インフォメーション 2
大比良工業㈱が生み出す、華麗なる「加飾」の世界
辞書や手帳の表紙など、多彩な技術で塩ビフィルムを美しく装飾
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箔押、空押、D-Embossなど、多彩な溶着技術を駆使して、塩ビフィルムの表面に美しい装飾を施す。これが、大比良工業㈱(大比良明彦社長/本社:東京都豊島区)が誇る「加飾」の世界。辞書や単行本、手帳などの表紙をはじめ、ブックカバー、バインダーなど、同社の加飾製品はまさに多種多様。試しに探してみれば、あなたの家にも必ず一冊は同社の製品が見つかるはず。
創業70周年の足取り
大比良工業の創業は1949年(法人化は1957年)。塩ビ用の高周波ミシンや溶着機のメーカーとしてスタートした後、程なく自社の溶着技術を生かして加工分野に進出して、農業用ビニルや機械用間仕切りなどの製造を行っていましたが、1970年代に入ると当時の出版ブームを背景に、ブックカバーの製造から辞書・文学書などの加飾(装幀)へと仕事の幅を拡大。「加飾の大比良」の基礎が形作られました。
同社が「加飾」という新たな領域に対応できた理由について、大比良社長は「当社の創業者である先々代(大比良社長の祖父)が考案した『溶断』という技術のお陰だった」といいます。
溶断とは、布や紙などをラミネートしたり裏張りしたような塩ビフィルムを型抜きする方法のことで、熱で樹脂を溶かしながら布や紙を切断して型抜きします。
「この技術により、クロース仕上げの辞書の表紙など、高周波ウェルダーが効かず鋏で切るしかなかった異種材料付きのフィルムでも、楽に加工できるようになった。その後、機械の発達とともに当社の技術も発達し、様々な加飾表現ができるようになっていった」
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
複雑な色を表現するD-Emboss
現在、同社の生産品目の内訳は、手帳や上製本などの表紙が半分。残りの半分がバインダーやブックカバー、ファイル、凾物(立体物)、ファンシー雑貨などとなっています。
ここで、同社が誇る多彩な加飾技術の中から、主なものを見ていくこととします。

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

箔押 素材に箔を施す表面加工法。文字や図形以外にも写真の表現も可能で、出版物や文具、ファンシーグッズなどに幅広く活用されている。
高周波空押 素材に型押ししてエンボスを施す表面加工法。素材のもつ風合いとあいまって、デザインされたエンボスが独特の陰影を醸し出す。
高周波箔押 空押しによるエンボスと箔押しによる箔を同時に施す表面加工法。素材と一体となって、存在感のある格調高い表現となります。
D-Emboss(ディー・エンボス) 空押しを応用した大比良工業独自のユニークな表面加工法。色違いの透明フィルムを2枚重ねて空押することで、凹部の色が混ざり合い複雑な色合いが生まれる。視覚と触感にアピールする新タイプの汎用カバー素材。
「以上のうち、『D-Emboss』は最も新しい当社のオリジナル技術で、DはDimention(次元)を意味する。黒の上にピンクを乗せると、凹んだ部分は紫になる。黒に黒を重ねるとより深い黒になる。次元の違う表現ができるので、色にこだわるお客様には喜んでいただいている」(助川浩専務)
このほか、同じ箔押しでも、箔を盛り上げたりフラットにしたりと、生地の違いによって押し方を変える方法(エンボスの生地の場合、フラットのほうが模様が映える)や、箔に模様を入れて目立たせる方法など、細かな工夫も行われています。


表面加工から製品加工まで、独自の一貫生産体制
「加飾で難しいのは、裁断や箔押の工程で生ずる生地の伸縮の問題。ブックカバーなどの場合、下手をすると表紙が入らなくなったりするので1mmのズレも許されない。その伸縮具合の計算に大変気を使う」(助川専務)
こうした問題に対処する上で、大きな強みとなっているが、同社ならではの一貫生産体制です。

写真は全自動同時溶断加工複合機。
「塩ビの溶着加工の業界は、高周波ウェルダーなら高周波ウェルダーだけ、箔押しなら箔押しだけと、大抵やることが決まっているが、当社は、それらが全部ひとつの工場に入っているので、メーカーから原反が入ったら、荷解きして、切断、箔押し、溶断、溶着と、表面加工から製品加工まで一連の工程をすべて自社で管理できる。もし、一部の工程を外注していたら、どこでどれだけ伸びたか掴みにくく、対応し切れない。そういうこだわりが、長い間当社がお客様に信頼されてきた理由かもしれない」(大比良社長)
ちなみに同社では今、空押しでオシャレな模様を施した「コロナ対応のマスクケース」も開発中。豊かで楽しい加飾の世界が更に広がります。
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