2023年3月 No.118 

特集 医療福祉と塩ビ レポート3

利用者の気持ちに寄り添った義肢づくり

 株式会社佐藤技研では、事故や病気で欠損してしまった身体の一部を補う義手・義足を製作。義肢装具士や熟練した技術者が利用者の患部や使用目的に合わせた最適な義肢を提供しています。今回は㈱佐藤技研 義肢装具士 佐藤泰斗氏に、塩ビ素材で作られている義手の数々を紹介していただきながら、製品づくりへの思いを伺いました。

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左から高田正樹氏、佐藤泰斗氏

株式会社佐藤技研

 1951年創業。手指、手部、足趾、足部などの部分的な欠損に対応する義肢から、広範囲を補う義手・義足に至るまで、健在な部分と遜色ない審美性の優れた装飾義肢を提供。強度や防水性を高めた製品、把持機能を持たせた製品など、審美性と機能面を兼ね揃えた製品を展開している。

長年の伝統で培われた審美性の高い義手

 佐藤技研では、オーダーメイドの装飾用義手・義足を手作業で製作。現在の年間製作数は約6,000件で、装飾用義手メーカーとして国内でトップシェアを占めています。
 「1940年代、もともと人形浄瑠璃の人形職人だった初代が、戦争で傷ついた人に向けて木製義手を作り始めことが佐藤技研の始まりです。当時の義手は、関節部分に鯨のヒゲ、爪の部分に孔雀の羽の根元が用いられた工芸品のような装い。戦後間もなく、米国から塩ビ製の義手が持ち込まれたことで、日本でも義手に塩ビ素材を使用するようになりました」(佐藤氏)

ロゴ:おくすりシート リサイクルプログラム
1945-55年頃、佐藤技研の創業者が製作していた木製義手

快適な義手で、社会生活で活躍する助けになれたら

 義手には、ものを押さえたり、握ったり、摘んだりといった機能性も要求されます。利用者が義手に求める性能は生活スタイルによって千差万別だそう。
 佐藤技研では100種類近い豊富な商品ラインナップの中から、義手が使われる場面や環境を判断して最適な義手を提案。義手には利用者の精神的な負担を和らげる効果もあるため、利用者へのヒアリングは欠かせないと言います。
 「利用者の年齢、性別、利用目的、各部位のサイズ、シワ感、肌の色などの情報に、患部の痛みや欠損部の状態、筋力、関節可動域などの要素を加味し、しっかりとフィットするように義手を調整。お使いいただく情景を思い浮かべながら丁寧に製作しています。
 製作工程では義手の美観や質感の追求だけでなく、利用者の健在な部分を動かしやすくする工夫も検討。つけていることも忘れるぐらい快適で自然な製品を目指しています。
 製品づくりにおける心配りが利用者に届き、利用者から喜びの声が聞けたときは何よりも嬉しいですし、製品改良を続けていく上での糧になっています」(佐藤氏)

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欠損した部分を補う塩ビ製義手

塩ビ素材の特徴を生かした丈夫で機能的な義手製作

 佐藤技研で扱うのは塩ビ製義手とシリコーン製義手。塩ビ製はシリコーン製に比べて丈夫で加工が容易。価格も安く短期間で提供可能なので、半数以上の利用者が塩ビ製義手を求めるそうです。
 「塩ビは強度・耐久性が高く、加工性・成型性が良いという特徴があるため、義手の素材として非常に優秀ですね。また、難燃性・耐薬品性に優れ、適度な摩擦力があるのも利点です」(佐藤氏)

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ものを掴みやすい機能を付加した義手。
内部には独自開発されたインナー構造を使用

必要としている方に高品質・高機能な義手を届けたい

 佐藤氏は塩ビ製義手の短所として、可塑剤の影響で汚れが義手の内側に染み込んでしまう性質があり、インクなどの汚れが落ちにくい点を挙げました。
 現在は有効な成分を混錬する形で、汚れを防止する方法を検討中。利用者が日常生活を送る上で、さらなる快適さを目指しています。
 「佐藤技研では、顕在化していない利用者の皆さんの想いにも応えるため、通常の装飾義手に加えて様々な製品を開発し続けています。
 一例を挙げると、装着口に面ファスナーを使用した義手や、強度を高めゴルフクラブを握りやすくした義手、スパイラル形状にしてフィット感を高めた義手、キーボードを打ちやすくした義手、防水性を高めた義手など。
 当社の精練された技術を使った高品質・高機能な義手を知っていただき、義手を必要としているより多くの方々に製品を届けていきたいです」(佐藤氏)

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面ファスナーで着脱しやすい義手()、
キーボードを打ちやすくした義手()、
ゴルフクラブを握りやすくした義手()、
スパイラル形状の義手(