2012年6月 No.81
 

下水道用塩ビ管、敷設後30年でも基本性能を維持

名古屋市の協力で本格調査。「長寿命性」を実証するデータが明らかに

埋設後30年経過した塩ビ管
(「下水道展 '11東京」)
 塩ビ管が長寿命であることは広く知られるところですが、実際のところどこまで長期使用に耐えられるのか?塩化ビニル管・継手協会が、敷設後30年を経過した下水道用塩ビ管について実施した調査結果から、その実態が明らかになりました。調査では、30年を過ぎても設計当初の性能を維持していることが確認されており、設計耐用年数である50年以上の使用にも十分耐えられると考えられます。


●ゴム輪についても初の性能評価

埋設状況

 塩ビ管が日本で初めて製造されたのは1951年。その後、軽くて丈夫な性能への信頼から主に下水道用の管路資材などとして普及が進み、1970年代には接合部の受口に、従来の接着剤ではなく、ゴム輪を用いた改良型の製品も登場するなど、長年にわたって、私たちのライフラインを守り続けてきました。1974年には日本下水道協会規格(JSWAS K-1)も制定されています。
 下水道用塩ビ管はもともと50年以上の耐用年数を持つように設計されており、その長寿命性については、これまでも様々な評価が行なわれてきましたが、埋設後実際に長期使用されてきた管の性能を評価したデータは少なく、経年耐久性は明確には把握できていませんでした。
埋設管掘り出し作業の様子
 今回の調査は、名古屋市上下水道局の協力のもと、同市内で30年以上(1980年敷設)にわたって使用されてきた塩ビ管を掘り出し、管自体の物性はもちろん、接合部やゴム輪の性能、さらには掘り出す前の管路内面の調査まで徹底した実態評価を行なったもので、特にこれまでデータのなかったゴム輪について、初めて性能評価が行なわれたことは、下水道用塩ビ管の耐久性を立証する貴重な記録といえます。

●調査結果のポイント

 性能試験に用いられた下水道用塩ビ管は、分流式(汚水と雨水を別々に流す方式)の汚水管で、呼び径250のゴム輪接合タイプ。
 試験は2010年3月〜10月にかけて、第三者機関((財)化学研究評価機構 高分子試験・評価センター)により実施され、2011年11月にその報告書がまとめられました(「敷設後30年経過した下水道用硬質塩化ビニル管の評価について」。塩化ビニル管・継手協会のホームページよりダウンロード可。http://www.ppfa.gr.jp)。主なポイントをご紹介します。

1.管路内面

 管内を洗浄した後、自走式のカメラで内部の様子を確認した結果、腐食や変形をはじめ、浸水、破損、異物の混入など、いずれにおいても異常は認められませんでした。また、清掃前の観察においても管内の滞留等はなく、下水流下能力に全く問題のないことが確認されました。

2.管・ゴム輪の外観・寸法と接合部状況

管路内の状況(洗浄後)

 管の外面は黒く変色していましたが(基礎材の改良土成分による影響と考えられる)、大きな傷は認められませんでした。管体寸法はやや偏平していたものの、残留偏平率は2%以内で問題のないレベルとなっています。
 接合部も抜け出し等の異常は認められませんでした。ゴム輪については、目に見えない程度の微細なひびが確認されましたが寸法変化は殆どなく、実用上問題はないと推定されます。

3.管の性能

 管の性能については、JSWAS K-1、JIS規格(JIS
K 6741)に基づき引張降伏強さ、偏平強さ、曲げ強さ、耐薬品性などを調査しました。
 このうち引張降伏強さ、偏平平強さ、曲げ強さは、いずれも新管の規格値に比べても遜色なく、強度の劣化は認められませんでした。耐薬品性も新管と同様な性能を保有していました。
 このほか、耐熱性、衝撃強度、分子量などでも、経年による劣化は認められませんでした。

4.接合部の性能

接合部の気密試験の様子

 接合部については、JSWAS K-lおよびAS 19規定(塩化ビニル管・継手協会規格。JSWASの補足規格)に基づいて負圧試験を行なった結果、下水道用途としての性能を十分満たしていることが確認されました。
 また、水圧試験についても、設計初期の接合部確認試験であるAS 19附属書規定に基づき、かなり厳しい試験が行なわれましたが、30年を経過しても実用上のシール性能を保持していることが確認されました。

5.ゴム輪の性能

 今回が初めてとなるゴム輪の性能評価については、硬さ、引張強さ、耐薬品性などについて試験が行われました。硬さについては、硬化劣化が見られたものの、新品の規格値を満たしていました。
 また、引張強さは新品と比べてやや強度低下が認められましたが、下水管等のゴム輪の仕様に関する国際規格であるISO 4633に比べて高いレベルであり、実用上、接合部の性能確認結果より、水密性能にはまったく影響がないと推定されます。耐薬品性についても酸・アルカリに対する抵抗力は十分に認められました。
 以上、ゴム輪については、一部に劣化は認められるものの、接合部性能に実用上問題はなく、30年経過品でもゴム輪の機能は十分に満たされていることが確認されましたが、今後のさらなるデータ蓄積が必要であると考えられます。

●追跡調査で、さらなる長寿命性の実証へ

 今回の調査結果について、塩化ビニル管・継手協会では次のように述べています。
 「敷設後30年を経過しても、JISや下水道協会の規格に則った試験でまったく異常が認められませんでした。下水道用塩ビ管がユーザーの方々に安心して使っていただける製品だということを実証できて私達としてもひと安心というところですが、今後40年、50年、さらには60年経過でどうなるか、引続き追跡調査を行って、さらなる長寿命性の実証に役立てていきたい。ご協力いただいた名古屋市当局には非常に感謝しています。なお、今回、敷設替えした新管についても管路内の様子などを確認して市に報告しました」