こうした危機を克服するため、DSD社では回収業者への手数料の支払い額を20%削減するなど様々な対策を打ち出す一方、昨年10月からは回収〜リサイクルまでに要するコスト計算に基づき、ライセンス料金の改定を実施しました。従来の一律方式から排出者の責任に応じた公平な料金体系を採用したもので、包装材を少なくするほど料金負担が軽くなる仕組となっているため、包装の減量化が促進されるものと期待されています。プラスチックの場合、以前の1kg当たり0.16ドイツマルクから3マルクへと大幅な引き上げになっていますが(ガラスは0.16マルク、アルミは1マルク)、これはプラスチックが回収・分別に最も手間のかかる素材と判断されたためです。
以上のように、グリュネプンクトのライセンス使用料金の回収が順調に行われるかどうか、そして新しいライセンス料金がうまく機能するかどうかが、デュアルシステムの今後にとって最大の問題となっているわけです。
● 高まるケミカルリサイクルへの関心
一方、プラスチック包装材の場合、回収量が増加するのに伴いリサイクル能力の限界という問題も深刻になっています。特に、選別しにくい混合プラスチック材については、これまでのマテリアルリサイクル中心の考え方から、ケミカルリサイクル(油化)が「唯一機能する処理方法」として重視されるようになってきており、BASF社のように1万5000トン規模のパイロットプロジェクトをスタートさせて油化の研究に着手する企業も現れ始めました。ケミカルリサイクルは、デュアルシステムの選択肢としてはまだ認められていませんが、ドイツ政府も既に検討を始めており、これに伴って、日本の焼却・油化技術に対する関係者の関心もこれまで以上に高まっているということです。
足立専務談 「ドイツの取り組みは国民性を反映した理念先行型の厳格なものであり、緩やかな規制をめざすヨーロッパの他の国々の考え方と比べるとかなり異色と言える。コストの検討などは後回しになっているため、リサイクルされずに山積みになっている回収品も多くいろいろな批判が出ているようだ。しかし、相当量のものが回収されているのは事実であり、実際に自治体の財政負担の軽減に役立っているという報告もある。ともかくもドイツ独自の理念で徹底的に動いているという印象を受けた」。