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雨水を貯めて活用する「ユニバーサル水貯留システム」で
世界の水問題 解決に挑む 株式会社トーテツ
大正8年(1919)創業という長い歴史を誇る株式会社トーテツ。30年ほど前から、水不足や都市型洪水に代表される水問題を解決するため、「雨水利用を目的とした製品開発」に取り組んできました。
今回は、雨水利用の重要性、そして塩ビ管を使ったオリジナルの雨水貯留材「アクアパレス」を活用する「UN(ユニバーサル)水貯留システム」についてお話を伺いました。
「水の地産地消」ができる雨水貯留は、新しい社会インフラに
-雨水を貯めて活用できると、市民の暮らしにどのようなメリットがあるでしょうか。
雨水を利用できると、地域ごとに生活用水が確保できるようになります。
全国に張り巡らされた水道管の老朽化は深刻です。自治体によっては水道代を上げて補修にあてていますが、値上げも限度があります。そんなとき、地域ごとに貯めておいた雨水を活用できたら安心です。山奥のダムから水を引く必要がないので、インフラの管理コストは間違いなく低減できます。
それ以外にも、災害時や非常時の備えになる、都市型洪水を防止できるといったメリットがあります。
「誰でも、いつでも安全な水を使えるように」雨水貯留材「アクアパレス」開発に込められた想い
-トーテツが開発された雨水貯留材「アクアパレス」には、どんな特徴がありますか?
まず、人が内部に入り込んでメンテナンスできることです。地下貯留槽は、車の衝撃や地震での揺れ、地下水の変動などに影響を受けるため、人が定期的に点検し、整備していくことが必要だと考えています。「インフラは、数十年単位で安全に使えるものでなければならない。貯留槽を使い捨てにしたくない」という想いで開発に取り組みました。
もうひとつの特徴は、経済合理性がある貯留槽であること。「アクアパレス」を駐車場の下に設置するなら、車の重量に耐えられる性能が必要です。しかし、空き地の下ならそこまでの耐圧性能は必要ない。設置条件に合わせて構造を変えられるので、コストパフォーマンスの高い雨水利用ができます。水は、誰でも安全に使えるものであってほしいので、経済合理性にはこだわりました。
-「アクアパレス」の主SPパイプ(白色部分)はPVC製です。塩ビ管に着目された理由についてご教示ください。
PVC管は丈夫ですし、紫外線の影響を受けなければほぼ劣化しないという特徴が魅力でした。水道管にも使われているので、安全性も問題ない。安全性を担保した上でリサイクル品も利活用しているので、環境にも配慮した貯水槽ができます。
「UN水貯留システム」で、世界の水問題を解決したい
-「アクアパレス」と現場打ちのコンクリート枠を組み合わせた「UN水貯留システム」は、海外での施工事例があるそうですね。
2017年に、インドのチェンナイ市で「UN水貯留槽」を完成させました。地下に建設された貯留槽の上部は駐車場になり、貯まった雨水はトイレ用水や飲料水等に利用されています。コンクリート枠で壁面の美観が保たれるので、地下だけでなく半地下、地上にも設置できます。
海外の水問題の多くは水不足に起因します。生活用水が足りない、山火事を消せない、非常時の備えがない……そういった課題を解決できる「UN水貯留システム」は、世界中で必要とされると信じています。大手メーカーと協力し合い、雨水利用システムの世界標準にしたいですね。
「水・グリーンインフラ研究所」でUN水貯留システムの実証実験を
-最後に、今後取り組みたいことについて教えてください。
2021年の夏、神奈川県相模原市に「水・グリーンインフラ研究所」を建設します。「UN水貯留システム」の可能性を感じていただくため、1,000m³の貯水槽を設置する予定です(イラスト上)。
ゆくゆくは再生可能エネルギーを導入し、水や電気といったインフラに恵まれない地域でも農業に取り組めることを証明したいと考えています。また、貯水槽を中心とした「コミューン(生活共同体)」が、災害時の避難所や、日常の憩いの場としても有効だと実証していきたいです。