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熟練した技術でジャパン・クオリティの塩ビ製ポーチを届ける/㈲シンコウクラフト
文具や化粧品の収納に便利な、透明ポーチなどの溶着で多用されている高周波ウェルダー加工。水漏れや破れに強く、美しく仕上がるのが特徴で、塩ビ製品の普及に貢献してきた代表的な加工技術です。今回は、ポーチ類などの高周波ウェルダー加工に長年携わってきた㈲シンコウクラフト 代表取締役 筒居信治氏に、高周波ウェルダー技術を用いた塩ビ製品づくりについて、お話を伺いました。
㈲シンコウクラフト
1968年に創業、PVC、オレフィンシート、フィルム素材を使用した高周波ウェルダー加工を行う。小ロット注文から対応し、短納期かつ高品質の国内生産だからこその強みを活かした製品を提供。ノベルティ商品のポーチや文具、ケース、カバーなどの製品の加工を手掛けている。「オリジナルビニールポーチ.com」では、豊富な知見を活かしたビニールポーチのOEM制作を展開。製品の企画・印刷・加工・製造・納品まで幅広い要望に応える。シルク印刷・オフセット印刷などでの微妙なデザインや、商品のカラー指定も相談可能。
塩ビの需要拡大とともに登場した、高周波ウェルダー加工
㈲シンコウクラフトは、創業56年の高周波ウェルダー加工のプロフェッショナル。塩ビ製おもちゃのブームや石油ショックなどによる需要と時代の流れに沿いながら、丁寧で高品質なものづくりを続けてきました。
「創業者である先代社長は、もともと高周波ウェルダー加工の機械メーカーで勤務。当時、客先から譲り受けた高周波ウェルダー加工機を使って自宅で塩ビ生地の加工を始め、注文が殺到したことで創業に踏み切りました。以来、『お客様の意に沿う』をモットーに、高周波ウェルダー加工を用いた製品づくりをしています」(筒居氏)
高周波ウェルダー加工とは、専用の機械で高周波を当て、生地の内部から加熱し溶着する技術。塩ビなどの一部のプラスチックに使用できます。高周波ウェルダー加工の大きな特長は、縫製加工のようにミシン穴ができないため、水漏れや破れに強い溶着が可能なこと。さらに、溶着と切断が同時に行えるため、作業が効率化できる上、仕上がりも美しいことなどが挙げられます。
㈲シンコウクラフトが創業した1960年代は、プラスチック工業が伸長した時代であり、画期的な加工方法として登場した高周波ウェルダーの技術は、非常に重宝されました。
「今では、高周波ウェルダー加工は日常生活に浸透して、非常に身近な加工方法になりました。ポーチや文房具類などで多用されているほか、意外なところでは、お守りカバーや杖のカバーなどにも使用されています。実は、身の回りの小物類を中心に、たくさん見つけられる技術です」(筒居氏)
変わらぬジャパン・クオリティを提供し続ける
時代の流れに合わせて、これまで二万件以上の製作実績を重ねてきた㈲シンコウクラフト。最近の主力製品はキャラクターをプリントしたファンシーグッズで、ポーチ類の製作を中心に行っています。作業場では、熟練した職人が、塩ビ生地の張り感を生かした、立体的で美しい製品を一点ずつ手作業で仕上げています。
一時期、ダイオキシンや環境ホルモンを問題とする“塩ビ離れ”が起きた時には、塩ビに代わる別のプラスチック(ポリオレフィン・ウレタンフィルムなど)を使用していました。しかし、他の高周波ウェルダー加工が可能なプラスチックと比べても、塩ビならではの魅力があると言います。
「透明度が高く、固さを自由に制御できる点は、塩ビだけの長所です。さらに、時間が経っても変色せずに高い透明度を保てるので、特に見た目が重視されるアーティストグッズなどのノベルティ製品との相性も良いです。製作する側からすると、塩ビは傷がつきにくく、折り曲げたときのシワも残りづらいので作業しやすい。購入者にとっては、防水性などの便利な機能を付与した製品が作れます。こういった長所を考えれば、塩ビほど手軽な素材はないと感じています」(筒居氏)
㈲シンコウクラフトでは、安定した製造を目指すために、従来の大量生産品に加えて、小ロットで付加価値の高い商品の製造にも取り組んでいます。背景には、塩ビ加工業界を取り巻く状況の変化がありました。
「長年、小物製品の加工に携わる中で、これまでの同一キャラクターの製品が数万個単位で求められた時代から、個人の好みの多様化により、少量多品種の生産の時代へと移行してきていると感じています。その中で、市場での存在価値をさらに高めるために、顧客ニーズの多様化にも、きめ細かく対応。さらには、これまで高周波ウェルダー加工を担っていた作り手の高齢化や減少も進んでいるため、私たちの仕事も変化しつつあります」(筒居氏)
高周波ウェルダー加工は、かつては農家の閑散期の手作業として広まりました。各家庭で作業を行う職人が各地に点在していましたが、現在では、職人の高齢化が進んでいるそうです。さらに、後継者不足の課題もあり、高周波ウェルダー加工業界は全体として縮小傾向にあります。
「国内の高周波ウェルダー加工は、丁寧な手仕事だからこそ、どうしても加工費用とのバランスが取りにくいという課題があります。その結果、多量の発注は海外での委託加工が増加し、日本での加工場が少なくなってしまったのが現状です。しかし、今の時代のニーズを敏感に捉えながら、国内生産だからこその高品質で丁寧な仕上がりを求めている方々に、変わらずに製品提供していきたいと考えています」(筒居氏)
よりお客様に寄り添いながら、塩ビ加工業界の火を繋げていく
塩ビ製の小物は、これまでテレビドラマやファッションブームを通じて、何度も一大ブームになっています。その理由として、筒居氏は、塩ビ独自の高い透明性と柔らかな触り心地がファッションなどとの親和性が高いことを挙げています。他の素材には見られない塩ビの特性が、再び今後もブームを起こす可能性にも期待していると言います。
「消費者が商品と出会うまでの経路も、嗜好も、さらに多様で複雑になっているのが現代です。今後は、さらに消費者との距離感を縮めて、お客様のニーズにより直接的に応えられるような方法を模索していきたいと考えています。その一環として、将来的には、オリジナル商品の開発や販売など、これまでとは異なる販路の開拓にも挑戦していきたいと思っています。日々の製造活動を通じて、国内の塩ビ加工業界の火を絶やすことなく、次世代へと繋いでいきたいです」(筒居氏)