2021年11月 No.114 

リサイクルの現場から

年間150万冊の見本帳リサイクルに着手。
環境負荷の低減を足元から目指す ㈱サンゲツ

写真
(写真左から)
ESG推進課長 保田貴博さん
田幡真一朗さん
写真
 

 インテリア商品の企画・開発販売を中心に、さまざまな空間を創造している株式会社サンゲツ。インテリア企業として長い歴史を誇り、壁紙や床材、カーテンといった商品の実物の色や素材を確認できる「見本帳」を重要なビジネスツールとして活用してきました。
 今回は、2021年3月、サンゲツ社内に設立された「sangetsu 見本帳リサイクルセンター」に注目。ESG推進課で見本帳リサイクル事業に取り組む保田貴博さん、田幡真一朗さんに、設立までの経緯や目的、リサイクル現場での気づきについてお話を伺いました。

産廃だった使用済み見本帳のリサイクルを進めたい

-会社として「見本帳」のリサイクルに注力しようと決められた理由を教えてください。
田幡:わたしたちは、2020年に策定した中期経営計画の基本方針の1つである、「社会的価値の実現」を目指しています。地球環境に対する課題への取組みに向けてできることを考えるため、サンゲツが事業を営む中で、さまざまなシチュエーションにおいて発生する環境負荷の状況を把握しました。

-そこで、注目されたのが見本帳だったのですね。
保田:そうです。当社は、約30種類、年間約150万冊もの見本帳を発行しており、だいたい2〜3年で改訂されます。カタログのデジタル化は進めているものの、インテリアは素材の質感も重要です。最後は現品を確認したいというお客様は多く、見本帳の発行冊数はむしろ増えていました。これまで産業廃棄物として捨てられていた見本帳のリサイクル量を増やすことができれば、確実に環境負荷の低減につながります。2021年度はセンターのある愛知県を中心に年間約5万冊のリサイクル、2022年度は13万冊のリサイクルを目標としています。

写真
複数の素材から構成され、リサイクルが難しかった見本帳。

「見本帳リサイクルセンター」での分解作業

-リサイクルセンターでは、どのような作業が行われていますか?
保田:当社の営業員がお客様先から回収した見本帳をセンターに集め、リサイクルの前工程である見本帳の解体と素材の分別を行います。台紙などの紙類や、取っ手・バインダーといったプラスチック類、サンプルチップと多様な素材から構成される見本帳を分解し、リサイクル業者にお渡ししています。

田幡:作業を担うのは、障がいをもつスタッフです。障がい者の雇用を決めたのは、ダイバーシティの推進はもちろん、以前から、地元の障がい者福祉施設に見本帳を提供していたことがきっかけです。見本帳は、施設で行われる自立支援活動の一環で、指先の動きのトレーニングとして活用されていました。台紙からサンプルチップを剥がす作業が人気で、高い集中力を持続して取り組んでいると知り、彼らの持つ個性が生きると考え、わたしたちも、彼らの能力をぜひ借りたいと思いました。
 リサイクルセンターでは、月1度のミーティングで、作業が速いスタッフのやり方をみんなで学んだり、作業ルールについて提案し合ったりします。センターをリサイクルの拠点として成長させるとともに、スタッフの能力開発の場であり続けたいですね。

写真
慣れた手つきでサンプルチップを剥がしていくスタッフの方

センターに蓄積される知見が拓く未来

-半年間、運営を続ける中で得られた気づきはありましたか?
田幡:リサイクルで重要なのは、素材を種類ごとにきちんと分けること。今も、リサイクル業者さんにお渡しする段階になって、分別が不十分だったとか、そもそもリサイクルが難しい素材だったと判明することもあります。
 プラスにとらえると、日々の発見は見本帳を「環境に配慮した設計」に変えていくためのヒントになるのではと思います。センターでの気づきが、見本帳の素材や仕様をサステイナブルなものに変える可能性があります。

写真
パーツや素材ごとに分類し、混ざらないように仕分けている。

-見本帳のリサイクルを通して、どんな未来を実現したいとお考えですか?
保田:まずは、運営のノウハウを蓄積して将来的に複数の拠点にリサイクルセンターを創設し、さらにリサイクルを進めていきたいです。センターの設立により、社員も会社の「環境負荷低減への本気度」を感じてくれています。この先も、見本帳の分解による素材のマテリアルリサイクルを進め、資源循環システムを構築したいです。

写真
営業員の手で種類別に分けられた見本帳。
分類することで作業効率アップにつながる。