を回転させ、様々なデータを取得中。将来的には、ユーザーが自分にピッタリななわとびを選びやすくなり、なわとびの楽しさをより味わえるようになるかもしれません。

写真:押出成形機で作られるなわとびの縄
押出成形機で作られるなわとびの縄は、内側(線)と外側(さや)の押出速度が異なる(内側>外側)。
その速度の差が、内側のらせん構造を作り出している。

自分だけのなわとびを作れるSPEED GEARシリーズ

 これからの展開として、自社なわとびブランド「PEACE ROPE」の、すべてのパーツがカスタマイズできる「SPEED GEAR」シリーズの展開に力を入れています。SPEED GEARシリーズは、縄の種類や持ち手など好きな色を選んで、自分だけのオリジナルなわとびを作れるサービス。公式サイトから購入可能な他、ブラウザ上でパーツを選ぶシミュレーションも可能です。
「パーツを交換できるので、縄が切れたときや、跳び方を変えたいときに、縄の部分だけ取り替えて使い続けることもできます。SPEED GEAR専用のバッグも作りたいと思っており、エコを意識しながらも、長く楽しくなわとびに親しんでいただきたいですね」
 製造から楽しみ方の提案まで、なわとびを通して私たちの健康づくりを応援してくれる㈱ベルテック。今後の展開に期待が高まります。

写真:SPEED GEARシリーズ
SPEED GEARシリーズ