2022年07月 No.116 

インフォメーション

使い手に向き合いながら深める、
丁寧なものづくり

 地下足袋作りから始まった株式会社丸五では、その技術と使い手に寄り添う姿勢を今に伝えながらも、PVCを活用したフットウェア作りにも取り組んでいます。今回は、株式会社丸五 FW商品管理部 企画設計グループ 大橋真人グループリーダーから、会社の特徴と、PVCを活用した自社オリジナル製品「ランランRAIN」開発の背景を伺いました。

写真:イメージ

株式会社丸五

 創業1919年。現場で働く人たちの「安心と安全」を願ったゴム底足袋の開発、生産から丸五グループの歴史がスタート。時代のニーズに応えながら、技術開発や海外進出を展開。現在は、地下足袋やワークブーツの開発製造を行う「フットウェア事業部」、エンジンのラッピングホースを製造する「工業用品部」を中心に事業を営んでいる。

地下足袋から始まった倉敷の老舗企業

 株式会社丸五のフットウェア事業部では、創業当初から取り組んできた地下足袋をはじめ、工場、厨房、病院、林業、土木作業現場で使われる作業用スニーカーや長靴を開発・製造しています。
 さらに、足のメカニズムの研究から得た知見に、地下足袋作りの技術とノウハウを掛け合わせ、足袋型コンフォートシューズも開発しています。
 一方、工業用部品部では、自動車のエンジンルーム内で使われる特殊なラッピングホースを製造。お客様のニーズをスピーディーかつ的確にとらえ、「多品種少量生産」「平準化」「自動化」「ジャストインタイム」を軸に、現場革新と顧客満足度の向上に日々努めています。
 現場の改善アイディアにも一工夫をしています。部品の運搬スティックに「カブトムシ君」と愛称をつけたり、高さ制限を示すラインにスタッフの等身大パネルを採用したりと、愛着を持ちながら、安全性や効率性に意識を向けられる取り組みを進めています。
 二つの事業部は扱うジャンルこそ違いますが、業務的な交流もあります。たとえば、フットウェア事業部で製造したワークシューズを工業用品部のスタッフに試験履きしてもらい、現場の声を製品作りに活かしています。

写真:足袋型コンフォートシューズ
足袋型コンフォートシューズ。つま先が割れているだけでなく、地下足袋作りで培ったノウハウが注ぎ込まれている。

ユーザーに向き合う製品づくり

 PVC Award 2021で優秀賞を頂いたランランRAINは、雨の日も晴れの日もはける、子ども用の防水スニーカーです。作りは頑丈で、雨の日でも靴下が濡れにくい。泥がついても軽くふけば汚れが落ちるので、親御さんにとっても嬉しい製品だと思います。
 この靴は、弊社のスタッフの声から生まれたものです。

写真:ランランRAIN
社員の声から生まれたランランRAIN。
靴ひも付きのデザインに見えるが、アッパー全体が一体型で作られており、水が内部に浸透しづらい構造。

 弊社では以前から、軽量で柔軟性があり、水にも強いPVCの特徴を活かした医療現場のサンダルや防水シューズ、キッチンシューズを製造販売していました。大人用サイズで展開していましたが、社内から「子ども用サイズも欲しい」という声が上がったことから「ニーズがあるなら作ってみよう!」とランランRAINの企画が始まりました。
 子どもの足は大人より柔らかく、靴擦れの心配があります。なので、設計・開発にあたっては、保育園の子どもたちにも協力してもらい、一人ひとりの足を測定。さらにサンプルの靴を履いてもらいながら、フィット具合を細かく確認していきました。
 私は、足に関する基礎知識と靴合わせの技能を持つ「シューフィッター」の資格を持っています。ランランRAINの開発でも、その知識を活かしていますね。
 丁寧に作った甲斐あって、完成品は子どもたちからも親御さんからもご好評いただきました。「雨の日は子どもが自らランランRAINを選んではいていく」「子どもの冠婚葬祭用の靴としても使える」といったユーザーならではのご感想もいただくことができました。
 ランランRAINに限らず、企画開発の過程でユーザーの声を聴くことを大切にしています。
 2022年7月に発売を予定しているPVC農業ブーツの開発でも、これからを担う女性農家の方に話を聞きに行ったり、農業マルシェに出展し農家の皆様とコミュニケーションを図ったりしてきました。
 机の前に座っているだけでは分からないことは、たくさんあります。現在も、「商品開発は問題解決」という視点を大切に、実際に足を通す人の声に耳を傾けながら、他にもたくさんの企画を進めています。

写真:株式会社丸五 FW商品管理部 企画設計グループ 大橋真人グループリーダー

手作業も機械化も大切に、「問題解決」につながる靴をお届け

 これからも、お客様の声と、培ってきた技術とノウハウを大切にしながら、製品作りを通して問題解決に貢献していきたいと思います。
 靴づくりの現場では、一つ一つ手作業で丁寧に作り上げる仕事はもちろん、機械化と効率化でたくさんの製品を作り必要としている場所に届ける仕事も必要です。両方の特徴を活かしながら、問題解決につながる地下足袋やワークブーツづくりを続けていきたいです。
 そしてやはり、地下足袋や足袋型コンフォートシューズを、これからもしっかり守っていきたいですね。製品のリピーターや、魅力を熱く語って下さるお客様も多くいらっしゃいます。そんなお客様の存在があるからこそ、地下足袋の可能性を強く感じることができます。

写真:MARUGO KURASHIKI
倉敷美観地区に、株式会社丸五が運営する「MARUGO KURASHIKI」が2022年4月28日にグランドオープン。
「100年の歴史を日常に」をテーマに、足の健康を追求した足袋型のコンフォートシューズを
現代のスタンダードとして倉敷から世界へ発信していく。