トピックス 1
リサイクル塩ビ管の「環境にやさしい」を数値で証明。
LCA日本フォーラム奨励賞を受賞/塩化ビニル管・継手協会
プラスチックのリサイクルが社会的な課題となる中、塩化ビニル管・継手協会は、使用済みの塩ビ管を原料に、同じ塩ビ管として再生させる「パイプからパイプへ」のリサイクルシステムを1998年から構築・運営してきました。環境にやさしいと言われてきたこのリサイクル管ですが、一般的な塩ビ管と比べて実際どれほど環境負荷が低いのか。その答えを数値で明らかにし、効果を見える化する調査が行われました。同協会の専務理事 鈴木謙次郎氏と、技術第二部長 兼 環境部長 井上雅昭氏に今回の取り組みの背景と成果を伺いました。

塩化ビニル管・継手協会
硬質塩化ビニル管、継手、マスマンホールの普及広報やリサイクル活動の推進、技術規格の標準化等を事業とする団体。1954年に「(旧)塩化ビニル管・継手協会」として設立。2022年にプラスチック・マスマンホール協会、プラスチックリブパイプ協会、C.C.BOX管路システム研究会と統合した。業界の健全な発展を促進し、安心・安全で持続可能な社会基盤の整備に寄与することを目的に活動している。
「パイプからパイプへ」。28年続くリサイクルシステム
かつて、解体や建て替えの現場で発生する廃塩ビ管は、埋立処分されるのが一般的でした。そこで協会は、1998年に廃塩ビ管の受入拠点を整備し、マテリアルリサイクル・システムの構築にいち早く乗り出しました。10箇所から始まった受入拠点は、2026年現在、全国75拠点に拡大。リサイクル協力会社と連携しながら、年間約2万トンの廃塩ビ管を受け入れ、選別、洗浄、粉砕、造粒等の工程を経てリサイクル塩ビ管の原料を作っています。
これらは新しいポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を内外層に使い、リサイクル原料を中間層に用いたサンドイッチ構造の「リサイクル三層管」、中間層を発泡させた「リサイクル発泡三層管」などに生まれ変わります。
リサイクル塩ビ管は、グリーン購入法の特定調達品目に指定されるなど、環境性能の良さが評価され、独立行政法人 都市再生機構(UR都市機構)や東京都の公共建築物をはじめ、各自治体で採用されています。
「使用済み管を原料として活用することで、新しい樹脂の製造工程が一部不要になります。これが、リサイクル管が環境にやさしいといわれる理由です」と井上氏は語ります。
ライフサイクル全体で「環境にやさしい」を証明する調査
リサイクル塩ビ管は、通常の塩ビ管とは違うプロセスを経て生まれます。調達から製品化までを通じて、各工程でどの程度環境負荷が減少・増加し、最終的に通常の塩ビ管と比べて環境性能がどの程度良いのか。それを明確な数値で可視化したのが、今回のLCA(ライフサイクルアセスメント)調査です。LCAとは、製品の原料調達から製造、消費、廃棄までの工程で消費されるエネルギーと温室効果ガス(GHG)排出量を定量化する手法で、協会は2024年度に原料調達から管製造までの工程について調査を実施しました。調査対象は「リサイクル三層管」と「リサイクル発泡三層管」の2製品。調査にあたって、未使用のPVC樹脂の調達工程については既存データベースを活用できましたが、リサイクル原料の調達及び管の製造工程についてはまとまったデータがありませんでした。そこで「実際に、リサイクル原料を製造している中間処理業者及び管製造会社からデータを収集しました」と井上氏は語ります。こうして複雑な製造プロセスで分断されたデータをまとめ上げ、正確に評価できる状態を整えていったのです。
GHG排出量・エネルギー消費量を大幅削減
調査の結果、リサイクル三層管は一般塩ビ管(VU管)と比べてGHG排出量が45%減・エネルギー消費量が33%減、リサイクル発泡三層管ではGHG排出量が65%減・エネルギー消費量が55%減という結果が得られました(口径100mmでの比較)。「リサイクル管では、環境負荷が大幅に下がることはわかっていました。今回数値として裏付けが取れたことで、改めてその環境性能の良さに確信を持てました」と鈴木氏。この調査は2025年度第22回LCA日本フォーラムにおいて、「従来管に比べ大幅なGHG削減であることを評価する。インフラ老朽化対応が急務となる中、リサイクル塩ビ管の普及による社会的波及効果は大きい」とその意義を評価され、奨励賞を受賞しました。
GHG排出量(単位:kg-CO2eq/m)
| 口径 | φ100 | φ150 | φ200 |
|---|---|---|---|
| リサイクル三層管 | 1.43 | 3.25 | 5.42 |
| VU | 2.59 | 5.87 | 9.79 |
| リサイクル三層管/VU | 55% | 55% | 55% |
| 口径 | φ50 | φ75 | φ100 |
|---|---|---|---|
| リサイクル発泡三層管 | 0.59 | 1.17 | 1.81 |
| VP | 1.67 | 3.28 | 5.08 |
| リサイクル発泡三層管/VP | 35% | 36% | 36% |
エネルギー消費量(単位:MJ/m)
| 口径 | φ100 | φ150 | φ200 |
|---|---|---|---|
| リサイクル三層管 | 43.7 | 99.3 | 165.5 |
| VU | 65.0 | 147.4 | 245.8 |
| リサイクル三層管/VU | 67% | 67% | 67% |
| 口径 | φ50 | φ75 | φ100 |
|---|---|---|---|
| リサイクル発泡三層管 | 18.9 | 37.8 | 58.4 |
| VP | 42.0 | 82.4 | 127.5 |
| リサイクル発泡三層管/VP | 45% | 46% | 46% |
環境性能の「見える化」から、普及へ
近年、環境意識の高まりとともに、環境性能の良さを謳う製品やサービスが増えています。中には、実態のない「グリーンウォッシュ」と指摘されるケースも。そうした状況だからこそ、今回のLCA調査で環境負荷の低減効果を数値として明らかにしたことには大きな意味があります。
現在、リサイクル管は製造コストが一般管より高くなるため、採用はUR都市機構や東京都をはじめとした一部の公共機関・自治体が中心です。しかし、科学的に裏付けられた環境性能という確かな根拠が、今後は他の自治体や民間への普及をさらに後押しすることが期待されます。「社会全体でリサイクル素材を積極的に活用する需要が生まれれば、製造コストも下がり、さらに普及が進むという好循環につながっていくはずです」と鈴木氏。同協会は、環境性能重視の機運を追い風に、これからもリサイクル塩ビ管の普及を目指します。
