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トイレを少しだけ便利にして、お出かけのハードルを下げる 「多目的シートYU2 TS-YU2」
バリアフリー化された公共空間や設備を目にすることは多くなったのではないでしょうか。障がいを持つ人や高齢者、乳幼児を連れた親などへの配慮が少しずつ進むなか、株式会社水上 オモイオ事業部が開発した折り畳み式の収納シート「多目的シートYU2 TS-YU2」もバリアフリー化に貢献する製品の一つ。今回はその製品の特長と開発の背景について株式会社水上 オモイオ事業部 課長 松井氏に伺いました。
多目的シートYU2 横型 設置事例。
株式会社水上 オモイオ事業部
建築金物の総合商社「株式会社水上」の施設用育児用品ブランド部門。自社製品「多目的シートYU2 TS-YU2」は、PVC Award 2021、2021年度グッドデザイン賞、キッズデザイン賞2021を受賞。「施設への育児環境整備のサポート」「お子さま連れのご家族に快適な育児環境をご提供」「施工をされる現場の方にも扱いやすい製品づくり」を使命に事業展開を続けています。
ユーザーと向き合い作られる製品
株式会社水上 オモイオ事業部(以下、オモイオ)は、施設用育児用品を展開していた株式会社アビーロード(以下、アビーロード)の事業譲渡をきっかけに立ち上がりました。
かつてアビーロードでは多彩な施設用育児用品を世に出しており、それらはどれも社会に必要とされるものばかり。さらに、事業譲渡の際、商品製造に必要な金型や知的財産の全てを引き継いだこともあり、継続して多目的シートやおむつ交換台などの企画開発を進めてきました。
PVC Award 2021をはじめ複数の賞を受賞した「多目的シートYU2 TS-YU2」(以下、多目的シートYU2)は、アビーロードが開発した製品のリニューアル版として生み出されました。
多目的シートYU2は、トイレなどの壁沿いに設置して使用する開閉型のシート。安定した座面は障がいを持つ人の着座や高齢者の介助、子供のおむつ交換や着替えなど、いろいろな目的で使用できます。さらに、従来製品よりもコンパクトになり、使い勝手も向上しています。
この製品作りでも、オモイオのフットワークと使い手を大切にする姿勢が反映されました。
「オモイオは中小企業ならではの小回りの良さを活かし、利用されるお客様の声をいただきながら開発に取り組んでいます。納品や修理も私たち自身で行うことが多く、そのときはリアルなご要望を伺うチャンス。母体である株式会社水上が培ってきた、建築金物のお取引先との関係性もご要望を製品に反映するうえで欠かせないもの。施設用育児用品を専門に扱う私たちだからこそ、細部まで行き届いた製品の開発が可能です」(オモイオ事業部 課長 松井氏)
よりコンパクトになった「やわらかたい」デザインの製品
オモイオが事業を引き継いで以降、施設用育児用品のデザインコンセプトに掲げているのが、「“やわらかたい”カタチ」。主材料の樹脂の持つしなやかさと剛性を活かした商品を目指すという意味が込められています。
多目的シートYU2にもそのコンセプトが反映され、リニューアル前の製品の特長を活かしながらも建築金物を扱うメーカーとして、ネジ一本に至るまで丁寧に部品の見直しを行いました。
また、今回のリニューアルでは本体素材をFRP(繊維強化プラスチック)から高衝撃塩ビ板に変更されました。
「多目的シートYU2の本体部分に使用されている高衝撃塩ビ板という素材は、新幹線のテーブルや電車の座席の側面板に使われています。この素材は軽量で、壊れても割れ口が鋭く尖らない性質。安全性と耐久性にも優れているので、たくさんの人の手に触れる多目的シートにとっては最適な材料ですね。また、シート部分には塩ビ製レザーを使用。抗菌加工を施しているうえに、次亜塩素酸での消毒で劣化しにくいので、清潔を保ちやすいシートです」
従来はシートの外側にあった開閉用のガススプリングが、シート内部に収納されたのも大きな改良点。何度も試行錯誤しながら完成にたどり着いたそう。
「力が弱い方でも快適かつ安全に利用してもらうために、ベッドの開閉部の力加減にはこだわっています。ガススプリングを本体内部に収納したことで、多目的シート自体の設置幅を削減することにつながりました。コンパクト化したおかげで、狭い空間でも多目的トイレの設置ハードルが低くなります。また、今回は新たに手すりを装備したので、おむつ交換時の転落防止や、車椅子を利用している人の移動がしやすくなっています。指を挟んだり、衣服が引っかかったりしないよう、細部まで安全設計を徹底しています」
業界一丸となって暮らしやすい社会づくりに貢献
多目的シートは子育て支援などの社会福祉の観点から、今後さらに提供範囲の拡充が期待されます。男性の育児参加が話題にのぼる一方で男性トイレにはいまだにベビーチェアやおむつ交換台の設置数が少ないという課題も解決していきたいそうです。
施設用育児用品を扱う企業は、国内では決して多くないとのこと。だからこそ、業界一丸となり、社会に対して役目を果たしていきたいと松井氏は今後のビジョンを語ります。
「多目的シートYU2のほか、お年寄りや障がいのある方、乳幼児を連れた親などを支える器具が設置されるべき場所は、まだまだたくさん残っていると思っています。だからこそ、皆様の生活を支える商品を世に出し続ける必要があります。さらに、狭い業界だからこそ、他社との連携も必要ですね。業界全体で、よりお客様のご要望にお応えした製品作りを続け、さまざまな人が暮らしやすい社会づくりに貢献していきたいです」