インフォメーション 2
弘進ゴム㈱の塩ビ製ワーキングブーツ
丈夫で滑りにくい。
作業現場の安全を守る信頼のトップブランド
丈夫で滑りにくい。しかも、寒冷地向けの防寒性能まで。作業の現場にとって最も大切な要素を兼ね備えた弘進ゴム㈱(西井英正社長)のワーキングブーツ(作業用長靴)。宮城県仙台市を拠点に、たゆみない研鑽で作業靴の全国ブランドへと成長を遂げた同社の歩み、そしてメイド・イン・ジャパンへの拘りを、製造拠点の亘理工場(宮城県亘理郡)で取材しました。
業界トップのシェア
はじめにお断りしておくと、弘進ゴムの製品はワーキングブーツだけではありません。現在の同社の事業はシューズ・ウェア部門と化工品部門の2部門をメインとしており、シューズ・ウェア部門では安全スニーカーなどの履物類やレインウェア・合羽など、化工品部門では土木建築・農林漁業等で使用される産業用ホース、遮水シートやターポリンシート、防護マット、さらには日本最大のディッピング槽を用いた工業製品のコーティング事業などまで、その取扱品目は多種多様。近年では、介護用お風呂などの健康産業部門にも力を入れており、同社の製品は私たちの生活の様々な場面で活躍しています。
とはいえ、弘進ゴムといえば、やはりワーキングブーツ。厨房や魚市場、食品工場などで使われている白い塩ビ製ブーツをはじめ、同社の製品は作業の現場から高い支持と信頼を得ており、作業用長靴の分野では業界トップのシェアを占めています。
ビニール合羽、塩ビ製ワーキングブーツへ
ワーキングブーツには、大きく分けてゴム製品と塩ビ製品があり、戦前から長く使われてきたゴム製に対して、塩ビ製が登場したのは1960年代に入ってから。同社の場合も、ゴム製からスタートして塩ビ製へという流れを辿っており、現在も両方の素材で多彩な製品を展開しています(現在、ゴム製品は関連会社の大連金弘ゴム有限公司で製造)。耐油性、耐久性は強いが熱を伝えやすい塩ビ製、油には弱いが耐寒性柔軟性に優れたゴム製と、特性の違いに応じて棲み分けが出来ており、塩ビ製は漁業や食品関係、ゴム製は農業や工事現場などで使われることが多いといいます。
「当社の製品はもともと東北・北海道を中心とした漁業関係の需要がメインだったが、ゴムは魚油でダメージを受けるということで、塩ビの需要が進んだ。また、白物中心なので清潔感があり、衛生を重視する現場で使われるようになった。ゴムで白い長靴を作るのは難しい」(西井社長)。
初めに塩ビの可能性に着目したのは先代の西井弘氏(現会長)で、取引きのあった商社を通じて塩ビを知り、ターポリンで作ったビニール合羽が大ヒット(囲み記事)。この成功がワーキングブーツへの道を開くことになりました。
「初めは、割れもあったし、耐油性もそれほど高くなかったが、配合方法などの研究を重ねて品質が安定、シェアを伸ばしていった。寒冷地の現場をメインにしていることもあって、割れにくくしなやかな製品を作れたことが評価されたのだと思う」(大槻賢取締役執行役員亘理工場長)
弘進ゴム㈱とビニル事業
1935年、弘進護謨工業㈱として仙台市に創業(現社名は1958年から)。当初はゴルフボールなどの製造を行っていたが、後に漁業用のゴム合羽やゴム長靴の製造販売に転換。北洋漁業の最前線で使われた。1955年、本社ビニル工場を新設して塩ビシートの製造を開始。他社に先駆けて開発したビニール合羽は「軽くて割れない合羽」として大ヒットした。1966年、新たに亘理工場を開設して、ビニル手袋、ホースなどを経て、塩ビブーツの製造を開始した。同工場は塩ビ系製品の製造拠点であり、射出成形、押出し成形、カレンダー成形、ディッピング加工など、多彩な技術を駆使して様々な製品を製造している。
多彩なラインナップ
丈夫で滑りにくい。それが弘進ブーツの基本性能。同社では現在、これをベースに、作業の現場や地域の条件などに合わせた様々な製品をラインナップしています。
主なところでは、特殊加工のグリッドソールを採用した水や油の耐滑性を高めた製品、特許取得のクリーンウェーブソール(防汚性耐滑底。右の写真)の採用で、耐滑性に加えて目詰まりや汚れ防止の性能を付与した製品、特殊配合で塩ビ本来の耐油性をより高め、ガソリンスタンドや化学工場などで使われるネオ耐油、裏地にウレタンを使って寒冷地での防寒対策を強化した製品、爪先部分に落下物などからの危険を防ぐスチール製の先芯を入れたり、靴底の中低部にクギなどの踏み抜きを防ぐ踏み抜き防止板を内蔵したセーフティタイプ、などがあり(下の写真参照)、ほぼすべての製品が抗菌仕様となっています。
弘進ゴム 塩ビ製ワーキングブーツの主なバリエーション
「国産」を支えた技術力
「過去の一時期には、スニーカーやスポーツシューズなど一般向けの靴も作って多角化を図ったこともあったが、最終的に作業用以外は全部止めて、経営資源を一カ所に集中することにした。この決断のお陰で今日の当社がある」(西井社長)
同社は、他社工場の海外移転が進む中でも頑なに国産を守ってきました。それができたのは「樹脂の流れなどをきちんと読んで金型を基礎設計できる技術力、現場に合わせた配合の工夫があったからだ」と西井社長は言います。
「アウトサイダーが輸入品を入れているが、割れなどで苦情が多い。我々は技術力という優位性を持っており、コストもひけを取らない。今後も国産に拘り、日本製として輸出にも取組んでいく」