優美な和風空間を醸しだす「塩ビ強化和紙」の50年
優れた耐久性と防炎性能。インテリアの新世界を切り拓いた(株)ワーロン
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MOND 大名/スクリーン:ワーロンシートNo.2 0.2mm/オブジェ:ワーロンシートNo.2-15G 0.45mm/設計:スピニフェックス |
和紙を塩ビシートで両面ラミネートした塩ビ強化和紙は、和紙の味わいを生かしながら、丈夫で長持ち、防炎性能にも優れたインテリア素材です。障子や照明器具の傘、間仕切りなど、生活のさまざまな場面で、美しい和風空間を醸しだす塩ビ強化和紙。その50年に及ぶ歴史を、業界のパイオニアである(株)ワーロン(名古屋市中村区)に取材しました。 |
●「和風」から「Wa-fu」へ
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後藤常務 |
(株)ワーロンの創業は1922年。セルロイド玩具製造業として戦前戦後のプラスチック玩具業界を歩んできました。セルロイドが極めて燃えやすいことから難燃性プラスチックが求められ、県の指導によりまだ黎明期であった硬質塩化ビニルに着目。愛知県セルロイド工業組合事業として参加していた渡辺セルロイド工業(現社名への変更は1973年)では、創業者の渡辺喜代治氏がホットプレス機を購入して艶付け工程を研究していました。
しかしほどなく高品質の硬質塩ビは市場に出回って組合事業は失敗に終わり、残ったプレス機の用途転換を図るため、現会長の渡辺豊が「美術和紙プラスチックシート」の開発研究に取り組みました。「和紙と塩ビをラミネートするオリジナル技術は、会長が書家として紙の造詣が深かったこと、美濃和紙の産地・岐阜に隣接していたことが発想に影響を与えたのでしょう」(同社の後藤公洋常務)
その後さらに研究を重ね、和紙の風合いを損なわない強化障子紙の開発に成功し昭和1956年に特許出願。1960年に「ワーロンシート」として国内外への販売を開始しています。
和紙の美観を活かしながら、燃えにくく丈夫で長持ち、しかも水拭きOKという「ワーロンシート」の登場は、単なる障子の代替品ではなく、全く新しい「Wa-fu」の誕生を告げるものでした。1962年にはイタリア・ローマの日本文化会館のインテリアに採用される等実績を重ねながら需要は急速に拡大し、一般家庭、ホテル・旅館、展示会等で障子、ランプシェード、パーティション、ディスプレイ等に幅広く利用されています。
●バリエーションいろいろ。ヨーロッパでも広がり
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五島課長 |
「塩ビのよさは、加工しやすく耐久性に優れること。和紙を建材のように使えるようになったのもこの耐久性のお陰で張替を10年のスパンで考えられるようになった。それと、防炎性能の高さもインテリアには重要な要素だ」(五島正昭課長)
70年代にはアクリル系の製品も開発されていますが、現在でも需要の中心は塩ビ製。「ワーロンシート」で培ったラミネート技術を生かして、商品アイテムのバリエーションも広がっており、塩ビシートの両面に和紙を貼ってデンプン糊でも貼れるようにした障子紙「ホームワーロン」、塩ビシートのかわりに塩ビ板を使った「ワーロンプレート」などのほか、2009年には、手すき和紙の触感を生かした「ワーロンシートの工芸和紙シリーズ」も発売され、店舗用として需要を伸ばしています。「手すき和紙表面の凹凸のせいで、圧着時に空気溜りができやすい。和紙の味わいを損なわずこれをどう吸収するか長年の課題だった。そのためのプレス技術の確立に時間をかけた」(後藤常務)。
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特別養護老人ホーム「愛成苑」
建具:ワーロンシート(工芸和紙シリーズ)K-106 麻雲竜 0.3mm/設計:(株)アーキテクト・アソシエイツ・ヨコハマ |
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今年は「ワーロンシート」の誕生からちょうど50年。最近ではLEDと組み合わせた照明器具が人気を集めたり、ヨーロッパでブラインド用途が広がるなど新しい動きも出ているとのことです。同社では現在、50周年記念行事として学生コンペティッションを実施中で(日本インテリアデザイナー協会との共催)、来年3月に最終審査結果が発表の予定。「デザイナーの卵にワーロンシートを使って新しい発想を提案してもらいたい」との狙いどおり、また斬新な塩ビ強化和紙の世界が生まれてきそうです。
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