2023年7月 No.119 

特集 身近で活躍する塩ビ レポート2

カーラッピングの技術で
街を彩り、世の中を楽しく

 カーラッピングとは、専用フィルムを車体に貼りつける技法のこと。イベントで目にするラッピングカー、宅配トラック、飛行機の機体デザインなど、可読性の高い鮮やかなカラーリングは、塩ビフィルムが可能にしています。最近では、フィルムを貼り替えるだけで好みのカラーリングや質感を楽しめると、個人の自動車愛好家の間でも人気になっています。今回は、㈱ワイエムジーワン(以降、YMG1)のカーラッピングサービスについて、代表取締役 山家一繁社長に伺いました。

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㈱ワイエムジーワン

 ㈱ワイエムジーワンは1956年創業のラッピング会社で、東京オリンピックのバスラッピングを行うなど、企業の営業・配送車両や公共バスへのカーラッピングサービスを行う。目的に沿った車両の選定やデザインを提案している。
 近年、個人向けのカーラッピングの施工も開始。各種SNSを通じて、カーラッピングの楽しみ方を発信し、普及活動に努めている。施工技術者の養成のためにカーラッピングの講習会を開いたり、地域の壁面へのラッピング施工を行ったりしながら、カーラッピングの可能性を広げている。

企業向けには宣伝戦略を、個人向けには手軽さと美しさを

 YMG1は路線バスのラッピング事業を2000年に開始、以来、関東地方を中心に営業車の施工を多く手掛けてきました。街中ではコーポレートカラーでラッピングされたり、会社ロゴを付けている郵便配達車や配送トラックを見たことがある人は多いと思います。
 YMG1の企業向けのカーラッピングでは、ラッピングの目的や宣伝効果を最大限に発揮するため、マーケティング戦略に基き、最適なラッピング方法を提案しています。
 営業車の中でも特に「ラストワンマイル」と呼ばれる、配達事業所から消費者までの最後の配送区間を走る車両は人目に触れる機会が多く、ラッピング事業のマーケティングでは非常に重要な意味を持つそうです。

写真:バスのカーラッピング事例
バスのカーラッピング事例

 一方、個人向けの装飾目的でのカーラッピングも、車愛好家を中心に広がりはじめています。フル塗装より短期間で施工可能で綺麗に剥離できるため、車の資産価値を保持しながら手軽にカラーリングを楽しめます。
 「個人向けカーラッピングは、もともとヨーロッパで人気の車好きのためのカルチャーでした。それが近頃、若い世代を中心にラッピングカーの画像がSNSで拡散され、一般消費者の間でもカーラッピングの認知度が上がりつつあります。
 カーラッピングならコンピューターグラフィックスで作成した複雑なデザインが可能。色の再現性も高く、優れた仕上がりが実現できます。今後、さらに幅広い層から人気が高まると予感していますね」(山家社長)

写真:個人向けカーラッピングの事例
個人向けカーラッピングの事例

美しいカーラッピングに最適な塩ビフィルム

 カーラッピングで使用されるフィルムは、塩ビ(PVC)製です。塩ビフィルムは施工性と耐久性、装飾性を特徴としており、屋外での使用にはキャスティングフィルム(高価で薄い)が、屋内向けにはカレンダーフィルム(安価で厚い)が使用されます。
 屋外で長年使用しても劣化しにくい塩ビフィルム(50μ厚)にインクジェットプリンターでデザインを印刷後、表面を塩ビフィルム(50μ厚)でラミネートしています。
 「夏季、炎天下での車体は表面温度が80度近くの高温になりますが、カーラッピングのフィルムが溶け出したり、色移りしたりといった心配もありません。一時期はアクリルフィルムが代替品として利用されていたこともありましたが、コスト面と機能性の高さから、現在の主流は塩ビフィルムです」(山家社長)

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カーフィルムの構造図
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カーラッピングに使用されるフィルム

 YMG1では、剥離しやすい特殊な接着剤が使用されたフィルムを使用。フィルムの性能を熟知した技術力の高い施工士が、曲面の多い車へのフルラッピングを担当しています。
 「オーナーの皆様には、長く綺麗な状態のまま、決して剥がれずにカラーリングとデザインを楽しんでいただきたいという思いがありますね。端面まで丁寧に施工したり、フィルムの収縮を防ぐ熱処理(アニール処理)をしたりといった緻密な作業が高い評価をいただいています」(山家社長)

写真:施工の様子
施工の様子

将来の展望

 YMG1ではカーラッピング技術の広まりを通じて、雇用創出も目指しています。
 カーラッピング施工士は、スキルを身につけていれば、転居やブランクがあっても仕事を継続可能。また、塩ビフィルムを扱う際の最適温度は15℃から23℃と、施工士にとっても非常に過ごしやすい環境です。これらの条件から施工士は、子育て中の女性を含む、多くの人にとって魅力的な職になると考えているそうです。
 「カーラッピングの存在をより多くの人に知ってもらい、車のカラーリングを楽しむというトレンドを高めることで、雇用創出の機会を増やせると期待しています」(山家社長)
 さらにラッピング装飾は一般消費者への訴求力が高く、広告目的を超えた大きな将来性を秘めていると山家社長は語ります。
 YMG1で扱っている塩ビフィルムは車の外装だけでなく、ビルやウィンドウの装飾など、屋外での施工も可能です。
 「これまでに橋の下の壁面にイラストをラッピングした経験から、街へのラッピングは、そこに住む人の意識を変えたり、防犯対策になるといった効果を感じています。これからも世の中をもっと楽しくするために、ラッピングフィルムの可能性を広げていきたいですね」(山家社長)

写真:お話いただいた山家社長
お話いただいた山家社長