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㈱サンゲツの黒板壁紙『Blackboard』
自由に描いてカンタン拭き取り。こどもの感性アップを促す、驚きの壁紙
壁に落書きして母親に叱られた、なんて思い出を持っている人も少なくないはず。でも、この壁はいいんです。落書きしても。インテリア最大手㈱サンゲツ(安田正介社長、本社愛知県名古屋市)の「Blackboard」は、チョークで自由に描き消しできる黒板壁紙。こどもたちの自由な想像力を育み、家族や職場のコミュニケーションアップにも役立つ、アイデアいっぱいの壁紙です。
斬新でインパクの大きい製品
「2017年度グッドデザイン賞」「第11回キッズデザイン賞」の受賞、そして「PVC Award 2019」での入賞と、2016 年の発売直後から数々の栄誉に輝いた「Blackboard」。それだけ斬新でインパクトの大きい製品だったことを物語る出来事と言えます。
「Blackboard」は、同社の「フィルム汚れ防止壁紙」(塩ビ壁紙の表面にバリア性の高いエバールフィルムをラミネートしたもの。抗菌性があり、汚れが拭き取りやすく傷つきにくいなどの特長を備えている)のバリエーションとして誕生した製品ですが、もちろん単なる二番煎には非ず。黒板壁紙としての性能を完成させるまでには、並々ならぬ苦労もあった様子です。
描きやすさの秘密は、エンボス(凹凸)加工
開発の経緯について、壁装事業部商品開発課の小椋淑恵さんが説明します。「今までにない面白い壁紙を作ってみよう、というのがそもそもの発想でした。ちょうどその頃、建築設計事務所のサポーズデザインオフィスさんと一緒に仕事をすることになったので、相談してみたところ、鏡みたいにツルツルした壁紙とかフワフワした壁紙とか、たくさんアイデアを頂いた中に、黒板みたいに描き消しできる壁紙というアイデアがあったのです」
製品化に向けた企画検討は、両社のコラボという形で2015年にスタート。ほぼ1年掛かりで完成にこぎ着けましたが、最も苦心したのが表面のエンボス(凹凸)加工の規格だったといいます。
「エンボスが深すぎるとチョークの粉が入り込んで取れなくなるし、線が引きづらい。逆に浅すぎると、表面のフィルムの圧着が弱くなって剥がれやすくなってしまいます。描き心地がよくて剥がれない、丁度いいエンボスの作り方を見付けるまで、チョークアーティストの方に協力して頂いたりして、何度も何度もテストを繰り返しました」
これからも壁紙の可能性拡大に挑戦
壁装事業部商品開発課の坂戸雅彦課長は、「インテリア商材として見た目も大事なので、マット仕上げで光沢を抑え、カラーリングも8種類用意している。お客様からは大変好評で、ご家庭はもちろん、各種の商業施設、幼稚園、保育園、さらにはイベントなど、様々なシーンで様々な使われ方をしているが、色が美しいので壁紙自体としての魅力も高く、色そのものを楽しむ人も多い」と言います。
改めて「Blackboard」の特長を整理しておくと、❶汚れ防止・抗菌や表面強化などの機能がついているため手入れがカンタン、❷独自のエンボス加工で描きやすく、消しやすい、❸描き消ししても傷みにくい耐久性、❹豊富なカラーリング、などが主なポイント。
今年発表された同社の中期経営計画(前頁の囲み参照)では、インテリア部門について「デザイン力の発展的強化」を具体策のひとつに掲げており、小椋さんは「壁紙においても『Blackboard』のような新しい製品を増やしていきたい。使い方も含めた提案の中で、何かできることがあれば積極的に挑戦して、壁紙の可能性を広げていきたい」(小椋さん)と意欲を示しています。
坂戸課長も、「現在のコロナ禍で在宅時間が増え、家にいる時間をいかに豊かなものにしていくかが課題になっている。これはインテリアとも関わることで、そういう所で役に立てる製品開発を検討していきたい」としており、これからもあっと驚くサンゲツのアイデア壁紙が出てきそうです。
株式会社サンゲツ
名古屋市に本社を置く、インテリア業界の最大手。1849年(嘉永2年)、表具店「山月堂」創業に始まる長い歴史がある(現社名への変更は1970年)。
自社で商品の企画・デザイン・開発を行い、製造をメーカーに委託する「ファブレス経営」により、カーテン、壁紙、床材など12,000点を超える多彩な製品をラインナップ。壁紙については1956年から開発・販売をスタートしており、インテリア部門のほぼ5割を占める。2020年、Sangetsu Group長期ビジョン【DESIGN 2030】及び中期経営計画【D.C.2022】を発表し、“モノ”を売る会社から、空間を創造し“コト”を提案・実現する会社への転換を目指し、挑戦を続けている。