2013年9月 No.86
 

プラスチック教育連絡会、動く

中学校でのプラスチック教育に対応。出前授業や展示活動で理科教師を支援

品川区内の小中学校の 理科教諭20名が参加。
上は一色部長(左)と神谷部長
 新学習指導要領の実施により、昨年から中学校の理科の授業にプラスチックの時間が設けられた(年2〜3時間)のを機に、プラスチック業界では関係4団体が連携して「プラスチック教育連絡会」を結成、教育現場の先生たちにプラスチックへの理解を深めてもらおうと、様々な活動を展開しています。最近の主な取り組みをご紹介します。

※一般社団法人日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟、一般社団法人プラスチック循環利用協会、塩ビ工業・環境協会

●理科教師の研修会で出前授業

「今日はとても参考になりました。面白い実験もあって、退屈せずに話を聞くことができました」と山口副校長。

 そのひとつが、東京北品川の品川学園で開かれた品川区教育会研修会への出前授業(8月2日9:30〜12:00)。同校の山口晃弘副校長が連絡会との学校側の窓口役となっていることから実現したもので、塩ビ工業・環境協会の一色実広報部長(本誌編集長)とプラスチック循環利用協会の神谷卓司広報学習支援部長が、それぞれ講演と簡単な実験をまじえて、授業に役立つプラスチックの知識を伝授しました。
 このうち、「プラスチックとは」と題して講演を行った一色部長は、プラスチックの歴史、種類などの基礎知識や、これまで小中学校などで出前授業に取り組んできた経験から子供が興味を持つ教え方(身の回りにあるプラスチック製品を持ち寄って種類当てをする)などを説明。塩ビ、PE、PETなど5種類のプラスチック片を水、50%エタノールなどに入れて密度の違いで見分ける実験では、ひととき生徒に帰って実験に興じる先生の姿も。
 神谷部長は「プラスチックリサイクルセミナー」と題して、リサイクル手法の違いや海外のごみ処理状況などを解説したほか、リサイクルを考える上では、それに要するエネルギーやコストなどをLCA的視点で幅広く評価すことが大切であることを強調。空き缶やストローなど簡単な道具でペットボトルから糸を作る実験も、「これは授業に使える」と好評を集めました。
 参加した教師の一人は「基本的な教え方は指導要領に出ているが、子供たちがより印象的で楽しくプラスチックのことを学べる授業のヒントをもらった」と語っていました。

   
「あっ、浮いた浮いた」
「これはPPかな」
  「ホントに糸になったね」
「綿アメみたいだ」
  プラスチックの
レジンサンプルなどにも興味津々

●全中理東京大会にブース出展(VEC)

VECのブース。各団体の刊行物なども展示されました。
プラスチックとは何か。熱心に説明を聞く来場者

 一方、理科教育に取り組む全国の中学教師らが総結集した「第60回全国中学校理科教育研究会東京大会」(8月7日〜9日、東京葛飾区)では、塩ビ工業・環境協会(VEC)がブースを出展。プラスチック教育連絡会のメンバーと協力して、資料配布やパネル展示などにより、プラスチックに関する情報提供に取り組みました。
 全国中学校理科教育研究会は中学理科教師の研修の場として、毎年各県持ち回りで開かれているもので、今回の東京大会では「科学的な体験を通し、意欲的に探究する力を育む理科教育」をテーマに3日間にわたって分科会や記念講演などを開催しました。
 VECが出展したのは、大会2日目と3日目の「ブース展示の日」で、会場(かつしかシンフォニーヒルズ)には早朝からおおぜいの教師たちが来場。
 中には、「昨年からプラスチックの授業が始まりましたが、現場の教師には困惑している人も少なくありません。生徒に教えるためには、何よりも正確なデータに基づいたわかりやすい情報が必要。プラスチックのことを最もよく知っている業界の側から、そういう情報を提供してもらえればたいへん有難いと思います」という人もあって、VECの担当者らの説明に熱心に聞き入っていました。

こんな話題も 九州大学大学院生に「プラスチックと建築、環境との関わり」を講義

 本文のテーマ関連する話題をひとつ。VECの一色実広報部長が、九州大学の大学院講義「持続都市建築システムコロキウム」において、40数名の院生を前に90分間の講義を行いました(6月20日、九州大学箱崎キャンパス)。講義テーマは「プラスチックと建築、環境との関わり」。
 霧島温泉地で火山性ガスでの暴露実験をVECと共同研究している同大学院の小山智幸准教授が、「建築分野を中心とする人間環境学府の大学院生にとって身近にありながら馴染みの薄いプラスチックを取り上げて、都市建築との関わりを理解させたい」との意向から非常勤講師を委嘱したもので、一色部長は、プラスチック全般の特性とそれぞれの建築分野での活用事例、コンクリートなどの構造材との違い、さらには省エネ・断熱との関わりや建築廃材のリサイクルの課題などにも言及しつつ、今後のプラスチックの活用の可能性などについて講義を行いました。今回の貴重な機会について同部長は、「講義の後、熱心な学生から2つ質問を受けた。1つは、プラスチック原料の石油が無くなったらどうするのか?2つ目は、プラスチックは環境により劣化していくが、今後どうするのか?前者については、石油以外にもシェールガス由来の原料もあり、バイオ由来の原料の可能性もあること、また、リサイクルも重要であること。後者については、素材の組み合わせで耐久性を向上できること、また、一定寿命で交換することを前提に使用することも必要であることなどを答えたが、プラスチックに関心を持って質問されたことが講師として何より嬉しかった」と語っています。