●“Think Globally, Act Locally”
|
|
地球環境を守らなければならない。しかし、便利な生活は手放したくない。この相反する葛藤が、リサイクル推進への決めてとなるでしょう。ポリエチレンのレジ袋は便利であるという人もいれば、環境破壊の原因と考える人もいます。このようなさまざまな声にこたえて、西友ではレジ袋受け取りを辞退された方々にはスタンプをお渡しし、返金するシステムを実施しています。
このように環境にかかわる問題については、商品であろうとサービスであろうと環境への配慮ある選択肢をそろえて、お客さまに判断してもらうという姿勢にたっています。
消費者とじかに接している小売業で、もっとも深刻な環境問題といえば廃棄物の処理の問題です。いままで、当社は経営理念に「総合生活情報産業」「自然との共生」をうたい、地球環境保全への企業行動をとってまいりました。
また、今年は創業30周年を迎えた記念すべきときで、小売業として環境問題に取り組めるところから対策を開始しています。
まず、何百とあった包装材の材質・サイズを減らし、古紙混入率の高い紙を利用。30周年を記念して包装紙のデザインコンペでは環境をテーマに行いました。
この記念事業のなかでもっとも大きな取り組みは、リサイクルと省資源への活動です。
これを前提に、よりよい社会とはどうあるべきかという議論を交わし、生活の豊かさを失わずに環境問題にも配慮していくという考え方があるからです。したがって、小売業としての役割は、消費者の皆様に豊富な選択肢を用意しておくことではないかと思っています。そのうえで、リサイクルと省資源に取り組み始めました。
西友では、ギフト包装の削減、再生紙の活用、分別ゴミの徹底、レジ袋やトイレの削減、西友ネイチャーフレンドリー・バッグの開発、牛乳パック・トイレ・ビン・缶の回収など各種のリサイクル活動を行っています。加えて、環境にやさしい商品(環境への負荷などを配慮した)を選定したり、『環境優選』と名付けたオリジナル商品の開発・販売なども行っています。
これまでの具体的な行動は、当社が1990年に環境問題を全社的な経営課題としてとらえ推進していく、エコ委員会を設置してからです。また、当委員会を中心に、当社における環境問題への考え方、活動方針などをまとめてきました。そのなかで、環境に対する基本理念を“環境にやさしく、「豊かさ」を失わない――新たな生活文化の創造”として定めています。
また、環境対策を“Think Globally, Act Locally”という思想のもとで実践しています。そのうえ行動は、西友と社員が主体性をもち、環境保全と豊かな生活のバランスを考慮し、生活者に幅広い選択肢を提供し、ボランティアから始業活動へ、できるところから行い、継続していくことを守り、地域行政・市民・メーカーと連携して社会のシステムづくりをめざし、活動を生活者に公開していくという8原則にのっとっています。
この考え方と行動指針は『西友エコブック』にまとめ、全社員に配布されており、環境対策への重要性を共有化し、周知徹底をはかっているのです。 |
|
●リサイクルのシステムづくりを
|
|
現在、西友の全国の店舗でも、ダンボール、空きビン、空きカンなど五種類に分別して回収し、ダンボールは全店舗でリサイクルされています。発砲スチロールや空きカン、ビンなども多くの店舗でリサイクル化を推進中です。
再生トレイは、食品衛生法のうえでは使用を許可されていますが、なおいっそうの安全性については信頼感を得てきているとはいえず、また消費者からも認知されていないため、現段階ではその多くを植木鉢などの代替製品として生まれ変わらせて利用しています。回収率が低いうちならば、これでもよいでしょうが、回収率が高まると再生用途不足や値崩れを引き起こしかねません。
本来ならば、ナフサなどに戻して(油化)、利用することが望ましいのですが、これは価格競争上むずかしいのです。再生原料の市況の下落に左右されない、独自の回収方法が重要なテーマとなってきています。
ところが、現状ではリサイクルを行うためのシステムが確立されていない。それゆえに、リサイクルをやろうとしている団体や企業に負担がかかってしまう。本来、リサイクルとは節約できるものであるはずが、逆に回収コスト増という実態を引き起こしています。
たとえば、卵パックなどの積極的な回収システムを考えてはどうでしょううか。最近では、ツーウェイの買い物袋も普及してきましたので、買い物にいくときに卵パックを家庭から持参してもらい、帰りにはその袋に品物を入れてもらう。メーカー側の姿勢が明確に打ち出せれば、消費者側の賛同も得られることでしょう。
現在の西友における牛乳パックの回収状況、買い物袋の使用状況などからみても、家庭と小売店とで行っているリサイクル活動への参加、定着化は順調です。明らかに生活者の環境保全やリサイクルへの意識は高まってきています。
