ドイツの包装廃棄物規制令は、包装材の製造業者や流通業者などに対して廃棄物の回収と再利用を義務づけることにより、ごみ処理における地方自治体の負担軽減とリサイクルの促進などを図ろうとするものです。政令の中には、ガラス、紙、プラスチックなど7種類の素材別にそれぞれの回収率と分別率(リサイクル率)の目標値が定められており、プラスチックについて言えば93年1月以降9%、95年7月以降は64%(約73万6千トン)のリサイクルを達成しなければならないことになっています。
● 関連業界共同でDSD社設立 −包装材リサイクルの中核
1990年2月、この廃棄物規制令に基づいて、包装材に関連する業者(流通業、消費材製造業、包装材製造業、原料製造業など)を株主とする民間会社デュアルシステムドイッチランド社(DSD/本社=ボン)が設立されました。DSDは自治体の都市ごみ処理とは別のルートを整備することにより包装廃棄物の回収・分別を行う中核組織で91年7月から実際のリサイクル業務を開始しました。
@● G/P商標の活用でリサイクル推進、街角には専用の収集箱を設置
DSDのリサイクル・システムはおおよそ次のようなものです。DSDではグリュネプンクト(G/P=緑の点)という商標を定めており、包装材業者や充填業者などはその商標の使用料を払って販売包装にG/Pを表示します。使用済みになった包装(G/Pの表示があるもの)は街角に設置された「黄色いごみ箱」と呼ばれるDSD専用の収集容器に消費者が直接持ち寄ります。そして、これらの廃棄物をDSDが責任を持って回収・分別するという仕組みです(実際の作業はDSDと契約を結んだ地方の廃棄物処理業者が行う)。
DSDにより回収・分別された包装廃棄物は、その後種類別にリサイクル会社に引き渡されることになりますが、プラスチック包装廃棄物の場合、その受け皿としてVGK(使用済みプラスチック包装再利用会社)という管理会社が作られています。VGKはプラスチック製造業者、プラスチック加工業者、廃棄物処理会社などの共同出資により1991年2月に設立された会社で、国内外のリサイクル会社と契約を結び、DSDが分別したプラスチック廃棄物をそれらの会社に配送して、再生されるまでを管理する役割を担っています。
● 自治体との関係 −96%の自治体と協定締結、役割分担も明確
こうしたDSDの機能が十分に効果を発揮するためには、DSDと地域ごとの自治体が協定を結んで回収・分別を行う必要があります(現在全自治体の96%と成約済み)。この場合、両者の役割分担は自治体が台所ごみ・古新聞紙・古雑誌等の処理、DSDが包装廃棄物の処理という区分になっており、また、DSDは自治体にリサイクルのための教育・宣伝費を支払うことも決まっています。今回の調査では、DSDと協定を結んでいるデュッセルドルフ市を訪ねてみましたが、成約後間もない(昨年9月から)時期だったこともあって、同市のシステムはまだ未完成の状態でした。しかし、DSDとの協定を重要視する市当局の姿勢は明らかで、システムも今年中には完成させたいとの意向を示していました。
● 着実に普及するDSDの活動、輸入品の包装にもG/P表示
プラ処理協調査班の報告によれば、「身近な包装材へのG/Pの普及は想像以上で、商標のないものを探すのが難しいくらいだった」とのことで、DSDの活動がドイツ国内で着実に浸透していることを窺わせています。G/Pの表示は日本製テレビの段ボール箱など、輸入品にも例外なく行われているようです。また、プラスチック包装材のリサイクルの形態としては、現在はマテリアルリサイクルが中心ですが、将来予想される限界を補う手段としてケミカルリサイクル(油化)の拡大にも期待がかけられています。そのための研究も進められており、日本の油化技術にも関係者は非常に高い強い関心を持っている様子でした。