本邦初、再生塩ビ敷板を開発した
(株)LINK PLANET
電話回線用の電線被覆をリサイクル。板材の世界に「環境性」のコンセプトを導入
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コンサート会場いっぱいに敷き詰められた再生塩ビ敷板。どんなに大勢の来場者でも問題なし |
電話回線に使われる電線(局線)を再利用して、工事現場などで使われるプラスチックの敷板にリサイクル。(株)LINK PLANET(岡田賢治社長/東京都中央区日本橋小網町7-8、アオバビル)が販売する環境樹脂敷板「プラボーくん」シリーズが、今静かな話題に。今回は、シリーズのひとつとして開発された、本邦初の再生塩ビ100%敷板「PSYソフトタイプ」に注目してみました。 |
●隠れたヒット商品
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岡田社長 |
「再生塩ビ敷板PSYソフトタイプを発売して6年経ちましたが、これまでユーザーからのクレームは全く出ていません。塩ビは柔軟で丈夫だし、紫外線による劣化も少ない。しかもリサイクル製品ということで、官公庁や民間の施設、工事現場、農場、各種イベント会場など幅広い分野で使われています。『プラボーくん』シリーズは再生ポリエチレンの製品を含めて7アイテム揃っていますが、PSYはうちの隠れたヒット商品になっています」(岡田社長)
プラスチックの敷板は、2003年頃に米国から輸入されたのが初めで、数年後には国産化も始まっていますが、「当初はポリエチレンのバージン材を使った製品ばかりだった」とのこと。リサイクル、環境性といったコンセプトを取り入れた同社の製品は、板材の世界では画期的だったといえますが、それだけに既成市場の警戒心も強く、「田んぼに敷くと作物に影響が出るといった嘘の情報を流されたことも。塩ビ業界にもご協力いただいて、徐々にそういう誤解を解いていったのです」
●開発までの試行錯誤
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粉砕後、分別された塩ビ被覆 |
塩ビ敷板の原料となるのは、電線メーカーから出る電話局線の工場端材がメイン(一部、電力・情報通信会社の施工端材を含む)。これを粉砕して、銅線と樹脂(ポリエチレン、塩ビ)を比重分別した後、樹脂部分を製品に加工します。但し、粉砕〜分別は電線メーカーの関連会社が行い、同社はこれを原料として仕入れたり、製品加工も含めて同社が提携している協力工場に委託するなど、基本的に製品企画の開発と、全体の流れの調整が同社の役割です。こうしたプロデューサー的な立ち位置に同社の事業の特徴が見られます。
塩ビのリサイクルを思いたった経緯について、岡田社長は次のように説明します。
「電線メーカーの担当者から『塩ビの被覆は一部土木シートなどにリサイクルされているものの、多くがそのまま埋め立てられている。何かいい嫁ぎ先(用途)はないか』と相談されたのです。そこですぐに浮かんだのが、工事現場で防音やスリップ防止に使われているゴムマット。塩ビは、耐候性、耐久性、耐薬品性、さらには自己消火性などで、ゴムより優れていて、特にゴムは紫外線に当たると硬化してひび割れしやすいのです。それだったらゴムマットの代わりに塩ビを使ったらまさに適材適所じゃないかと考えて、すぐに企画開発に着手しました」
開発に要した期間はほぼ1年。最初の設計は重すぎて施工性に問題があったため、サイズを小さめにして(1.25m×2m。厚み13o)、1人でも施工できるレベルまで重量を低減(40s)。また、唯一ゴムマットに劣る抗滑性(すべりにくさ)については、縞鋼板(表面に滑り止めの凹凸をつけた鋼板)でプレスして凹凸をつけることで問題を解決しました。
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さまざまな施工事例。お祭り会場(左端)や学校の校庭(中央)の養生用に。また、耐久性と難燃性を生かして防災ヘリポート(右端)でも活躍。 |
●実現なるか、「塩ビウォール」のアイデア
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さらなる用途開発にも意欲満々 |
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塩ビ電線被覆をリサイクルした PSMシートタイプ |
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オフィス用耐震マット |
試行錯誤の末に誕生した再生塩ビ敷板。販売方法は売却とリース(リース会社)の2つがあり、特に、耐久性が高く、土砂などの汚れで変色しても何度でも塗り替えられる塩ビは、レンタル製品として抜群の経済効果を発揮するとのことで、岡田社長は「リサイクルは再生材料の嫁ぎ先、つまり用途を見つけることが最大のカギ。その意味で、塩ビ敷板は素晴らしい嫁ぎ先になった」と自信を見せています。
なお、同社では塩ビ電線被覆リサイクルの一環として、その後シートタイプの製品(PSMシートタイプ)を開発しているほか、オフィスの重量物の下に敷いて地震時の災害を防止する耐震マット、倉庫内のパレット等の滑り止めになる免震パッドなど、電線被覆以外のリサイクル製品開発も販社と共同で積極的に取り組んでいます。
岡田社長は今後の用途開発についても意欲的です。そのひとつがリサイクル原料を使った塩ビウォールの企画。小さく畳んだ中空方形の塩ビシートを、施工現場でエアコンプレッサーを使って膨らませ、タンク構造にした下部に重石代わりの水を注入して壁にする、というもので、工事現場などを囲う鉄板に代えて利用することで、転倒による人身事故などを防止しようというアイデア。重石の水は、火事など有事の場合に消火用に利用することもできます。
「シンプルなアイデアですが、リサイクルはハイテクよりもローテクで何を作れるかが肝。シンプルにリサイクルを考えるというのがうちのモットーです。強度の問題など検討事項は残っていますが、これはぜひ実現したい」
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