「塩ビで環境対応」ロンシール工業(株)の取り組み
業界初の遮熱ルーフィングでヒートアイランド対策。
屋上緑化、太陽光発電でも新機軸
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ロンシール工業の遮熱ルーフィング
「ベストプルーフシャネツ」 |
ロンシール工業(株)(本社 東京都墨田区)は、防水シートや床材などの塩ビ製品で知られる大手メーカー。同社では近年、その技術力を駆使してヒートアイランドや温暖化現象などを緩和する環境対応製品に力を入れています。快適でエコロジカルな生活に、塩ビがどう役立っているのか?同社の取り組みに注目してみました。
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● 太陽からの熱を最大約70%まで反射
1959年に初めて建築用防水シートを施工して以来、半世紀以上にわたってシート防水の世界をリードしてきたロンシール工業。同社が2004年に発売した遮熱ルーフィングは、その豊富な技術力から生まれた画期的な環境対応型の屋上防水シートです。
「塩ビの防水シートはもともと屋上に使うのがメイン。柔らかさや引張り強さなどに工夫を凝らした製品は他社からも出ているが、明確に遮熱性能を謳ったのはシート業界の中では当社が初めて。遮熱ルーフィングは、材料の配合を変えるなど独自の技術開発により、日射反射率が飛躍的に向上しており、太陽からの熱を最大約70%まで反射する。ヒートアイランド現象の抑制はもちろん、省エネ(冷房費の削減)の面でも貢献度は高い」(防水事業部の渡部公夫販売推進部長)。
遮熱とは、太陽光のうち特に近赤外線を反射して屋内に伝わる熱量を少なくする技術で、断熱材を使用して屋外・屋内間の熱の移動を抑える断熱技術とは異なります。同社では「維持コスト削減などの観点からも、これからの時代の建築に求められる新しい工法」と位置づけています。
● マンション、公共建築等の改修工事で採用進む
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サーモグラフによる遮熱ルーフィングと一般ルーフィングの表面温度比較。遮熱ルーフィングのほうが温度の上昇が抑えられている(緑色に見える)ことがわかる。 |
遮熱ルーフィングには「ベストプルーフシャネツ」(厚さ1.5mm)と、「ロンプルーフシャネツ」(厚さ2mm)の2タイプ、ホワイトグレーとグレーの2色があり、いずれも白色に比べて日射反射率が低いグレー系で高い遮熱効果を確保しているのが大きな特徴です。
「グレー系を採用したのは反射率と眩しさのバランスを考えた結果。ホワイトグレーは反射率は高いが、その分見た目にやや眩しい。グレーは反射率はやや落ちるが眩しさは緩和される。ユーザーには施工場所や環境に応じて使い分けを薦めている」(同事業部・事業企画部の志塚勝英氏)。
遮熱ルーフィングの温度上昇抑制効果は、窓断熱などを併用すればさらに高まります。また、シートへの温度の負荷が下がるため一般の製品より耐久性が大幅に向上するのもメリットのひとつ。
「発売当初はその良さがなかなか理解されず苦労した」(渡部部長)とのことですが、温度上昇抑制効果度の比較データ(右のサーモグラフ写真参照)など具体的な情報が認知されるにつれて、マンションや一般家屋、学校等公共建築などの改修市場で大きな伸びを示してきており、2010年にはグリーン購入法の特定調達品目にも指定されています。
● 耐根性能に優れる「屋上緑化システム」
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「ロングリーン」の施工例。
この緑の下に塩ビの防水シートが敷かれている |
一方、ロンシール工業が植栽の専門業者である入交コーポレーション(株)(東京都港区)とタッグを組んで提供している屋上緑化システム「ロングリーン」にも、同社のシート防水技術が生かされています。
屋上緑化とは、建築物の断熱性や景観の向上などを目的に、屋根・屋上を植物で緑化するヒートアイランド対策のひとつで、その施工には、高い防水性能と、植物の根の侵入・貫通を防ぐ強力な耐根性能を併せ持つ防水シートの使用が絶対条件となります。
現場で施工するとき、熱融着で繋ぎ合わせることができる塩ビシートは、異種素材の接着剤を使う他の防水などと違い、施工作業上のミスがない限り剥がれることがなく、その耐根性能はまさにピカ一。「ロングリーン」にも、各種の試験を経て、すぐれた耐根性能と耐久性が実証された防水シートが使用されています。
「ロングリーン」の施工は、防水シートの部分をロンシール工業、植栽とその後の維持管理を入交コーポレーションという役割分担で進められていますが、近年は東京都や大阪府など、一定基準以上の敷地における新築・増改築の建物に、条例で屋上緑化を義務付ける自治体も増えてきており、両者はこうした行政の支援策も力に「ロングリーン」の普及に取り組んでいく考えです。
● 完全防水、低コストの太陽電池パネル設置工法
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PV支持架台(左)と補強シート |
自然エネルギーのひとつとして期待を集める太陽光発電ですが、工事業者がパネル設置時に誤ってルーフィングに穴を開け、そこから水漏れが起こるといったトラブルが多発しています。そこで登場したのが、ロンシール工業の「太陽電池パネル設置システム」。独自のディッピング技術(金属体と塩ビを剥がれないように接合する技術)を用いた専用部材の開発で、これまでの太陽光パネル設置では不可能だった完全防水と軽量化、そして低コストを実現した製品です。
専用部材として使われるのは、PV支持架台(塩ビ被覆鋼板)とPV支持架台補強シート(塩ビ製パッチ)の二つ。作業はごく簡単で、まず支持架台をビスでルーフィング上に取り付けた後、補強シートを被せて架台とビス穴を覆うだけ。これで部材とルーフィングが一体化し、雨漏りひとつしない完全防水が可能となります(但し、塩ビ以外のルーフィングには対応不可)。
「太陽光パネルを設置するには、一般にコンクリートで基礎(架台)を作る必要があるが、当社の設置システムはコンクリートを使わず、しかも軽量なので、屋根への負荷と設置コストが大幅に低減でき、工期も短縮できる」(渡部部長)
太陽光発電の全量買取制度が始まった中、同社の「太陽電池パネル設置システム」も急速な需要の伸びが期待されます。
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