特集 持続可能性と塩ビ レポート2
協業で生まれた新製品。
和紙のようなバイオマスシュリンクフィルム
2014年に創業し、少量多品種生産・技術・スピード・環境に配慮した製造体制でニーズに応え続けてきたサンプラスチック株式会社。環境への意識が高まる中、株式会社コバヤシ(以下、コバヤシ)と協力し、和紙のような質感が魅力の「和shu」を開発。今回は、大江正孝社長に、自社の強みと和shu開発エピソードについて伺いました。
▲︎和shu例
サンプラスチック株式会社
シュリンクフィルムを中心に、帯電防止・導電・防錆などの高機能フィルムを製造。年間6,000案件以上、1,000社以上の顧客と取引を行い、シュリンクフィルムは国内50%以上のトップシェアを誇る。共同開発したバイオマスシュリンクフィルム「和shu(わしゅ)」は、PVC Award 2019の入賞商品。
トップシェアの裏にある3つの強み
当社のシュリンクフィルム事業は、国内50%以上のトップシェアを占めております。その強みの裏にあるのは、「少量多品種生産」「お問い合わせへのスピード感」「高い技術力」。
私たちが作るシュリンクフィルムは、国内外の食品・医療・化粧品・雑貨・電子・電気・半導体など、多種多様な分野で使用されています。様々な形状の商品に対応できるよう、使用する金型は約20種類。数量も、500枚の小部数から発注可能です。
お問い合わせへのスピードは、メール中心の受発注で実現。オーダーから約3週間の短納期です。当社のWebサイトには、お客様のためのお問い合わせガイドラインが記載されております。提案、見積り、サンプル確認など、スムーズにコミュニケーションをとりながらフィルム製造から加工までできるよう、配慮をいたしております。
技術力も高く、当社の製造技術者は、業界20年以上の熟練者ばかり。長年の経験と指先の感覚を研ぎ澄まし、自動化できない微妙な調整を施しながら、品質の高いシュリンクフィルムを生産し続けています。
こうした力があるからこそ、私たちの事業は評価され多くのシェアをいただいております。
質感を楽しむバイオマスシュリンクフィルム
和shuは、トウモロコシのデンプン10%が配合された、バイオマス複合フィルム。植物由来の原料を添加しているので、製造時の二酸化炭素排出量を従来製品より減らすことができます。バイオマスマークを取得しています。
シュリンクフィルムの商品保護機能を有しながらも、和紙のような独特の質感を楽しめるのが特徴。環境へ配慮した製品ですが、まずはこの質感を活かしてご利用いただければ幸いです。例えば、日本酒のビンやパッケージなどに使えば、和の雰囲気がより引き立ちます。まずは実際に触って、和shuの特徴を体感していただきたいですね。
この製品の開発は、容器包装や樹脂製品メーカーのコバヤシ様からのご相談がきっかけ。コバヤシ様が開発したでんぷんを汎用樹脂に配合したバイオマス素材「ReseamST®」を使ってシュリンクフィルムを作れないか、とお誘いをいただいたことから始まりました。
以前より環境への関心がありましたし、当社としても「今までにないことにチャレンジしたい」という想いから、開発に参加しました。
開発初期は、製品の成形が上手くいかず苦戦していました。デンプンは水分を吸収しやすく、成形前フィルム材のなかに吸水で生じた固まりとして残りやすい。すると、シュリンクフィルムとして成形する際に、ピンホールという穴が開いてしまうんです。
この問題を解決するため、コバヤシ様と何度もフィルム原料の配合を試行錯誤しました。その結果、デンプンの粒子、添加剤、そしてプラスチックが均一に混ざるような配分バランスを発見。さらに専用の成形機械を導入し、より安定して和shuを製造できる体制にしました。
実質的な環境配慮を行いながら、質の高い製品を提供
バイオマス活用のほかにも、環境に配慮した製品作りを行っています。
製造においては、創業当時から、改正RoHS指令で対象となった物質を含まない、フタル酸フリーの塩ビを使用しております。フタル酸フリーのシュリンクフィルムは、環境への意識が高まる中、お客様から求められてきた材料。お客様の声にお応えするのも、メーカーの役割ですね。
また、社内から出る塩ビの廃材は、その100パーセントをリサイクル資源として自社内で活用しています。さらに、書籍用シュリンクフィルムに関しては、製造する製品すべてに自社で出た塩ビの廃材を使用。
SDGs達成に向けた重点的な取り組みとしても、「生産工程で発生する原料ロスの社内マテリアルリサイクル化」を掲げており、今後取り組むべき大きな目標であると認識しています。
プラスチックメーカーだからこそ、今後もリサイクルやバイオマスの活用、環境に配慮した材料の使用を通じて、環境負荷の低減に貢献していきたいと思います。
企業としての環境意識を持つことが当たり前になっている昨今。より実質的な環境への取り組みを継続させながら、当社の製品を必要とするすべてのお客様に向けて、品質の高い製品をお届けします。