奈良県の中学校理科の先生を対象にプラスチック出前講習(VEC)
塩ビ工業・環境協会(VEC)では、全国の小中学生を対象に、プラスチックや化学の面白さを伝えるため、出前授業を実施していますが、今回ご紹介するのは、先生方を対象とした、ちょっと珍しい「出前講習」の事例。講習を担当したVECの小坂田史雄氏(本誌編集長)に、当日の模様をレポートしてもらいました。
●中学生にどうプラスチックを伝えるか
今回の取り組みは、奈良県中学校理科教育研究会の矢奥泰久先生から、同研究会の実技講習会で「プラスチックの性質と指導例」として、VECが実施している出前授業の内容を話して欲しいとのご依頼があったのに対応したものです。矢奥先生によれば「中学校一年生は分子構造も習っていないため高分子のプラスチックをどのように教えるかが難しい課題」で、多くの先生方が悩んでおられるとのこと。そこで、2月18日に奈良県立教育研究所で開かれた実技講習会において、21名の先生方を前に、VECがどのように授業を実施しているかを紹介しました。
中学校の理科では物質の密度とからめてプラスチックを教えることになるため、出前授業でも5種類の汎用プラスチック(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート)を50%エタノール、水、飽和食塩水に浸けて浮き沈みを調べ、プラスチックが密度の違いにより分別できることを確認してもらいます。さらに、密度によるプラスチックの分離は、ペットボトルや電線被覆材のリサイクルに応用されていることを紹介し、密度の実験の重要性を伝えます。
先生方にも同じ実験をしていただきましたが、プラスチック片の浸け方により結果に間違いが生じることなど、生徒が実験時に陥る間違い方も同時にお伝えしたところ、「生徒に教えるにあたっていい経験をした」との声が聞かれました。
●プラスチックのプラス・マイナス両面をきっちり伝える
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密度によるプラスチックの分離 |
また、プラスチックの面白い性質を備えたシュリンクフィルムも紹介しました。ボトルから剥がしたフィルムを熱湯に入れて縮む様子を実験で確認していただきましたが、先生方も「ペットボトルの包装フィルムがなぜボトルにピタッと密着しているのか、今まで不思議だった謎が解けた」「実験が簡単で生徒にプラスチックの性質を教えるのに役に立つ」と大変面白がっておられました。
この他、実際の出前授業では、日本で発明・技術開発されたといっていいアクリル樹脂を使った水族館のアクリルガラスや、宇宙で活躍するポリイミドフィルム、炭素繊維、導電性プラスチックの話、さらに、塩ビパイプや床材、サッシ、電線などの紹介を織り交ぜていますが、同時に「プラスチックの利用はいい面だけではなく、プラスチックの海洋ごみ問題があること」に触れ、プラスチックを自然界に捨てないようお願いしていることを話して、講習を締めくくりました。 |