2024年07月 No.122 

特集 リサイクル技術と塩ビ レポート3

再生塩ビの「バトン」をつなぐ、リサイクル企業/株式会社エコロ

 洗浄や粉砕などのリサイクルにかかわる作業は事業の目的ではなく、廃材が再びものづくりに活かされるプロセスの一部分。だからこそ、再生原料を使用する企業側の使いやすさを意識し、品質・量ともに安定して作り続ける技術や仕組みは必要不可欠。今回取材した㈱エコロは自社技術を活かし、市場を意識しながらもプラスチック製品や壁紙のリサイクルを行っています。その取り組みについて㈱エコロ 代表取締役 後藤雅晴氏にお話を伺いました。

写真:サラリアシリーズ
お話を頂いた、後藤氏

株式会社エコロ

 株式会社エコロは埼玉県入間郡三芳町に本社を構えるリサイクル企業。2011年に創業。後藤氏は、かつて勤めていた一般廃棄物処理企業や東京都環境公社等で、廃棄物リサイクルと製造の両方の視点から現場に関わり、再生原料の出口戦略も考えるようになりました。設立以降、株式会社エコロは、プラスチック・壁紙リサイクルや産業廃棄物収集運搬、リサイクルコンサルティング、リサイクル機械販売などで実績を重ねてきました。中心となる壁紙のリサイクル事業では、壁紙を高い精度で塩ビとパルプに分離。分離後の塩ビは床材メーカーなどで再利用されています。

技術と設備で効率的な壁紙リサイクルを実現

 ㈱エコロでは、様々な廃プラスチック類はもちろん、製造過程で出た壁紙端材のリサイクルも精力的に取り組んでいます。
 私たちの生活の中で使われる壁紙は、実はパルプだけでなく、塩ビとパルプの複合製品です。複合製品であるがゆえにリサイクルしづらいのが難点。しかし、㈱エコロでは、業務提携先であるENMA社(フランス)製の高性能な破砕機導入と粘り強い試行錯誤の結果、「壁紙リサイクルシステム」を開発しました。独自開発したシステムでは、壁紙端材の投入から分離された塩ビとパルプの排出までの間を「クローズ化」。再生原料が外部環境に触れないようにすることで、異物混入と作業環境への粉じん飛散を防ぎ、リサイクル塩ビの品質の担保、および、作業環境の改善に努めています。
 処理中に発生する静電気の影響(配管閉塞)は、要所ごとに現場のスタッフが設備の運転条件を微調整します。人の手は要りますが、処理工程をクローズ化したことで最低限の人員で設備の運転が可能になっています。さらに、パルプの消費先の多角化を目的に、独自商品「紙猫砂」を開発し、海外を中心に販売。また、リサイクルのコンサルティングも実施しています。脱炭素経営が注目されている今、㈱エコロの技術とノウハウは大きな推進力になるかもしれません。

写真:再生パルプと再生塩ビ
再生パルプ(写真左)と再生塩ビ(写真右)

壁紙リサイクルの技術を手帳カバーに転用

 ㈱エコロの最近の実績の一つが、「手帳カバー」のリサイクルです。
 2022年に㈱日本能率協会マネジメントセンターとともに、同社が販売する手帳シリーズNOLTY・PAGEMの手帳カバーに使われている塩ビのリサイクルを開始。10か月程度で事業化を実現し、現在は年間80トンをリサイクルしています。
 壁紙に似て、手帳カバーは塩ビと不織布等の複合製品です。壁紙分離で培った技術を転用し、床材の中間層などへの100%再利用を実現しました。
「現在、回収された手帳カバーの99%がリサイクル可能になりました。2030年までにリサイクル率100%を目指しています」
 他にも、最近は製品設計の段階から「リサイクル可能な製品づくり」を意識しているメーカーも増えているとのこと。
「大手メーカーではリサイクルのゴールが明確になっていて、どうやって達成するかを問われ、日々、試行錯誤の連続でもあります。㈱エコロにはコンサルタントとしての役割もあります」

写真
手帳カバーリサイクルに用いられる比重分離機
写真
破砕・分離された手帳カバーの繊維(写真左)と塩ビ(写真右)

市場を意識した持続的なリサイクル事業

 リサイクル事業を長期的に続けるために必要な再生原料の「出口戦略」を、㈱エコロでは常に意識しています。
 塩ビ製品の製造現場では、バージン材と再生原料の価格差により、再生原料の使用量が大きく増減し、廃業してしまうリサイクル業者も少なくありません。そんな中、㈱エコロでは、「使う側(出口側)」の事情に耳を傾け、理解することで、具体的な対策を立案&実施しています。顧客の求める品質を満足させながら、同時に過剰品質としない取組みも大切です。例えば、壁紙リサイクルでは、塩ビ中のパルプ混入率を最小限に抑えるのではなく、許容範囲内でコントロール(一定量混入させる)することで、消費電力と品質のバランスをとっています。その結果、月々の電気料金が1/4まで削減され、品質だけでなくコストの面でも事業の継続性に繋がっています。また、これらの設備は、社内のエンジニアたちが日々調整し、課題や新たなニーズにも素早く対応可能。効率化、コストダウンを図りながら、様々なリサイクルに挑戦し続けています。
「預かった廃材を、次の方が使いやすい形に加工して渡してゆく。それぞれの企業が経営を安定させ資源を循環させてゆくために、お互いにバトンを渡し合うような気持ちでリサイクルに取り組んでいきたい」

破砕機の技術とノウハウを生かし、もっとリサイクルが進む世界へ

 ㈱エコロのグループ会社に、破砕機を取り扱う㈱ENMA JAPANがあります。グループとして掲げる展望の一つに、顧客工場内への粉砕設備等の導入コンサルティング事業があります。オンサイトに粉砕設備があれば、物流コストや横持費用の抑制が可能になります。
「私たちはリサイクルの技術やノウハウ、そして実験設備を持っています。メーカーさんと効率の良い仕組みを作り上げていきたい。今年それを実現するための実験設備『リサイクルラボ』を立ち上げました。事業者はもちろん、リサイクル分野で活躍したい若者にも注目していただきたい」
 他にも、関西でのリサイクルプラント増設や、小型粉砕機のレンタル業を展開しプラスチック製品の店頭回収の効率化も検討中とのこと。
 ゴールを見据え、事業者同士でバトンを渡し合うようにリサイクル事業を展開していく、㈱エコロ。これから進んでいく事業展開に期待が高まります。