リサイクルの現場から
高山金属商事㈱の
電線リサイクル事業
金属の再資源化に取り組んで一世紀。
電線リサイクルは大きな環境変化も
高山金属商事㈱(高山謙治社長、本社:神奈川県横浜市)は、電線をはじめステンレス・アルミなど非鉄金属のリサイクルに取組んできた老舗中の老舗。電線リサイクルについても50年の歴史を有しています。事業の現状と環境変化、今後の課題などについて、専務取締役の高山周三氏に聞きました(同社海老名営業所で取材)。
関東地域の金属リサイクル拠点
法人化以前の個人商店の時代を含めると、ほぼ一世紀にわたって金属の再資源化に取り組んできた高山金属。まさしく関東地域における金属リサイクルの拠点の1つといえます。
「確かに事業歴は長いが、本格化したのは戦後の金属不足の時代。とにかく鉄でも非鉄でも金属は何でも欲しいという時代だったので、設備の増強も進み、事業が発展した。電線のリサイクルを始めたのは、ここ(海老名営業所)にナゲット処理(被覆を除去して、電線を細かい粒状に加工すること)設備を入れてから。当初はコンピュータの解体で出てくる廃電線だけを処理していたが、その後、設備の有効利用などを目的に市中の廃材も処理するようになった。現在は専門の回収業者から買い取ったモノを中心に、建設廃材などの処理を行っている」(高山専務)。
月約200トンの銅、50トンの塩ビ
同社の処理工程の概要は図に示したとおり。一連の工程を経てナゲット処理される銅の量は一カ月で約200トン。銅は99%以上の高純度で、伸銅メーカーや電線メーカーなどで各種銅製品にリサイクルされています。被覆材については、処理不適品として埋立処分される分を除き、塩ビ約50トン、ポリエチレン約10トンが再生加工されていますが、塩ビについてはシートメーカーなどに販売されて様々な用途でマテリアルリサイクルされています(ポリエチレンはサーマルリサイクルがメイン)。
「電線リサイクルにおいては、あくまで銅がメイン。塩ビなどの被覆材は副産物という位置付けだが、処理できなければただの廃棄物になってしまう。それを如何に減らしていくかがこの仕事のポイントで、産廃の処理費が上がっている中、とにかく有価でリサイクルできているのは有難い」
高山金属商事㈱のプロフィール
前身は、大正13年に高山喜太郎氏(高山謙治社長の祖父、故人)が開業した金属原料商「高山商店」。昭和25年、高山金属商事㈱として法人化。昭和50年、事業の発展に伴い海老名営業所を開設。被覆電線ナゲット処理設備を導入して、電線リサイクルを本格的にスタートするとともに、電機雑品の粉砕加工、コンピュータの撤去・解体等、業務の拡大と多角化を進めた。
お客様からの「ありがとう」と環境から「ありがとう」を目指し、高品質のリサイクル品を生産し続けている。
<URL>http://www.takayama-kinzoku.com
工場の海外移転と中国問題
50年近く電線のリサイクル事業に携わってきた同社ですが、最近は事業環境にも様々な変化が起きているようです。高山専務
の説明。
「基本的な問題は、国内の工場の海外移転が進んでスクラップを出す工場が激減していること。これがいちばん大きい。神奈川県内でも自動車メーカーの座間工場が閉鎖され、京浜工業地帯や平塚工業地帯でも工場がどんどんなくなって、跡地にショッピングモールなどが建設されている。工場がある限り定期的にモノは出てくるが、一旦ショッピングモールになったら、出てくるのは内装改修の時ぐらいで、何十年に一度程度になってしまう」
一方、2017年末から始まった中国の廃棄物受入停止措置も業界全体に深刻な影響を与えています。
「20年ほど前から日本の廃電線は低品位材を中心にどんどん中国に出ていったが、その受入が止まったことでモノが滞留し、被覆材の埋立処理費が5割以上値上がりしている。その一方で、中国で電線のリサイクルをやっていた業者が、今度は日本に来て買い集めるという現象も起きている。中国人の経営者が、会社のスタッフと機械ごと引っ越してきて、日本でナゲット加工して中国に持って行くので、銅を巡る競争が激しくなっている。銅が目当てだから被覆材をどう処理しているかは不明だが、もし適正に処理されていないとすれば、環境的な問題も懸念される。神奈川県は土地が高いのでまだ大丈夫だが、地方では深刻な問題だ」
次世代への継承が最大の課題
電線リサイクル業界では、業界の諸問題を話し合う場として電線リサイクル協議会という団体を設けており、4年前から高山専務が会長を務めています。
「40年ほど前に神奈川の4社が集まってナゲット協議会として発足した団体で、その後全国組織に発展し、現在16社が加盟している。産廃の問題や中国の問題などもこの場で協議しているが、今後とも関係業界や諸団体、更には関係省庁の知恵も借りながら問題の解決に当たっていきたい」
今後の課題について高山専務は「私自身30年以上リサイクルに取組んできたが、何でこんなことを始めたかのかと思うほど苦労の多い仕事だ。社会に必要な事業だという使命感がなければ続けられない。その大切な事業をいかに次世代に繋いでいくか。今はそれが最大の課題だ」と語っています。