2000年9月 No.34
 

 塩ビ混入廃プラの「ガス化原料化技術」確立へ

  塩ビの分別不要、低コストでリサイクル可能。ダイセル・新日鐡が共同開発に着手

    ダイセル化学工業(株)と新日本製鐡(株)が、塩ビを含む使用済みプラスチックの新たなリサイクル技術開発に着手しました。プラスチックを熱分解して塩酸を得るとともにメタノールを合成する一貫システムの確立をめざすもので、7月には新日鐡の鉄鋼研究所(千葉県富津市)構内に試験プラントの建設もスタート。従来の概念を超える廃プラリサイクルの姿が見えてきました。  

 

回収塩酸を製鉄業、化学工業で再利用

  今回の技術開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けた(財)クリーンジャパンセンターに、ダイセル、新日鐡両社が協力する形で進められるもので、資金面や実験試料の提供その他で、塩ビ工業・環境協会(VEC)も支援に加わっています。
 新しいリサイクル技術は「廃プラスチックガス化原料化」と呼ばれます。具体的には、塩ビを含む使用済みプラスチックを1,400℃程度の高温で部分酸化(新日鐡の保有技術)して、一酸化炭素、水素、塩化水素を主成分とする化学原料ガスを生成した後、一酸化炭素と水素を反応させてメタノールガスを合成するとともに、塩化水素を塩酸として回収するというもので、一廃系と、家電、自動車シュレッダーなどの産廃系両方のプラスチックに対応可能。回収された塩酸は製鉄業における鋼板の酸洗工程や化学工業等で再利用されるほか、メタノールもダイセル工業の技術により酢酸の原料など幅広い用途での利用が考えられます。
 この技術の大きな特徴は、従来のリサイクル技術と異なって、前処理の段階で塩ビを分別する必要がないため、従来より大幅な低コストで塩ビを含む多様なプラスチックをリサイクルすることが可能となることです。ほかにも、二酸化炭素の排出を抑制できる、発生するスラグを路盤材などに利用できるといった特徴が上げられますが、塩ビ業界にとっては塩ビを分別せずに低コストで有用な資源を回収できるという点に最大の期待がかかっており、高炉原料化、セメント原燃料化と並んで重要な意味を持つ技術開発と位置づけられます。

 

高濃度塩ビの処理実験も

  現在建設中の試験プラントの処理能力は1日5トン。試験運転の開始は2001年初頭からとなる見通しですが、要素技術は既に確立しており、連続運転による実用化レベルの技術の検討が試験のメインテーマとなります。
 また、塩ビについては、理論上は塩ビ100%の高濃度でも処理可能ですが、実際的な濃度の上限を見定めることも今回の試験の目的のひとつで、実験では各種の塩ビ製品を用いて細かい分析が行われることになっています。
 なお、ダイセル、新日鐡両社は試験運転を終了した後、平成14年に本プラントを建設し、翌15年から実証運転に入る予定。一連の実験によりシステムの有効性が確認されれば、塩ビのリサイクルにまたひとつ、大きな選択肢が備わることになります。