どうなる?「運営計画」「調達コード」の行方。
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果たして、東京2020大会に塩ビ製品が貢献できる可能性はあるのか?そこで注目されるのが、「持続可能性に配慮した運営計画」、「持続可能性に配慮した調達コード」などの策定を進める組織委員会での検討の行方です。現時点での議論の状況、今後の予定などについて、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の田中丈夫持続可能性部長にお話を伺いました(聞き手は塩ビ工業・環境協会の関専務理事)。 |
「東京2020大会における持続可能性については、今年1月に公表した『持続可能性に配慮した運営計画 フレームワーク』の中で、基本的な考え方や目指すべき方向を示しています。ポイントは、今日の持続可能性の概念が、環境負荷の最小化や自然との共生といった環境の側面だけでなく、人権や労働環境への配慮、サプライチェーンの管理等まで広がりを持っていること。従って、東京2020大会においては、『環境』のみならず『社会』や『経済』の側面をも含む幅広い持続可能性への取り組みが求められることになり、産業界や市民も含めた多様なステークホルダーの連携が不可欠です」
出展:組織委員会のホームページから転載 (https://tokyo2020.jp/jp/games/legacy/) |
「まず押さえておきたいのは、東京2020大会は単に2020年に東京で行われるスポーツイベントとしてだけでなく、2020年以降も含め、日本や世界全体に対し、スポーツ以外も含めた様々な分野でポジティブなレガシーを残す大会として成功させなければならない、ということです。そのために、組織委員会では、残すべきレガシーとそのための具体的アクションについて、@スポーツ・健康、A街づくり・持続可能性、B文化・ 教育、C経済・テクノロジー、D復興・オールジャパン・世界への発信、という5本のテーマを掲げ、それぞれ専門委員会を設置して議論を進めております。
7月に公表した『アクション&レガシープラン2016』では、持続可能性に関して、低炭素・脱炭素社会の実現、水・緑・生物多様性に配慮した快適な環境都市の実現、持続可能な資源利用、人権・労働等に配慮した活動の定着、参加・共同などのテーマを挙げ、組織委員会、東京都、国、パートナー企業、NGOなど、各主体それぞれのアクションを例示しています。専門委員会の検討作業はまだ継続中で、今後より具体的なアクションを示していこうと考えていますが、その中で事業者がどういうことができるか、我々とどう連携していくかといったことも議論していきたいと思います」
「『持続可能性に配慮した運営計画 フレームワーク』を公表したときにパブリック・コメントを募集しました。その中で産業界からもいくつかご提案をいただいています。それと、12月に公表予定の『持続可能性に配慮した運営計画 第一版(案)』についても先月の8月にパブリック・コメントを実施しており、ここに寄せられたご意見の中で、計画策定の参考になるものがありましたら、詳しく話を聞かせていただくこととしております。
このほか、『持続可能性に配慮した調達コード』についても、パブリック・コメントを実施する予定で、それぞれの段階でより具体的な提案をしていただくことも可能になると思います。なお、『持続可能性に配慮した運営計画 第一版(案)』は、12月の発行を目指しておりますが、来年更新を予定する第二版では数値目標などが入ったより具体的な計画にしたいと考えています」
「持続可能性に配慮した調達については、組織委員会が担当する仮設施設を含め非常に多くの物品やサービスを購入することになるので、まず調達総量をできるだけ抑制しなければなりません。それを基本とした上で、新品だけでなく、再生品やリース・レンタル品も活用していくということが調達の肝になっています。事業者に対しては、可能な限り再使用、再生利用できる資材・物品や、使用時の省エネルギー等に配慮した物品・サービスの提供を求める方針ですが、我々としても、日本の『もったいない精神』を生かしながら、可能な限り再使用、再生利用を進めていこうと考えています。最終的にどうしても再利用できないものは、エネルギー回収という形でリサイクルすることになると思いますが、具体的な計画はこれからになります。
また、後利用を考えた設計も課題です。仮設の場合、一定期間しか使わないので、リース・レンタル品の活用ができない場合、きちんと後利用できることが重要と考えています。
【持続可能性に配慮した調達コード 4つの基本原則】 (1)どのように供給されているのかを重視する |
「今年の1月に『持続可能性に配慮した調達コード 基本原則』を出した後、6月に「持続可能性に配慮した木材の調達基準」を公表しました。今後は全ての物品・サービスに適用する共通の基準を含む調達コードの第一版をまとめる予定です。
調達コードは、法令遵守を始め、環境(省エネルギーや3Rの推進、生物多様性の保全等)、人権・労働(差別や児童労働の禁止等)、経済(公正な事業慣行等)など、多様な要素を含むものとなる見込みです。そのため、有識者・専門家で構成するワーキンググループを設け、実現可能性のある『持続可能性に配慮した調達コード』を検討しているところです。
それが東京オリンピック・パラリンピック以後も調達のモデルとして使われていくようになれば、それこそレガシーといえるのでないかと思います。
我々組織委員会の最大の役目は、東京2020大会を成功させることです。その上で、東京2020大会を機に、成熟都市の東京がさらに持続可能性に配慮した都市になるよう、2020年の先を見据えたレガシーを残していきたいと思います」
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