2013年9月 No.86
 

塩ビの明日にチャレンジ!「PVC維新の会」

関西の塩ビ加工業界若手が結集。ものづくりの新たなレベル求め活発な活動

 関西地区の塩ビ加工業界が元気です。業界の変革と飛躍をめざす若手経営者のチャレンジ集団「PVC維新の会」(英語名PVC NEXT)に注目!
西日本プラスチック製品加工協同組合と共同開催した工場見学会で記念撮影。前列右端がPVC維新の会・河野代表幹事。中央が協同組合の三原理事長。

● 塩ビの未来は暗くない

 「初めは興味半分という感じだったんですが、実際に入会してみたら、いろいろな勉強会とか工場見学会とか、個人では企画できない活動が多くて、これはありがたいなと思いました。いまの塩ビ加工業界は、景気低迷の中で中国などから低価格製品がどんどん入ってきて決して楽じゃないが、我々若い世代がこういう地に足の着いた活動を積み重ねながら、意欲的なものづくりに取り組んでいけば、いずれひとつの方向を見出すことができる。塩ビの未来は暗くない。この会に参加しているとそう思えてきます」(メンバーの話)

● 1年半の活動に手応え

河野代表幹事

 関西地区における塩ビ加工業界の若手経営者有志が結集して、「PVC維新の会」を発足させたのは2012年1月。@会員相互の情報交換、A加工技術等の勉強、B異業種交流、C新製品・新技術の共同開発、などの活動を通じて、業界の変革と経済的地位の向上を図ろうというのが結成の目的でした。会員数は2013年6月現在で17名を数えます。
 設立からほぼ1年半を経過した状況について、代表幹事を務める河野修一郎氏(西日本プラスチック製品加工協同組合副理事長/(株)河野プラテック社長)は、「これまで2カ月に1回程度例会を開催して、情報交換や工場見学、勉強会などで知識の蓄積に勤めてきたほか、ホームページ(http://www11.ocn.ne.jp/~pvc-next/)とフェイスブック(https://www.facebook.com/pvc.next)を立ち上げて、会の活動の紹介や軟質塩ビ素材を生かした新しいファッション雑貨の提案などを行っています。当初の計画どおり活動は徐々に本格化してきており、会を立ち上げた意義は十分あると感じている」と手応えを語っています。

「PVC維新の会」設立趣旨(抜粋)

 近年、ビニール加工業界は新興工業国の急速なる勃興により、輸入低価格商品に押され、国内生産は年々減少を続けており、その結果受注できる商品は少LOT、短納期でしかも価格の面においても、採算に合わない価格を強いられている。(中略)。そこで危機感を持つ有志が仲間をつくり、連帯感を持って業容の変革を含め新しい時代に即した経営を模索する為の情報交換等を含め、素直に話合える場が是非とも必要ではないかと思い「西日本プラスチック製品加工協同組合」のサポートのもと、本会の設立を呼び掛け、ここに発足した。会員諸君の自主的な活動により、ビニール業界の今後の発展に期待する。

● 工場見学で「塩ビを知る」

見学会の模様。大八化学工業(上)と大洋化学工業の担当者からレクチャーを受ける。

 6月27日に開催した第3回例会では、西日本プラスチック製品加工協同組合のメンバーも参加して、可塑剤メーカー・大八化学工業(株)(大阪市中央区)の寝屋川工場と、塩ビシートメーカー・大洋化学工業(株)の本社工場(大阪市鶴見区)を見学。塩ビへの知見を深める貴重な機会となりました。
 「塩ビシートは我々が日々手にしている素材なわけですが、それがどんな風に作られているのか、主原料である可塑剤とは何なのか、案外分かってないんです。その製造現場を実見して担当者の説明を聞けたことは、とても勉強になりました」(参加者)
 この日は、見学先の担当者からも、PVC維新の会会員の工場見学の希望が出るなど、こうした出会いの場が、お互いのネットワークづくりにも役立っていることを窺わせました。

● ファッションクリエイターとのコラボも

カラフルなサンダル&ポーチの数々。「上田学園コレクション」に展示されたコラボ作品

 一方、異業種交流の面では、昨年6月から10月まで、ファッションクリエイターの養成学校・上田安子服飾専門学校(大阪市北区)との産学共同研究に取り組み、サンダル&ポーチを試作(学生のデザインを同会が製品化。冒頭の写真も)。「PVC Design Award 2012」(塩ビものづくりコンテスト)や「上田学園コレクション2013」(今年1月、グランキューブ大阪)に出展された色彩感あふれる作品の数々は、塩ビならではの新感覚ファッションとして注目を集めました(同校とのコラボは今年度も実施予定)。
 「塩ビの未来をどう切り開くか、まだ模索している状況だが、会の活動を通じてさらに加工技術を深め、新たなものづくりのレベルに進んでいきたい。我々はお互い競争相手でもあるが、それ以上に現状克服への意欲は強い。いずれは新製品・新技術を共同開発して皆で利益を得られる組織にする。それが我々の最終目的だ」
 河野代表は「3年程度でその具体的な成果を得たい」としています。

若手の「志」に期待する(西日本プラスチック製品加工協同組合 三原理事長)

 どんな業界にも言えることですが、組合活動といういうものは、年配者が中心で、なんとなく若手が発言しにくい、活動しにくい雰囲気があります。しかし、それでは業界は活性化しません。塩ビ加工業界についても、現状から脱皮して業界を改革していくには、若手が自主的に何でもやっていける組織、それも組合内の青年部ではなく、組合から一歩離れて活動できる組織がぜひとも必要だと、かねてから思っていました。私が「PVC維新の会」の設立を後押ししたのはそんな理由からです。
 これまでは我々はメーカーから指定された材料を加工するだけでしたが、これからは「こういうものを作りたい」ということを我々の側から提案していかなければなりません。「PVC維新の会」は日本の塩ビ加工業界の中ではじめてそういう積極的な意志を持った組織といえますが、単なる親睦団体で終わるのか変革できる組織に成長するのか、本領発揮はこれからです。もちろん私は、そういう「志」を持った若手の集団として活躍してくれるだろうという期待感を持っています。また、同会の動きが刺激になって、他の地域の組合の中にも、同じことをやりたいという意識が芽生えていると聞いていてます。(談)