リサイクルの現場から
廃材の収集から製造まで、
一貫した再生塩ビ管づくり
塩ビ管やPETボトル、ポロプロピレン(PP)・ポリエチレン(PE)製容器など様々な種類の廃プラスチックがリサイクルされています。特に使用した製品を原料にしてから再び同じ製品を作り出すことを「水平リサイクル」と呼びます。今回は、日本でも数少ない「塩ビ管から塩ビ管」の水平リサイクルを行う新洋株式会社を訪問し、 営業部 古川城二本部長にお話を伺いました。
再生塩ビ管。リサイクルPVCを表す「R-PVC」が印字されている。
新洋株式会社
廃プラスチックを再資源化するリサイクル事業を展開。千葉県佐倉市の本社リサイクルセンターと茨城県つくば工場、千葉県若葉区富田工場の3拠点を構える。PVCの取り扱いに特化したつくば工場では、廃PVCを使用したリサイクルペレット生産と、それを使用したリサイクル塩化ビニル管を製造している。
国内で数少ない塩ビ管リサイクル業者
当社のつくば工場では、廃プラスチックから再生ペレットや再生塩ビ管を製造しています。廃プラスチックは、本社リサイクルセンターで常時受け入れており、種類別の受け入れ状況は、PP・PEが4割、PVCが3割、その他のプラスチックが3割。
廃プラスチックは、本社リサイクルセンターでの手作業による徹底的な分別のあと、粉砕・洗浄されます。PVC素材の廃プラスチックでは、塩ビ管の回収が最も多く、再び塩ビ管へと水平リサイクルされます。
実は、リサイクル塩ビ管(REP管)は塩化ビニル管・継手協会の規格(AS規格)の認定を受けているのは当社を含め2社のみ。その背景の一つに、PVC素材は他の樹脂よりも元々原料コストが安価なため、原料だけを生産していると会社として利益を生みにくい、という難点があります。
そのため当社では、PVC素材のリサイクルでは、再生ペレットの製造だけでなく、塩ビ管として製品化後に出荷し、商品としての付加価値を上げる工夫をしています。
当社では一般的なパイプ製造工場と同様の設備があるので、穴開けやスリーブ加工まで一貫して製造。出来上がった製品は建築業者や管材商社、一般消費者向けのホームセンターに卸しています。
リサイクルに使用する廃プラスチックの性質から生じる「リサイクル塩ビ管の精度にばらつきが出やすい」という課題も、当社の製造技術の中でほぼクリアしています。
当社の技術に着目し、直接お客様からリサイクルや受注生産の相談を受けることもあり、それに応える柔軟性も当社の強みです。
さらに、PVCの需要が高い海外に向けて塩ビ管用の原料を輸出することもあります。主な輸出先は、インド、台湾、韓国でインフラに塩ビ管を使用している国にパイプ用の原料を供給しています。
リサイクル材料の調達力も大きな強み
リサイクル事業では、原料を安定して確保し続けられるかが非常に重要です。
せっかく受注を頂いても、材料である廃プラスチックが手に入れられず経営が困難になる状況にもなりかねません。
その点、当社は千葉県佐倉市に本社リサイクルセンターがあるので、安定して廃プラスチックを仕入れられています。
資源の受け入れ場所が土木建築に関わる廃棄物運搬業者の輸送ルート上に位置しているので、運搬業者も少ない負担でリサイクル資源を運び込むことができます。建材だけでなく、衣装ケースや洗濯カゴなどの一般的なプラスチック廃棄物も少量から受け入れています。
当社のリサイクルセンター内に集積したプラスチック資源は、色や素材ごとに徹底的に分別しております。地道な作業ですが、その作業が再生ペレットや再生塩ビ管の品質向上につながっています。
私達のリサイクルセンターと工場を経て作られた再生塩ビ管は、品質についてはバージン素材で作られた一級管と呼ばれる塩ビ管と比べると若干劣りますが、排水用途を主として、工業用配管、農業灌漑などでは一級管と同様に使用されています。
リサイクル業界を盛り上げて、再生材を身近にしたい
SDGsの広まりもあって、積極的にリサイクル材を使おうという意識は生まれてきています。REP管の認定を受けている事業者は国内2社ですが、これから業界としても盛り上がれる雰囲気を生み出していきたいと思います。
まずは業界内で成功するリサイクル業者を増やし、「リサイクル事業」そのものが周知されることが必要かもしれません。そのためには、製造コストと販売価格のバランスをもっと良くしていくことが必要です。
例えば、再生塩ビ管は、バージン素材で作られた塩ビ管よりも生産には手間がかかります。毎回少しずつ条件の異なる原料で製造するので、高い品質を維持するために、常に人が管理を行うからです。
地球環境やリサイクルに関心が高まる今、これまで以上にお客様が導入しやすいリサイクル塩ビ管やリサイクル素材を生み出し、かつ私達も事業を継続できるような仕組みが必要だと思います。
そのためには、関連団体やリサイクル関連会社、地方自治体など、様々な組織との連携は、無くてはならないです。リサイクル素材や再生塩ビ管の使用を呼びかけながら、リサイクル事業全体を活性化し、より社会に貢献できればと思います。