2023年7月 No.119 

特集 身近で活躍する塩ビ レポート1

医療の発展に貢献する
SBカワスミ㈱の塩ビ製品

 塩ビ(PVC)は、薬品に対する耐性があるため医療の現場でも多く活躍しており、医療機器の材料として多種多様な塩ビが使い分けられています。
 今回は、献血や輸血に使われる血液バッグや人工腎臓などの医療機器分野で事業を展開しているSBカワスミ㈱を訪問。メディカル事業統括部 法人営業部 ゼネラルマネージャー 西村元延氏に、塩ビが関係した医療機器についてお話を伺いました。

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SBカワスミ㈱

 SBカワスミ㈱は、住友ベークライト㈱の医療機器事業と川澄化学工業㈱の統合により、2021年に発足しました。前身の川澄化学工業㈱は、1954年に日本初のプラスチック製の採血・輸血セットを実用化して以来、血液バッグを中心として血液事業分野(血液との適合性)に強みがあり、一方の住友ベークライト㈱医療機器事業は消化器系、呼吸器系、投薬管理に強みがありました。両社の統合により、それぞれの強みを活かすとともに、低侵襲治療を中心とした革新的な医療機器の開発を進めている。

安全性・衛生性を保つために医療現場に不可欠

 SBカワスミ㈱は、内視鏡治療に使われるカテーテルや血管治療用の製品、人工透析関連製品、採血・輸血関連製品など幅広く医療機器を提供。国内外の生産拠点からグローバルに事業展開しています。
 血液事業分野では、献血の際に目にする血液バッグや成分採血キット、チューブが塩ビ製。ドナーから採取した血液から、輸血後の副作用の原因となる白血球を除去後、遠心分離処理により血漿と赤血球に分離します。そして血漿は血漿分画製剤に使用され、赤血球は保存液を添加後に輸血用として保管。SBカワスミ㈱の血液バッグでは、これらの全ての操作を無菌状態で行えます。
 塩ビ製のチューブやバッグが登場する以前は、ゴム管やガラス製容器が使用され、感染症など衛生面に不安があったと言います。
 塩ビを採用したことにより、①ディスポーザブル化(使い捨て化することで衛生性が向上)、②滅菌処理できる、③37℃の血液中での柔らかさが調整できるなど多くの利点があるとのことです。
 「塩ビ製の医療機器は、化学的に安定であり、柔軟性、耐久性に優れていることから各種の滅菌処理も可能です。また、価格も比較的安価で患者さんごとに使い捨てができるので、感染防止対策等で患者様の安全面を支えています」(西村氏)

写真:血液バッグ
血液バッグ

より精度の高い製品づくりのために

 SBカワスミ㈱が提供する医療機器は人命に関わるため、厳重に品質を管理しています。医療現場で使用中に不具合があった場合、血液バッグについては24時間以内に顧客へのフィードバックを行っているそうです。
 SBカワスミ㈱の製品開発拠点になっているのが、本社・殿町メディカル研究所『MediSky』。羽田空港の対岸「キングスカイフロント(国家戦略特区)」に立地し、生命科学・環境分野における世界最高水準の研究開発型企業や大学・研究施設が集まった産業拠点です。2021年10月に操業を開始して以来、アクセスの良さと充実した設備環境から、より製品開発がしやすくなったと言います。
 「私たちが開発している製品のクライアントは医師などの医療関係者ですが、最終的には患者さんの元に届く製品です。『MediSky』では、当社の製品を医師が試用できるデモンストレーションのためのシミュレーションルーム(手術室)を完備。これまで以上に医療関係者から製品の使用感を聞きやすくなりましたね。また空港からのアクセスが良いため、国内外の医師から製品開発のためのアドバイスをいただける機会が増えました」(西村氏)

図:SBカワスミ㈱の独自製品「カリウム吸着フィルター」
SBカワスミ㈱の独自製品「カリウム吸着フィルター」

人体にも環境にもやさしい製品を

 射出成型時のランナーやバッグの端材などの製品製造時に出た端材は自社工場内でリサイクルされています(廃棄物は25%削減)。安全性のために使い捨てが前提の医療機器ですが、製造工程での廃棄をできるだけ低減するための工夫もされています。
 「SBカワスミ㈱では、人と環境にやさしい製品づくりを進めてきました。今後も医療の発展への貢献に加えて、環境にもやさしい製品づくりを目指して開発を進めていきたいです」(西村氏)

写真:お話いただいた西村氏
お話いただいた西村氏
写真:本社・殿町メディカル研究所「MediSky」
本社・殿町メディカル研究所「MediSky」