雨水を大地に!プラスチック製「雨水浸透ます」の効用
宅地でできる「身近な環境保全と浸水被害対策」
簡単施工で蘇る、自然な水のリサイクル
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プラスチック製雨水浸透ますのいろいろ |
道路のアスファルト舗装で、私たちの生活はとても便利になりましたが、一方で、雨水の地中浸透を妨げることから様々な問題が起こっています。そこで登場したのがプラスチック製の雨水浸透ます。雨水を大地に戻して自然な水サイクルを甦らせる「環境新兵器」に注目! |
●アスファルト舗装が引き起こす問題
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田中事務局長 |
近年耳にすることが多くなった、局地的豪雨による都市型洪水のニュース。その一因として指摘されているのが、都市化の進展に伴う宅地化道路・地表面の舗装の拡大です。地面のほとんどが建物やアスファルト、コンクリートで覆われた都会では、雨水が地中に浸透しにくいため、激しい雨が降ると大量の水が排水路や下水道に集中して排水ラインの対応力をオーバーしてしまいます。その水が溢れて浸水したり、河川に一気に流れ込んで洪水を引き起こすことになるのです。
また、雨水が浸透しないことによる地下水の減少という問題も大きくクローズアップされています。地下水として蓄えられた雨水が、土壌や河川、人々の生活を潤すという自然な水の循環が阻害された結果、その影響は湧水の枯渇、平常時の河川流量減少、地盤沈下、さらにはヒートアイランドの深刻化といった問題にまで及んでいます。
●重要性を増す「地下水の保全」の役割
こうした問題を緩和する切り札として期待を集めているのが、プラスチック製雨水浸透ます。メーカー6社で構成するプラスチック・マスマンホール協会(中央区日本橋)の田中高好事務局長は、その役割を次のように説明します。
「従来の雨水対策の基本は速やかに排除すること、つまり一刻も早く雨水管路や排水路に流してやるということで、従来から雨水をスムーズに集め流してやるために雨水ますが用いられてきた。これに対して、雨水浸透ますは底面と側面に多くの穴が開いた多孔型の製品で、自然に近い形で雨水を地下に浸透させることを目的に設計されている。もともとは洪水被害の減少といった観点から雨水の流出抑制のために開発されたものだが、最近は地下水の涵養、保全という観点からの役割も重要視されるようになってきた。雨水は速やかに排除するという考え方から、できる限り貯留、浸透、利用するという方向に雨水対策が変化してきたということです」
●塩ビ製とポリプロピレン製の2種類
同協会のプラスチック製雨水浸透ますは主に宅地内に設置されます。大型の貯留施設などと違い、生活の末端で活躍する雨水設備であり、協会では「宅地でできる身近な環境保全と浸水被害対策」というフレーズを使って、その役割をアピールしています。
素材は、塩ビ製とポリプロピレン製の2種類があり、サイズの違い(ます径は塩ビ製が150mmと200mm、PP製が250mm~400mmまで4種類)など、それぞれの特徴を備えていますが、底部と立上り部、蓋で構成される基本構造は同じ。雨どいを伝ってます内に流入した雨水は、底部・側面の開口部から徐々に地中に浸透していきます。一戸建の場合は四隅に設置するのが平均的ですが、家の大きさ、集まる雨量の程度でサイズを選ぶことが可能。主な製品特長は以下のとおりです。
【プラスチック製雨水浸透ますの特長】
①軽量・コンパクトで、運搬・据付け・配管も容易。
②品揃えが豊富で、設置場所に応じて選択が可能。
③腐食せず劣化が少ないなど耐久性に優れ、長期間安定した品質を保持。
④平滑な内面、開閉しやすい蓋など、点検・清掃作業にも適した構造で維持管理が容易。 |
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塩ビ製雨水浸透ますの構造 |
●行政、住民の関心も上昇中
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松元技術部長 |
「プラスチック製雨水浸透ますの協会規格が作られたのは2003年。世の中に登場してまだ15年程度なので、本格的な普及はまだこれからだが、今後その役割がますます求められるのは間違いない。売上も少しずつ伸び続けており、それだけ将来性のある製品と言える」(同協会の松元聡技術部長)
前述のとおり、プラスチック製雨水浸透ますは宅地内施工が基本ですが、最近は住宅新築時に助成金を出すという自治体も増えてきています(一例として、塩ビ製150mmのます一個につき1万5千円、200mmで1万8千円の補助)。一方で「義務化して助成はしない」という自治体もあり、個々の都市ごとに制度はいろいろですが、都市部の自治体を中心に、雨水浸透ますへの関心は着実に高まりつつあるようです。
「先日も名古屋のラジオ番組で雨水浸透ますが取り上げられ、製品の役割などをお話してきた。行政と同様、マスコミや住民の関心も高くなっている。全部役所にやってもらうのではなく、住民自らもある程度の雨水対策をやらねばという方向に意識が変わってきているのだと思う。この製品は、一軒だけででなく、地域全体で設置しないと大きな効果が得られない。五月雨を集めて早し、ではないが、地域が全体として取組み、数多く設置することがいちばん大切です」(田中事務局長)
なお、同協会では、塩化ビニル管・継手協会との協力で塩ビ製のます・マンホールのリサイクルに取り組んでおり、リサイクル原料(三層材)を用いた製品(立上り部)も開発されています。
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