2019年7月 No.107 

特集 建材(省エネ) レポート 3

遮熱&健康効果で、高まるオーニングへの評価

画期的、BXテンパル㈱の移動式オーニング。屋外での熱中症予防に期待大

写真:移動式デザインオーニング「パルセイル」
写真:移動式デザインオーニング「パルセイル」

特集の最後は、ちょっと目先を変えて、オーニングの遮熱・省エネ効果に目を向けます。最近は健康効果でも評価の高いオーニング。そうした中、文化シヤッターのグループ企業・BXテンパル㈱(宮本明社長、本社:東京都豊島区)が開発した移動式デザインオーニング「パルセイル」が、屋外での熱中症予防に貢献する製品として期待を集めています。文化シヤッターのライフイン環境防災研究所(栃木県小山市)で、オーニングの最新情報を取材しました。

夏風邪や冷房病の予防にも

 日除けや雨除け、さらには店舗のサインなどとして重宝されるオーニングは、テント生地(ポリエステルの基布に塩ビをコーティングしたもの)を使った膜材のひとつ。その最大の特長は、店内、室内への直射日光を遮ることで夏場の冷房使用を抑え、大きな省エネ効果を発揮することですが、同時に、健康面のプラス効果も見逃すことのできないメリットです。
 「オーニングの日除け効果はブラインドやカーテンの10倍以上。省エネ効果については、大学の研究室に委託した遮熱試験で、エアコンの稼働率が約7割下がることが実証されている。それ以来、遮光・省エネ効果を前面に出してオーニングの販売を進めてきたが、近年は、過度な冷房使用から生じる夏風邪や冷房病などの予防にも有効ということで新たな注目を集めている」(ディーラー営業部の大塚潔専任課長)。省エネとウェルネス効果のダブルメリットという点で、オーニングは先に紹介した高断熱窓とも共通する特長を備えていると言えます。

「動く日陰」そのもの

 BXテンパルのオーニングには、日差しに合わせて自在に角度調整できる人気ナンバーワンの「エルパティオ プラス」、高い強度と耐久性を持つ「スーパーマキシム」など、住宅向け・店舗向けそれぞれで豊富なラインナップが揃っています。その中でも、オーニングの用途が新たなステージに入ったことを感じさせるのが、2016年4月に発売された移動式オーニング「パルセイル」。キャスター付きで移動自在、その場ですぐに設置できるこの製品は、まさしく「動く日陰」そのものです。
 「気温というのは路上でも木陰でも実は大きく変わらない。それなのに、日差しの中から木陰に入ると涼しさを感じるのは体感温度が下がるため。オーニングも同様で、当社の桶川工場で行ったSET指標(アメリカ空調学会が開発した体感温度指標。体感に影響する気温、湿度、風速、輻射熱の4大要素に着衣量と運動量を加味する)による測定結果では、真夏の日中オーニングの下に入ると体感温度が7℃下がることがサーモカメラで確かめられた。2020東京オリンピックも見据えて屋外での熱中症予防が重視される中、街中の暑さ対策として相当な効果が期待できると考えてパルセイルを開発した」(大塚潔専任課長)

図
体感温度マイナス7℃。オーニングの日除け効果

 スチール製のフレームと生地一体型の「パルセイル」は、現場での面倒な組み立て作業も不要で、フレーム自体が上下に伸縮するためコンパクトな収納が可能。サイズは間口3.79m、出幅3.86m(収納時22cm)、高さ2.9m(収納時1.9m)で、重量は約300㎏。「強風で倒れたりしないよう敢えて重くしている」とのことですが、キャスター付きなので大人2人の力で楽に動かすことができます。薄くて強靱な生地は防炎機能付き。白を基調としたデザイン(オプションカラーあり)も洗練された印象です。

写真:スチール製のフレームと生地一体型の「パルセイル」
開閉操作は手動でもリモコン(オプション)でもOK

暑さ対策=移動式オーニングのイメージ定着へ

 遊園地や幼稚園・保育園、住宅・店舗の屋外テラスなど、「パルセイル」の利用は着実な広がりを見せていますが、BXテンパルの大石裕一執行役員・埼玉工場長は今後の展開について「暑さ対策=移動式オーニングというイメージを定着させたい。東京オリンピックはその絶好の機会であり、体感温度指標のデータを使いながら、暑さ対策としての効果、移動できることによる汎用性の高さを積極的にアピールしていく」と説明します。
 また、文化シヤッターの奥正治開発企画部長も「文化シヤッターグループの製品には、オーニング以外にも窓シャッターやシートシャッターなど省エネに貢献できる製品が揃っている。こうした製品の環境効果をしっかりデータ化して、省エネ貢献製品と認識してもらえるように、グループ全体で取り組んでいきたい」と語っています。

写真:取材にご協力いただいた皆さん
取材にご協力いただいた皆さん。
前列左から文化シヤッターの奥開発企画部長、
BXテンパルの大塚課長、BXテンパルの大石埼玉工場長

文化シヤッターグル-プと「ライフイン環境防災研究所」

 文化シヤッター㈱(潮崎敏彦社長、本社:東京都文京区)は、住宅・ビル用建材の総合メーカー。同社は現在、2020年までの中期経営計画に基づき、グループ企業一丸の事業を展開しています。基本テーマは「環境」と「防災」をテーマとしたものづくり。その製品群は、基幹品目であるシャッターやドアから、止水設備、太陽光発電システム、オーニングなど多岐に渡りますが、これら多彩な製品開発の基板を支えるのが、既設の「ライフインセンター」を拡充して2017年7月に新規オープンした「ライフイン環境防災研究所」です。
 同センターは、基礎技術の研究から製品の評価・検証などを行う総合試験施設で、遮音性能などを確認する音響試験室、断熱性能や結露防止性能の測定などを行う環境・断熱試験装置、直接地震動を作用させる耐震試験装置、自動でゲリラ豪雨を想定した注水や排水ができる止水試験場など、7種類の最新設備を駆使して日々徹底した製品試験に取り組んでいます。また、防火や耐風圧などの性能試験を行う試験ゾーンや、製品の操作性や安全性などを実際に触れることができる「体感ゾーン」も一見の価値あり。ISO17025(試験所認定)取得。

ライフイン環境防災研究所
ライフイン環境防災研究所の全景
 
写真
耐震試験装置は業界初の最新設備
 
止めピタ
話題の塩ビ製止水シート
「止めピタ」の試験も