石坂産業鰍フ建設廃棄物リサイクル事業
苦境をバネにリサイクル工場に変身。社会・地域貢献活動でも高い評価
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石坂産業が誇る全天候型独立総合プラント。コンクリートはB棟、木材はE棟、混合物はC棟、金属類はF棟と、廃棄物の種類ごとにトラックを誘導(D棟は分別分級プラント、A棟は本社ビル・管理棟)して、分別を効率化。建屋全体をカバーして徹底した騒音・粉塵対策を施している。 |
建設産業廃棄物のリサイクルに取り組む石坂産業梶i石坂典子社長/本社=埼玉県入間郡三芳町上富緑1589-2)。このところ、メディア等でその名前を見かけることが多くなっています。苦境をバネに確立した独自のリサイクル技術、さらには環境対応、地元に密着した社会貢献活動でも評価の高い同社の取り組みを、現地からレポートします。 |
●「燃やさない産廃処理」を追求
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お話を伺った石坂知子専務。社長以下、女性経営陣の活躍が際立つのが同社の特長だ。 |
石坂産業の前身・石坂組が設立されたのは昭和42年(東京都練馬区から現地に移転したのは昭和57年。同61年に株式会社に改組、社名変更)。土砂処理業としてスタートした同社は、以後、建設系産業廃棄物の収集運搬から中間処理へと順調に事業を拡大してきましたが、メディアの報道に端を発した所沢市のダイオキシン問題を契機に、リサイクル・再資源化事業への業態転換を決断。平成14年4月には創業者・石坂好男氏に代わって長女の石坂典子氏が2代目社長に就任し(代表取締役は平成25年から)、「女に産廃処理は難しい」と危ぶむ周囲の声を尻目に、企業改革へ向けた対策を矢継ぎ早に展開していくこととなります。
同社の石坂知子専務の話。「リサイクル事業については、木材やコンクリートの100%再資源化を行う専用プラントを逐次設置するなど、先代の頃から少しずつ手を着けていたのですが、本格的に舵を切る転機となったのはダイオキシン問題でした。当時、弊社では15億円掛けてダイオキシン対策完備の焼却炉を新設したばかりだったのですが、この問題をきっかけに、新設の炉を解体して、跡地に減量化プラントを建設(平成14年)。それまでの焼却縮減から減量化再資源化へと、『燃やさない産廃処理』を追求していくことになったのです。平成20年には、一連のプラントのリニューアルも完了し、全天候型独立総合プラント(上の写真)として事業の中核を担っています」
●リサイクルの中核「全天候型独立総合プラント」
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コンクリート・リサイクルプラント(B棟)の内部。ミストを噴霧して(右上)粉塵の飛散を防止している。 |
全天候型独立総合プラントは、同社が長年にわたって蓄積したきた独自技術とノウハウの固まりと言える施設で、関東一円から持ち込まれる廃棄物は、コンクリート、木材チップ、混合廃棄物、金属類の4種類を中心に、徹底した分別分級を経て、木材チップやコンクリートの再生砕石、さらには土砂・残土を再利用した盛土材(後述)など、付加価値の高い再生品に生まれ変わります。
ちなみに、廃プラスチックについては、分別困難な混廃系のみ外部委託でサーマルリサイクルしているほか、塩ビ管は県内のパイプメーカーに出荷してマテリアルリサイクル。また、軟質樹脂の一部(シートなど)は、火力を使わず、スクリュー圧で溶かしてRPFに自社加工しているとのことです。
オリジナルの再生品開発にも積極的で、大学の研究室や公設試験機関などとの連携により、これまでに、木屑を使った畜舎の敷材、廃瓦をリサイクルしたインターロッキングブロック(いずれもエコマーク認定商品)などを開発。「混ぜればごみ、分ければ資源」という基本を忠実に突き詰めることで、同プラントにおける再資源化率は平均95%にも達します。
また、地域環境の保全に配慮(建物の景観調和と集塵対策)しているのも、このプラントの特色で、特に集塵対策は「トラックに付着したものも含めて、粉塵は一切外に出さない」というほどの徹底ぶり。傍ら、国際規格ISOの取得にも取り組み、平成26年からは、業界初となる国際規格7統合マネジメントシステムの運用を開始して注目を集めています。
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「NS−10」 |
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石坂産業には関東一円から建設廃棄物が集まる。廃棄物を積んだトラックは、まず本社ビル対面の総合第一駐車場に入った後、種類別に各棟へ誘導される。現場分別も進んでいるが、粗選別を必要とする場合は、専用のレーンで待機した後、手作業での選別に掛けられる。 |
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建設技術審査証明。残土の再資源化では全国初の認定となる |
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●業界初、建設残土の再資源化技術
同社のリサイクル事業の中でも、とりわけ特徴的なのが家を解体した後に残る土砂の再資源化です。これは「再利用できる土砂を埋立に持っていけば資源として生かせないし、工事のたびに山砂を取ってくるのは資源の無駄使いだ」(石坂好男氏)という考えから生まれた事業で、建設廃棄物から土を取り出して山砂の代わりに再利用するという試みは、土砂処理業からスタートした同社ならでは、といえます。
こうして、技術研究の末に生まれたのが、「建設混合廃棄物に含まれる土砂を再利用した盛土材『NS−10』」。土砂を分別分級した精選土に、重金属の不溶化剤や固化剤を添加して造粒・固化したリサイクル品で、山砂と同等の品質を持ち、崩れにくいことから、道路や堤防の盛土、埋設管周囲の埋戻し材などに利用されています。
「建設残土の再資源化は、全国初で弊社だけの取り組み。『NS−10』は一般財団法人・土木研究センターの建設技術審査証明を取っています(平成27年5月18日付)。この技術は弊社しか持っていないため、同業の中間処理業者から処理を頼まれることも少なくありません」(石坂専務)。
●地域の人々との共生を願って
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近々三富今昔村にオープンする「くぬぎの森交流プラザ」 |
最後に触れておきたいのが、同社の事業を語る上で避けて通れない社会・地域貢献活動(CSR)。その多彩な取り組みこそ、同社の独自性を際立たせている大きな要因といえます。
主な活動だけでも、会員制クラブ「やまゆり倶楽部」の創設とコミュニティ誌の発行、プラント周辺の広大な森林を利用して生物多様性豊かな森を未来の子どもたちに繋げていこうという「里地里山プロジェクト」、同プロジェクトの一環として昨年誕生した里山アミューズメントテーマパーク「三富今昔村」と、枚挙に暇がないほどですが、根底に流れるのは「地域の人々との共生」を願う熱い思い。同社のCSR活動は、重要な経営資源となっているのです。 |