1993年9月 No.6
 
ごみ焼却時の排ガスから工業塩の回収に取り組む
南河内清掃施設組合(大阪府)

 

  都市ごみを焼却する際に出る塩化水素ガスから工業塩を回収して有効利用する −大阪府の南河内清掃施設組合ではそんなユニークな取り組みがもう10年近くも続けられています。環境に配慮した資源再利用の一例をご紹介しましょう。
  同組合は、大阪府南部の人口急増地帯にある団体で、富田林市、河内長野市など3市3町1村から排出される約36万人分のごみ処理を一手に引き受けています。人口の増加に伴ってごみの量も増える一方ですが、大阪府の条例では「ごみ焼却の排ガス処理施設は電気集塵装置と洗浄集塵装置との併用またはこれと同等以上の能力を有する集塵装置」であることが義務づけられているため、同組合を含め洗浄集塵装置(排ガス中の塩化水素を苛性ソーダ溶液で中和するシステム)を備えている処理場では、大量に出る排水対策が苦労のタネとなってきました。特に下水施設が未整備地区の焼却場では問題も大きく(下水が整備されている場合は排水の濃度を薄めて放流できる)、そうした悩みの中から排水を蒸発させて工業塩を回収するという対策が取り入れられました。同組合の取り組みもその一環としスタートしたもので、昭和61年に最新式の清掃工場を建設して業務を開始しています。現在大阪では同様の施設が計6カ所で稼働しているとのことです。
  工業塩回収システムの概略は下図のとおりですが、回収される塩は非常に高純度のもので、ごみ100トンに対してほぼ1トン(年間約900トン)の回収量となっています。運転コストは電気代、維持修繕費などを含め塩1トン当たり約3万円。現状では「かなりの持ち出し」とのことですが、組合では回収した工業塩を専売法の許可を得て苛性ソーダメーカーに販売してコスト補填に当てています。このほか焼却時の熱を利用して工場内の電力需要を補うなど、南河内清掃施設組合の取り組みは多くの面で資源リサイクルのモデル事例と言えるようです。

  都市ごみの焼却では、塩ビの混入の有無に関わらず塩化水素が発生しますが、その排ガスの中から工業塩を回収するということは、塩ビの焼却処理からも同じように工業塩が回収できることを意味します。塩ビ廃棄物をその原料の一部である塩に戻すこと、これもリサイクルのもうひとつの行き方と言えるでしょう。