特集 リサイクル技術と塩ビ レポート1
100年の歩みを経て、次の100年へ。
地球の未来を見据えた窓づくり/株式会社LIXIL
窓にも塩ビが使われているのをご存じでしょうか?寒い地域に住む方には、おなじみかもしれません。断熱性能に優れ、光熱費削減に貢献している塩ビの窓ですが、メリットはそれだけではありません。今回は、樹脂の窓を手掛ける㈱LIXILに環境性能の高い樹脂窓とそのリサイクルの取り組みについて、LIXIL HOUSING TECHNOLOGY サッシ・ドア事業部 樹脂窓SBU企画グループGL 池田洋介氏、樹脂窓商品開発室 開発G GL 廣瀬城太郎氏、サッシ・ドア商品戦略部 プロモーション企画G GL 柳通一晴氏に話を伺いました。
株式会社LIXIL
株式会社LIXILは、2011年に国内の主要な建材・設備機器メーカーである、TOSTEM、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が企業統合して誕生。豊かで快適な住環境を実現するために、トイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。2023年には窓事業が創業100周年を迎え、地球環境に配慮した取り組みをこれまで以上に推進しながら、次の100年を歩み始めています。
豊かで快適な住まいをつくる企業
㈱LIXILは、トイレ・キッチン・バスルームなどを手掛ける「ウォーターテクノロジー事業」、窓・玄関ドア・エクステリア製品などを手掛ける「ハウジングテクノロジー事業」を軸に展開。世界中の人びとの豊かで快適な住まいの実現を目指しています。メイン商材は窓。窓は家の躯体に取り付ける「枠」と「ガラス」、ガラス戸のフレームとなる「框(かまち)」のセットで構成されます。
「㈱LIXILでは、2021年から2022年にかけて、窓の基幹シリーズを刷新しました。アルミ製・樹脂製・アルミと樹脂のハイブリッド製等の窓を作り、それぞれの性能や採光性、機能性などの特徴を活かしながら商品展開しています」(池田氏)
断熱性・デザイン・環境性能が特徴の「樹脂窓 EWシリーズ」
中でも注目の商品は、塩ビ樹脂製窓の「EWシリーズ」。断熱性とデザイン性が大きな特徴です。アルミに比べ熱伝導性が低い塩ビで作られているだけでなく、窓枠・框内部の空間を細かく分ける「多層ホロー構造」により、熱の伝わりを抑制。冬場の屋内外の熱の出入りの約6割は開口部を介しています。そのため、熱の出入り口の断熱性能を高めるEWシリーズの窓は、住宅の省エネに貢献します。
一般的な樹脂窓の内側の色は単色が主流ですが、EWシリーズでは塩ビ製の木目調デザインシートを窓枠・框の内側に張り付けたEW for Designも展開しています。本物の木の質感を追求し、木目の複雑な表情や色変化まで再現したシートを採用しました。住まい手のデザインのこだわりに合わせた住環境の演出に一役買っています。
環境配慮設計もEWシリーズの大きな特徴で、生産する際のリサイクル材の使用に加え、窓廃棄時の分離回収を容易にする両面において資源循環に貢献する製品です。EWシリーズが「PVC Award 2023」に出展された際、審査の過程でそのサステナビリティ性能は大きな注目を集めました。
「生産工程で発生する樹脂の「端材」を再利用し、引違い窓(S仕様)の樹脂フレームのリサイクル材使用率を従来品に比べ約3倍に拡大しています。また、素材の選定を設計段階からリサイクル性を考慮して織り込みました。窓の樹脂フレームと意匠シートはリサイクル出来るように共に塩ビですが、網戸に使われる意匠シートはオレフィンとリサイクルを考えてシートの使い分けをしています」(廣瀬氏)
㈱LIXILが取り組む樹脂窓リサイクル
環境配慮の取り組みは、EWシリーズに留まらず全社を挙げて行われています。樹脂窓に関する取り組みは以下の通りです。
- 1 リサイクル拠点の集約
北海道工場にリサイクル関連施設を整備し、国内の工場で発生した樹脂窓の端材を集約的にリサイクル。 - 2 複合材の端材リサイクル
多くの塩ビ窓は外面にアクリル層を共押出しし、耐候性を付与しています。㈱LIXILでは、アクリル層がある部分と無い部分とに端材を切断分離しています。そのため、アクリル層の無い部分をバージン材としてリサイクルできるようになりました。
また、アクリルと塩ビが混ざったリサイクル材でも強度に問題が無いため、窓の一部として使用できます。
他にも、樹脂窓が廃棄され回収される事も見据えて、ガラスをスムーズに取り外せる「押縁構造」も採用しています。将来の効率的な分別回収の実現が期待できます。
未来をつくる樹脂窓を目指す
快適な住生活の実現はもちろん、リサイクルにも力を入れている㈱LIXIL。「業界内でも1歩先に行っている自負がある」と力強く語ります。
暮らしの中で排出される「オペレーショナルカーボン」や建築資材の製造、輸送の中で排出される「エンボディドカーボン」といった温室効果ガスの削減や可視化は、これから実現を目指す重要な取り組みの一つ。
「メーカーとしては生産・材料調達・廃棄などで発生する温室効果ガスをトータルで削減するのが責務だと思っています。その成果を可視化し、評価できるようにしていきたいです」(柳通氏)
同社では環境性・快適性・省エネ性をトータルで評価した窓を「GREEN WINDOW」として展開しています。生活する地域特性や人々の好みに合わせながら、環境にも配慮し、100年先の未来につなぐための窓作りに取り組んでいます。さらに、2019年に設立された「樹脂窓リサイクル検討委員会」に参画し、廃窓から再び窓を作る「窓 to 窓」の実現に向けた研究にも、精力的に取り組んでいます。
「あるカンファレンスで『今の地球環境は、先人から受け継いだものではなく、未来の子どもたちから借りたもの』という言葉を聞き、感銘を受けました。自分たちの行動1つで、未来の環境が変わるはず。そんな高い意志を抱きながら、これからも窓作りに取り組んでいきたいです」(柳通氏)