特集 新しい塩ビ製品 PVC Award 2019 受賞作品クローズアップ
船橋㈱の食肉加工用作業服「タフブラード」
得意の防水技術で、ハードな加工現場の「安全」「快適」「清潔」を守る
雨合羽や防水エプロンなどの老舗メーカー・船橋㈱(舟橋昭彦社長、愛知県名古屋市)が開発した「タフブラード」は、今回の優秀賞受賞作品の中でも異色の製品。食肉の加工現場に特化した塩ビ製の作業服で、ハードな環境の中で働く人々の快適、安全、清潔を守る製品として高い評価を受けました。
日本初の食肉加工専用作業服
1921年(大正10年)の創業以来、ほぼ一世紀にわたって防水衣料を追求してきた船橋。「タフブラード」は、その豊富な技術の蓄積から生まれた、日本初の食肉加工専用作業服です。
「タフブラード」の最大の特長は防血・防汚性に優れること。血液や脂などの汚れに日々さらされる食肉加工の現場では、食品衛生上はもちろん、作業者の健康を守る上でも清潔の徹底が第一条件。「タフブラード」は、表面に付着した様々な汚れを簡単に水洗いできるだけでなく、作業中に血液や水、異物などが侵入してくる危険をガードして、作業現場の安全と快適さ、清潔をがっちり守ります。
その秘密は、独自開発されたパールテックスと呼ばれる特殊な生地素材の採用と、超音波ミシンによる無縫製加工にあります。
パールテックスは、ナイロン繊維の基布の両面に塩ビを特殊コーティングしたターポリンの一種で、時間が経っても汚れが落ちやすい表面特性を有するのが特長。生地には抗菌剤が練り込まれていて、長時間の抗菌効果を発揮します。一方、超音波ミシンによる無縫製加工は、糸を使う縫製と違って縫い目の凹凸や段差ができないため、血液や異物が縫い目に滞留したり、内部に侵入したりするのを防ぐことができます。また、前合わせの部分に切り返し加工を採用していることも、異物の侵入防止に役立つ工夫の1つです。
アワード受賞を普及拡大の弾みに
このほか、基布の繊維を絡み織り(2本の経糸を捩りながら横糸に織り込む紡織法)にすることで、生地のしなやかさ、作業性を向上させていること(生地の厚みは0.3mm)、ズボンの股の部分などは、裏面に同じ生地のシームテープを貼って補強していることなども、「タフブラード」の付加価値を高めているポイント。
「タフブラード」を開発した動機について、舟橋社長は「もともとは、ある食肉工場が当社の雨合羽を作業に利用しているのを発見したのがキッカケ。雨合羽は動物の脂や血液が付着することを想定していないので、改めて、そういう汚れに強い製品を作ろうと思い立った。当社の防水技術を食肉の分野に応用、進化させた製品だが、開発に際しては、丈夫で溶着加工できる塩ビのメリットが大いに役立っている」と説明します。
また、商品部防水エプロン担当でPVC Awardへの応募も担当した冨田咲良さんは、「“防水の船橋”をPRしたくてアワードに応募しました。初めての挑戦でしたが、賞を取れたことでメディアの取材も増え弊社の技術力をアピールする絶好の機会になりました」と受賞の喜びを語ってくれました。
タフブラードの発売は2017年。既に全国各地の食肉・食品加工場などで採用されており、「水で汚れを簡単に洗い落とせるので、買い替えの必要がなくコストパフォーマンスが良い」「生地が柔らかいのでスムースに動ける」といった好評を得ていますが、本格的な普及はこれからが正念場。今回の受賞はその大きな弾みとなることが期待されます。