元祖が語る ! 塩ビなわとび物語
業界最大手(株)ベルテックに見る、
塩ビなわとびの誕生と変遷、そしてこれから
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ロングセラーを続ける
ベルテックの塩ビなわとびシリーズ |
日本での近代なわとびの歴史は1878年、ドイツ人教師を介して体操伝習所に輸入されたのが始まりとか。その後長い間、天然素材が用いられてきたなわとびの世界に、あるとき革命が起こります。塩ビ製なわとびの登場です。いまや当たり前になった塩ビなわとびは、いつ、どこで生まれて、どんな変遷を経てきたのか。業界最大手(株)ベルテック(名古屋市守山区)の鈴木創梁(はじめ)社長が語る「塩ビなわとび物語」のはじまり。 |
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▲ “超高速なわとび少女”鈴木めぐみさん
◀ 偶然から生まれた螺旋入りの技術 |
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●昭和36年、なわとび革命起こる
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鈴木社長 |
ズバリお答えします。塩ビなわとびが誕生したのは今から56年前、昭和32年のことでした。
「当時、私は玩具用のエンパイヤチューブ(絶縁チューブ)などを主に作っていましたが、取引のあった浅草橋の玩具会社から、ビニールでなわとびを作ればカラフルで楽しいのではないかと製造依頼がきたのです。その頃の塩ビはまさに最先端を行く素材で、塩ビ製の買い物カゴなんかめちゃくちゃ売れていた時代です。その新しさに目をつけたんでしょうね。それ以前のなわとびは稲わらを機械縒りしたものとか木綿製とかでしたから。それで6角形の塩ビロープに木製の握りを付けたなわとびを作ってその会社に送った。これがビニールなわとびの始まりです。色はブルー、ピンクなど8色で、1本10円でした」
塩ビなわとびの元祖が語る貴重な歴史のひとコマです。
●失敗は成功のもと、螺旋入りなわとびの誕生
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超ロングセラー、
螺旋入りなわとび |
その後、塩ビの加工技術を極めた鈴木社長は、昭和36年に鈴木理化学工業所を設立。直ちに新たな挑戦に乗り出します。
「それまでにない色のなわとびを作りたくなってね。外に透明な薄い水色、中に透明な薄いピンク、この2色の塩ビ樹脂を重ねればレインボーカラーのなわとびができないかと思って、いろいろと試してみたが、なかなか上手くいかない。それが、あるとき金型を作り直してやってみたら、まったく思いがけずクルクルと螺旋模様の入ったキレイななわとびが出てきたんです。つまり失敗作だったわけだが、これはイケると思って商品化したら予想どおり大ヒット。うちの代表ブランドになってしまった。未だに作り続けている超ロングセラーです。レインボーカラーは結局成功しませんでしたが」
市場にはたちまち類似品が氾濫し、名古屋だけで2000万本もの螺旋なわとびが売れたといいます。「うちが作ったのは500万本。子どもが300万人もいましたからね。当時名古屋の小学校ではなわとびができると体育で5がもらえた。必須教科みたいなもので、なわとびは愛知、名古屋の名物でした」
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原料の塩ビを約150℃で溶かし、押出機でロープ状にしていく
(写真は二重複合成型ライン)。 |
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ロープを水で冷ましながら、巻き
取り機に掛け、一定の長さに切断 |
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あとはグリップを装着すれば出来上がり。塩ビ製のグリップ(左から二重とびグリップ、技とびロンググリップ)。 |
●少子化時代の中、健康志向の追い風が
昭和63年には(株)ベルテックを設立した鈴木社長は、その後も、渡米時に石ころをグリップに入れてとんでいるアメリカの子どもを見て開発した「二重跳び名人」(2007年発売、真鍮の錘をグリップに入れてとびやすくしたもの)、30秒で連続162回というギネス記録を持つ愛知県西尾市在住の“超高速なわとび少女”鈴木めぐみさんと契約して開発した早とび用の「スキッピョン」(2010年発売)と、尽きることないアイデアでヒット商品を出し続けますが、気がつけば世は未曾有の少子化時代に。
「子どもたちへの販売窓口だった文房具屋が減ってくる一方、中国からの廉価品が入ってきて100円ショップで売られたりしている。メーカーも減り、残ったのはうちも含めて4社のみ。みんな愛知県の会社です。現在のうちの生産量は大体80万本前後で推移している」
そうした中、健康志向の流れとあいまってなわとびの世界にも新しい光が差そうとしています。同社専務取締役の鈴木啓子氏を中心にスポーツ団体関係者や研究者、なわとびパフォーマーなどが結集した「日本なわとびプロジェクト」(JJRP)の立ち上げがそれ。理事長を務める鈴木専務が説明します。
●人間は、とばなきゃダメ
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「日本の体力を底上げしたい」と鈴木専務 |
「なわとびって小学生のものだと皆さん思ってるんですね。でもそれはもったいない。なわとびの良さをもっともっと知ってもらってなわとび人口を増やし、日本の体力を底上げしちゃおうというのがJJRPの目的。今はイベントでなわとび教室を開催しています。ホームページもでき、次はなわとび体操、なわとび検定と夢は膨らみます。中京大学スポーツ科学部の湯浅景元教授にご意見を頂ながら進めています。教授は『なわとびはすごくいい。人間とばなきゃだめ。ウォーキングだけでは絶対骨密度は上がらない』とおっしゃっています。そういうことをぜひ伝えていきたい」
最近はダイエットとしてなわとびをする若い人や中高年者が増えているとか。「加工性から考えても、なわとびの素材に塩ビほどいいものはない」と鈴木社長。健康時代を支える塩ビなわとびに注目。
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