2022年04月 No.115 

特集 環境・社会貢献と塩ビ インタビュー 1

水中機器用 フロートケーブル

株式会社三ッ星 技術開発センター

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手間と断線問題を同時に解決。シンプルなフロートケーブル

 2021年PVCアワード準大賞を頂きました「水中機器用フロートケーブル」は、電線の周りを、発泡塩ビの被覆材で覆って作られた、水に浮くケーブル。主として、河川、海中で使用することを想定しております。
 ケーブルが水に浮くことで、水中機器の動作がスムーズになるだけでなく、ケーブルが水中の障害物に接触して生じる劣化や断線を防ぐことができます。さらに、ケーブルの展開、収納もスムーズに行えます。
 株式会社三ッ星は、創業100年を超える歴史の中で、技術開発と海外展開を続けてまいりました。電線メーカーとしての技術とノウハウの高さはもちろん、過酷な水回りの環境で使われる電線の製造も得意としております。現在でも、海洋土木や漁業の分野で、水中機械・水中灯に使用される電線において高い信頼を得ております。

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菱田さん
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北村室長

 水中機器用フロートケーブルの開発は、お客様の声をきっかけにスタートしました。「水中で動作するプールのお掃除ロボットが、沈んだケーブル同士が絡まって動作が妨げられる」というお声を頂いたんです。弊社は、100年のノウハウを持っている電線のメーカーです。その時、すぐに「電線に被覆をつけて浮かせることで解決できる」という発想が生まれました。
 ケーブルを水に浮かせる方法は、これまでも存在していました。ですが、ケーブルにウキを一定間隔で取り付ける方法だったので、「ウキを取り付ける」「使用後はウキを取り外して収納する」という、運用の手間やメンテナンスコストのかかるものでした。
 そんな前例と課題も把握していたので、コンパウンドメーカーと協業して、電線に発泡被覆を付けた、ウキ無しでも水に浮かぶケーブルの開発に取り掛かりました。
 フロートケーブルの被覆材は、はじめはポリエチレン材で試作していました。しかし、被覆の形状が上手く安定しない。そこで試行錯誤を重ね、発泡塩ビにたどり着きました。この素材は、軽く、頑丈で、柔軟性があるので、ケーブルが水に浮くのはもちろん、保護カバーの役割も果たします。また、発泡塩ビは、水や海水による被覆材の加水分解もほとんど無く、環境への影響も心配ありません。 こうして、過酷な現場で使用できる耐久力を持ち、水中作業の効率化を実現する水中機器用フロートケーブルが誕生しました。

在庫のケーブルを活用し、多様な現場のニーズに素早くお応え

 このケーブルは、カラーバリエーションも複数用意しておりますので、お求めの際は、河川、海、泥水の上など、お客様が使用するシチュエーションに応じて視認しやすい色をお選びいただけます。
 また、ご発注いただいた際も、お客様の必要とするタイミングにスピーディーに対応可能。フロートケーブルは、弊社が扱う既存のケーブルに、専用の発泡被覆を施すことで完成します。なので、在庫のあるケーブルであれば素早くお客様のもとにお届けすることができます。
 すでにお客様にもご使用いただいており、水中溶接工事でフロートケーブルを使用された潜水士様からは、作業性が向上したとのお声を頂いております。有難いことに、海洋土木ビジネス分野からのお引き合いも増加しております。
 今回、従業員と協業メーカーの努力と工夫が認められ、PVCアワード準大賞を頂きました。この受賞をきっかけに、水回りに強い製品をつくる電線メーカーである三ッ星という会社が、少しでも世の中で知られていけば幸いです。そして、たくさんの現場で安全性と効率アップのお手伝いをさせていただければと思います。