今でも進化中。塩ビ製防水ウェアの最新情報

�潟Wンナイに見る製品開発の今。
ファッション性の高い製品づくりへ、新たな動きも

表地に塩ビを使用したナダレス・ブランドの新製品、空調ブルゾン 　激しい雨の中、防水ウェアに身を包んで黙々と災害復旧に従事する作業員の姿。TVニュースなどでしばしば見られる光景です。塩ビは、防水ウェアの分野でも主力素材のひとつ。1952年の創業以来、防水・透湿などの機能を備えた特殊アパレルの製造販売に携わってきた�潟Wンナイ（杉本英介社長／東京都北区）の事業から、塩ビ製防水ウェアをめぐる新しい動きをご紹介します。

●現代社会の安全・安心に貢献

同社の多彩な製品群を網羅した製品カタログ「Nadalles」。 改訂を重ねて、最新版はNo.21。

　雨合羽などのレインウェアを中心に、ワークウェア、アウトドアウェア、エプロンなど、多彩な製品群を展開するジンナイ。その製品は、警察、消防、自衛隊などの官公庁部門や、鉄道、航空、建設、給食、外食チェーンなどの民間部門のユニフォームから、ゴルフ、登山、ウォーキングなどの個人部門の非ユニフォームまで、幅広い分野に採用され、現代社会の安全・安心に貢献しています。
　同社の杉本公太専務によれば、創業者の杉本進午氏（先代社長、杉本専務の祖父）が、救命胴衣などのメーカーに勤めた経験を生かして、鉄道マンのための塩ビ製雨合羽や雨帽子の製造・販売を始めたのが同社の原点。その後、製品群の広がりとともに素材も塩ビ以外の樹脂が多く用いられるようになっていきますが、「雨具には塩ビがいちばん」という同社の姿勢は、一貫して変わることはありませんでした。

●高まる塩ビ再評価の機運

塩ビ製の雨帽子。その製法は60年以上殆ど変わっていない。

　「当社が事業を始めた当時、既に合成繊維にゴムをコーティングした合羽ができていたのですが、縫い目に貼るゴムテープがくっ付きにくいといった難点があって、縫い目が溶着できる塩ビが用いられるようになってきたのです。塩ビは汎用性があり、柔らかくて劣化しにくい。何より防水性の高さが雨具本来の目的に適っています。当社の製品第1号となった雨帽子は塩ビフィルムを素材にしたものですが、その製法は今も殆ど変わっていません。それほど製品として完成しているのです」（杉本専務）
　その後、軽くて透湿性の高いウレタン系の製品が登場し、「防水性、耐久性が高い分、蒸れやすくて重い塩ビに代わる素材」として成長していきますが、ウレタンは、経年劣化しやすいことから、近年塩ビ再評価の機運が急上昇。「ユーザーには長持ちさせたいなら塩ビといった提案をしている。需要は戻りつつある」と言います。

●注目の新製品・ナダレス空調ブルゾン

ナダレス空調ブルゾンの空気の流れ

　現在同社が展開するブランドは、主力となる高機能ユニフォームの「ナダレス」、個人ユースをメインとしたスポーツ&レジャー用レインウェア「スプルース」、プロ仕様の業務用防水エプロン「シャバルバ」、ゴルフ用レインスーツ「プリータ」、の4種類。
　これらの製品のほぼ4割で、生地、コーティング材などに塩ビが用いられていますが、中でも注目したいのが、表地に塩ビを使用し2015年に発売した「ナダレス」の新アイテム・空調ブルゾン。
　これは、�葛�調服のダイレクト・クーリング・システムを採用したもので（雨具業界では同社が独占ライセンスを取得）、腰の辺りに取り付けた左右2基の小型ファンでウェアの中に外気を取り込み、汗を蒸発させることによる気化熱で身体を冷やし、涼しく快適な着心地をキープする仕組みです。体に生地がまとわりつかないため、塩ビの重さも感じさせません。通気性のない塩ビの密閉性が効果を倍増させています。「安全、快適な商品を提供したい」という思いが結実した、同社ならではの製品であり、2015年の発売以来、好調な売れ行きを示しています。

●無縫製溶着加工の導入でデザイン性を向上

レインコート

　一方、加工技術の面でも新しい試みが始まろうとしています。現在同社ではミシン縫製と高周波ウェルダー溶着を中心に製品加工を行っていますが、この春から超音波を利用した無縫製溶着加工を導入。加工技術を進化させることで、よりファッション性の高い製品づくりにも対応していく計画です。
　「無縫製溶着加工により、縫い目・針穴が無くなり防水性・防寒性がさらに向上すると同時に、塩ビとEVAのシート、あるいはナイロンと塩ビターポリンといった異なる樹脂（異素材）を掛け合わせることができるようになって、より複雑な形状・デザインの加工にも対応可能となる。いまデンマーク生まれのレインウェアが売れていて、ファッション業界の人たちが樹脂系の素材に興味を高めていると聞くが、無縫製溶着をうちの独自技術に育て上げて、そういう動きにも対応していきたい」
　昨年のPVC Design Award 2015の入選作品「防災頭巾になるレインコートmo shi mo」（インフォメーション参照）の製作に協力するなど、もともとデザインへの意識が高いジンナイ。今後の製品開発が注目されます。

ジンナイが展開する4ブランド。左から、「ナダレス」「スプルース」「シャバルバ」「プリータ」