2024年04月 No.121 

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産学連携プロジェクト、上田学園生が塩ビ製レインブーツをデザイン

 上田安子服飾専門学校(大阪府大阪市北区、以下、上田学園)と、森川ゴム工業所がコラボレーション企画を実施。森川ゴム工業所の代表製品であるレインブーツを、学生がデザインしたコラボ作品は「第152回上田学園コレクション2024」で発表されました。
 今回は上田学園 産学官連携推進室 副室長 濵屋但先生と学生の皆さんに、作品制作の様子や、ファッションの分野での塩ビ素材の可能性について伺いました。

写真:濵屋但先生
濵屋但先生

学校法人上田学園上田安子服飾専門学校

 1941年の開校以来、伝統と実績で培った独自のカリキュラム、優れた講師陣、充実した設備でファッション業界のトップで活躍するプロを育成しています。企業と連携したカリキュラムなどを通じて、高度な職業教育を実践。創設者 上田安子氏がクリスチャン・ディオール氏から受け継いだ感性や技術の継承に留まることなく、次世代のファッション界の担い手を育成しています。

コラボ企画を通じて、ものづくりのプロの世界を体感

 上田学園は、服飾専門学校の中でも早くから産学連携を積極的に進めており、これまで国内外を含めた様々なコラボレーション企画を行ってきました。
 産学連携の授業では、通常の学校課題と異なり、製作を協力企業側に一任することもあるので、プロデザイナーの働き方に近い学びの機会になっています。
 「産学連携プロジェクトを通じて、学生時代から製作現場の様子を学び、自分のデザインイメージを表現するために必要な仕様などの伝え方を身につける貴重な機会になっている」(濵屋先生)
 今回、作品の制作に取り組んだのは、ファッションクラフトデザインコース 20名の学生たち。無色透明な塩ビ素材を使用したレインブーツをデザインしました。普段は、シューズやバッグ、ファッション雑貨に必要な知識、技術を基礎から習得。時代性をとらえた商品企画、デザイン、作品製作ができるクリエイターを目指して、日々作品づくりに励んでいます。
 今回のコラボ企画に先立ち、森川ゴム工業所では参加学生のために工場見学を実施。レインブーツに使用されている素材の特徴、製造工程について学びました(詳しくはPVC news 120号)。
 「工場見学では、職人さんがレインブーツ内側の布を引き伸ばしながら樹脂を注入する場面を見せていただきました。布が樹脂に合着される一体成型の仕組みを教えてもらい、層のように見える外見からもアイデアが膨らみました」(学生)

写真:グランフロント大阪にて開催された上田学園コレクションでの展示
グランフロント大阪にて開催された
上田学園コレクションでの展示

学生独自のアイデアで、塩ビの特徴を生かした作品に

 塩ビ製レインブーツならではの光沢や触感から、十人十色の多様な作品が生まれました。透明度の高い塩ビ樹脂からスムージーグラスを連想したカラフルな作品や、レインブーツの丈の長さを生かして地層を模したデザインなど、学生が作品に込めた様々なアイデアが見られます。
 「今回、デザインしたレインブーツは、布地以外の部分は靴底まで透明。ブーツの裏面を見た際にもデザインが映えるファッションアイテムは珍しく、塩ビ製品独特の魅力です。この特徴を活かせるように、裏面から見た時の面白さにも気を配ってデザインしました」(学生)
 完成した作品を手にした学生からは、仕上がりを想定するのが難しかったという意見も聞かれました。
 「布地の伸縮性は考慮していたものの、上手く模様の位置を表現できなかった部分もありました。ただ、自分では想像していないデザインに変化したのが面白くもあり、製品化していただいたからこその気づきがありました」(学生)

デザインの視点から塩ビの魅力を発見、サステナブルなファッションにも

 塩ビ素材を使った作品制作は、ほとんどの学生にとって初めての体験。塩ビ素材に触れながら、機能面でも見た目にも新鮮な発見や感想が生まれていました。
 「塩ビのつるっとした質感を際立たせるために、別の素材と組み合わせてみたいです。また、ある程度の厚みがあっても透明度が高いのが魅力的だと思いました。あえて中身を見せるバッグや、靴下を見せるような履き物など、透明性を活かしたアイデアがたくさん浮かびますね」(学生)
 上田学園では、これまでも関西の塩ビ加工会社のグループ「PVCnext」との産学連携プロジェクトを通じて、ファッション分野での塩ビ素材の活用に挑戦してきました。
 「塩ビは、印刷や加工などもしやすく、リサイクル可能なエコ素材。ファッションとの相性も良いと考えています。塩ビの性質や活用方法を勉強することは、これからファッション業界に出ていく学生たちにとって、とても良い機会になっていると思います」(濵屋先生)

写真:完成作品を紹介する学生の皆さん
完成作品を紹介する学生の皆さん

産学連携企画を通じて、多面的で豊かな学びを味わってほしい

 森川ゴム工業所と上田学園のコラボ企画は今年で7回目。森川ゴム工業所の全面的なバックアップのもと、「塩ビ製レインブーツのデザイン」という共通のテーマで、着々と回を重ねてきました。
 「回数を重ねるごとに良いデザインが仕上がり、コラボ企画全体としての完成度も高まっているのを感じます。企画から商品として一連の考え方を学べるところが産学連携プロジェクトの良さです。今回のような企画が継続的に実施できるよう、これからもご縁があることを願っています」(濵屋先生)

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