次の段階は、家庭から集められたトレイ、パック類をどう扱うか。これから先のリサイクルが問題となっているのです。
メーカーにとって回収したパックやトレイを、高い運搬コスト、洗浄コストを払ってでもリサイクルすべきか。これによって新たに生じるエネルギーや資源を使ってまでリサイクルをすることが本当によいことなのかどうか。
現在のようなリサイクルのシステムが確立されていない段階では、トータルコストを考慮したうえでリサイクルを進めることがだいじではないかと思います。
そこで、西友では地域や関連団体などに合わせた回収・リサイクルを進めてきています。前述のトレイは、ふたつの回収ルートを用いてリサイクルを進めています。
発砲スチレンシート工業会(トレイの原反を製造するメーカーの団体)を中心とし、消費者、行政とタイアップして行い、当社はその回収拠点としての役割をはたしています。また、再生用設備を導入しているトレイメーカー(成型加工)と組んで、トレイ納品ルートの逆流を利用しリサイクルを推進。これによって、現在では再生発砲スチロールトレイの開発やナフサ化が進められています。
このように、西友では小売業の役割として、地域のなかでの消費者団体、行政とともに進めていく「三位一体」型のリサイクルシステムを基本にしています。しかし、これら三者だけのリサイクルでは活動として実効しない場合もあります。やはり、再処理業者、メーカーの協力関係も必須条件です。五者が積極的に活動を進めていき、社会システムとしてリサイクルをとらえていかねばならない時期が近い将来やってくるでしょう。これをごみにかけて、「五位(ごみ)一体」型のリサイクルシステムも重要だと申しあげたいのです。 |
|
●『構想』の実現に夢中の日々
|
|
とにかく、いまの私はこの『リサイクル・ピア整備構想』の実現に無我夢中です。なぜなら、建設混合廃棄物は、少量、多品種の複雑な組成の分選別や、異なる素材の複合製品の分離・分解という処理の一段階で突き当たる困難さにおいて、象徴的な存在であるということを痛感するからです。
これらの困難を克服できず、産業廃棄物の再資源化率が最下位で、さらに不法投棄や不適正処理の温床になっている建設混合廃棄物ですから、「これを真剣に見直し、高い品質を伴ったリサイクル率を示すことができたら、きっと他の分野、例えば粗大ごみの再資源化など循環型社会の環を組み立てる上で重要な一つの側面の鍵を解くことにつながってくる」という確信に近い思いがあるからです。
タケエイでは、これまでも建設混合廃棄物の再資源化に積極的に取り組んできました。現状では、コンクリート砕石や木くずのチップ化などを含めてリサイクル率42%と、混合廃棄物としては割合いいほうかもしれませんけれど、一方では埋め立て処分(38%)、単純焼却(20%)などを合わせると、まだ6割近くがワンウェイの処理となっています。
こうした現状を、単純焼却しているものは発電に利用してサーマルリカバリーを35%に高める、あるいは、埋め立て処分してきた砂利やダストなどは洗浄したり、パウダー化したりして改良砂あるいは製鉄副資材としてリサイクルする、といった新しい発想と技術によって逆転することが、我々の構想の核心です。
スーパーエコタウン事業では、城南島とトンネルで繋がっている中央防波堤の敷地に東京電力のグループがサーマルリカバリーの施設(流動床式ガス化溶融炉)を建設することになっており、この施設がリサイクル・ピアのリサイクル率達成にかなり寄与してくれるのではないかとも期待しています。 |
|
●技術開発の強化で推進
|
|
現在のような分別の煩わしさを生活者に押し付けることなく、また社会のなかにリサイクルシステムを定着させていくためにも、石油化学製品はすべてナフサ化(油化)できるよう、メーカーや業界団体が主導となり技術開発を進めることを望みます。
廃プラスチックなどのナフサ化によって化学原料や燃料に利用するための再生工場の建設が進められているということですが、ぜひ経済性も含めた観点からも検討していただきたいと切に要望します。
このようにメーカーを中心とした技術開発への努力も大変重要ですが、一企業、業界の努力だけではよりよいリサイクル社会はのぞめません。 |
|
|
■プロフィール 坂本 春生(さかもと・はるみ)
1938年東京生まれ。東京大学経済学部卒業後、通商産業省に入省。1984年に通商産業省大臣官房企画室長、1986年に札幌通商産業局長に就任後、翌年、第一勧業銀行顧問を経て、1989年に西友顧問となり、翌年常務取締役、1993年に代表取締役専務に就任し現在に至る。
現在も、通商産業省、大蔵省、国土庁、北海道開発庁などの審議会、委員会の委員を務める。
著書に『私の生き生き北海道』(北海道新聞社刊) |