特集 医療福祉と塩ビ レポート2
テラサイクルジャパン
日本初のおくすりシートのリサイクル
テラサイクルジャパン合同会社が掲げる「捨てるという概念を捨てよう(Eliminating the Idea of Waste®)」という企業メッセージには、循環型社会の実現のため、あらゆる分野で再利用、再資源化するアイデアを考えていくという意味が込められています。今回はおくすりシート(PTPシート)のリサイクルについて、テラサイクルジャパン合同会社代表 エリック・カワバタ氏にお話を伺いました。
テラサイクルジャパン合同会社
2003年、米国ニュージャージー州で創始され、世界21か国で展開するテラサイクルの日本拠点。従来リサイクルされてこなかったものを回収・リサイクルする方法を開発するソーシャルエンタープライズ。日本国内では、山口県で海洋プラスチックごみを回収し、買い物かごを製作する「ONE FOR OCEAN」プロジェクトや、シャンプーボトルなどの日用品の使用済み空き容器をドラッグストアの店頭で回収する「JACDSサーキュラーエコノミープロジェクト」等の取り組みを実施しています。
廃棄されてきた「おくすりシート」のリサイクル可能性が芽吹く
「おくすりシート リサイクルプログラム」は第一三共ヘルスケア株式会社が主催し、テラサイクルジャパン合同会社の協力のもと、使用済みのおくすりシートを回収・リサイクルする取り組み(現在は横浜市にて実証試験中、期間:2022年10月20日~2023年9月30日)。使用済みPTPシートを回収拠点に持ち込むだけで、誰でも参加可能です(回収拠点は横浜市内40箇所:2023年2月現在)。
日本国内では年間13,000トンものPTPシートが生産され、現在は多くの使用済みPTPシートが廃棄処分されています。
「PTPシートはアルミとプラスチックが主原料です。プラスチック部分はPPまたは塩ビでできており、塩ビの方が割合が多いと思います。PTPシートは組成はシンプルですが、リサイクルは難しいだろうと考えていました。しかし、2つのマテリアルを抽出することができれば、リサイクルは可能だと考えました」(カワバタ氏)
米国発のテラサイクル社が日本で事業展開を始めたのは、2014年。
カワバタ氏は創業当初から、大量に廃棄されるおくすりシートの存在がずっと気になっていたと言います。
「アメリカでは、薬の多くは瓶で処方されるもの。日本では医者から処方される薬はシートのみで、たくさん使い捨てられていることに大変驚きましたね。それから約9年間おくすりシートのリサイクルプログラムにご賛同いただける企業を探してきました。そして、製薬会社らしいリサイクルプログラムをちょうど検討されていた第一三共ヘルスケアさんと出会い、実施に至りました」(カワバタ氏)
マテリアルリサイクルにこだわり、循環型社会を目指す
日本では廃棄プラスチックの63%が、焼却処分時の熱を利用するサーマルリサイクル(熱回収処理)されています。
その現状をふまえ、テラサイクルジャパンは廃棄物を原料として再生させるマテリアルリサイクルの提案にこだわって取り組んでいます。
「回収活動を通して消費者の環境保護の意識をより高めることができると信じています。そういった社会的な意義に賛同していただいた企業と連携の輪を広げながら、リサイクルプログラムを推進しています」(カワバタ氏)
誰でも参加できる「おくすりシートリサイクルプログラム」
「おくすりシート リサイクルプログラム」では、薬の購入場所や製品ブランドに関係なく、すべてのシートが回収対象です。
「おくすりシート くるりんBOX」に投入するとシートの枚数に応じてポイントが付与され、自動的にチャリティーに寄付されます。
現在回収拠点が設置されているのは横浜市内のみですが、将来的には日本全国での展開を目指しています。
「回収したおくすりシートはプラスチックとアルミニウムに分けて再資源化されます。再生塩ビでは色々なものを作れるので、製作の発想もふくらみますね」(カワバタ氏)
リサイクルを継続し、健やかな未来を作るために
社会で解決すべき課題として廃棄物問題を周知するため、テラサイクルジャパンは様々な活動を通じて情報発信を続けています。また今後は教育分野にも活動を広めていきたいそうです。
「捨てようとしているものは本当に『ごみ』なのか、それとも資源なのか、一度立ち止まって考えてみましょう。身の回りのあらゆるものは『ごみ』ではなく、愛着のある大切なモノだったはずです。
テラサイクルではなるべく多くリサイクルできるような仕組みを提案し、消費者と共に環境問題に取り組んでいきたいです」(カワバタ氏)