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半導体工場に欠かせない
タキロンシーアイ㈱のFMプレート
1919年創立という長い歴史を誇るタキロンシーアイグループ。「お客様のために」という想いから研究開発に力を入れ、お客様の声を開発チャンスと捉え、用途に合わせた高機能製品を幅広く世に送り出し続けています。今回は、世界を支える「FMプレート」の特徴や開発ストーリーを中心に、タキロンシーアイ㈱の高機能製品について伺いました。
創意工夫の連続でお客様の信頼を獲得。タキロンシーアイの高機能製品
-様々な機能を持つ御社の「高機能製品」ですが、現在、どのような製品が市場に求められていますか?
塚口:2020年秋口から伸びてきた製品は、半導体製造設備や、フラットパネルディスプレイ工場で使われる「FMプレート」や「制電(帯電防止)プレート」等のPVCプレートです。コロナ禍を経て、働き方や余暇の楽しみ方が変化したことで、パソコンやタブレットの使用人数も使用時間も増えました。半導体、フラットパネルディスプレイの需要が今後も増していくことはほぼ間違いないと考えています。
また、高機能材事業部で堅調な伸びを見せたのは「マイクロモータ」という精密モータです。カメラや電子錠、ロードバイク等の制御に使われるのですが、ヨーロッパではコロナ禍を経たライフスタイルの変化から高級自転車の需要が高まったようで、海外輸出が今も順調に拡大しています。
火災リスクを抱える半導体工場の安全を守る「FMプレート」
-では、「FMプレート」とはどういった製品でしょうか。
岡本:「FMプレート」は、火災への安全性を高めた素材です。着火しにくく、燃え広がりにくい。火がついても発煙量が少ないのが特徴です。塩ビらしく、溶接や接着、曲げなどを組み合わせた複雑な加工も容易で、耐薬品性を有しています。
塚口:「FMプレート」の名前の元である「FM4910規格」は、アメリカの損害保険会社 FM Globalが火災予防のために制定した、クリーンルーム用の材料に適応される難燃性能基準です。「燃えにくい工場をつくるなら、保険料を下げますよ」ということで定められ、今はその基準そのものが「火災に対する安全性の高さ」の証明になりました。
-「FMプレート」が半導体製造装置で使われるのはなぜですか?
塚口:半導体やフラットパネルディスプレイの製造現場の環境が非常に過酷だからです。高温になりやすく、劇薬も使われます。火災が起きやすい条件が揃っていますし、火災が広がると復旧に莫大な費用と時間がかかります。2020年には、日本国内でも半導体関連の工場火災が発生し、現在の半導体不足要因の一つとなっています。
相反する性質を兼ね備える「FMプレート」開発ストーリー
-「FMプレート」の開発にあたり、苦労された点を教えてください。
岡本:開発部門からは、延焼性と発煙性を両方抑えることに苦労したと聞いています。「燃え広がりにくい」と「煙が出にくい」は実は相反する性質なんです。わたしたちは、塩ビの表面だけを燃やして中の延焼を防ごう。表面に炭化層をつくることで、煙(ガス)を出さないようにしよう。という方針を定め、塩ビ製品に特徴を与える「添加剤」の配合について地道な検証を続けました。
添加剤AとBが燃えにくい性質を持っていても、組み合わせると途端に燃えやすくなることもあります。相性まで考え、最適な配合を見つけるのに苦労しました。1999年の発売以来、厳しくなるFM規格に適合するよう、今なお実験を繰り返しています。
2030ビジョンの筆頭として取り組む「社会課題の解決」
-御社の理念「人と地球にやさしい未来を想像する」に基づいた活動についてお聞かせください。
塚口:高機能材事業部としては、製造時のCO2排出量を25%削減できるバイオマスプラスチックのご提案をしています。近年、環境への意識の高まりからお問い合わせも増えていますね。高機能材事業部では、環境対応商品の開発、スキームの考案を目指し、2021年4月から若手を中心に各事業部で調査研究を進めています。
この先は、プラスチックの有用性を活かした高機能製品の開発を進めるとともに、海洋プラスチック問題等の環境課題への対応にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。